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2017.2.15(水)

米利上げによるドル一極集中は近いのか?(西岡純子)

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米利上げによるドル一極集中は近いのか?(西岡純子)2017/02/15(水)


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今回のテーマ

米利上げによるドル一極集中は近いのか?(西岡純子)

米利上げによるドル一極集中は近いのか?

 アメリカの成長率そのものは、2016年なかば以降、自律的な回復局面にスムースに入っているところです。アメリカの成長率の直近の数字は、前期比年率で約2%程度ですが、その中身を見ると、個人消費は上下する中でも、ようやく少しずつ上がってくるトレンドになってきたところです。ひところ不安心理を強めた設備投資についても、2014年なかばからの原油価格の下落によって、エネルギー関連企業の設備投資が圧縮されるような場面もありましたが、ここに来て再びプラス成長に戻ってきています。また、在庫投資も回復してきています。

 このように考えると、アメリカの成長率の改善は、今回トランプ大統領が誕生するという予想だにしなかったサプライズが起こる前から、実はアメリカの成長は安定して定着していたというわけなのです。そして大統領就任が決まった後も、企業部門のコンフィデンスは大幅に改善し、家計部門のコンフィデンスも、先行きの見通しを中心に大幅に改善しているところです。

 企業部門のコンフィデンスについては、中小企業の楽観指数が大幅な改善を見せています。中小企業に対する税負担が圧縮されるなど、税に対する期待先行の動きが非常に強く表れているのがアメリカ経済のモメンタムだと思います。アニマルスピリッツの回復にまで至るかは今のところ全くわかりませんが、アメリカにベースを構えている企業にとっては非常にフレンドリーな税制が今後も続くのだろうと感じます。

 アメリカ経済を語るときに次に関心が出てくるのが、労働市場の状況です。雇用者数は長期にわたり安定して増えています。非農業部門の雇用者数も、前月対比で継続して増えていて、トレンド的に見るとやや頭打ち感も見られますが、そもそも前月と比べて増えているということなので、労働市場が拡大しているという状況は明らかです。労働市場は非常に需給が逼迫していて、いよいよ時間あたり賃金の上昇率も、上昇ペースを加速してきました。

 2014年なかばからの原油価格下落をうけ、個人消費が勢いを増さなかったのはなぜなのか、結局、未解決のままとなりました。ガソリン価格が3分の1になり、ガソリン大国のアメリカで、本来ならばもっと高い個人消費の伸びになって良いと思うのですが、その疑問はついぞ晴れることなく、税制改正への期待で消費が伸びやすい環境になってきた、というのが現状の評価だと思います。

 労働市場が逼迫し、賃金もいよいよ回復するということになると、FRBにとっては喜んで、安心して利上げをすることができる環境になります。FOMCのメンバーによる政策金利の見通しについて、2016年3月、6月、9月、12月と、過去それぞれの局面における先行きの見通しのパスを示したグラフを見てみます。直近の2016年12月の結果によれば、足元0.5%から来年、再来年にかけて階段状に上がっていき、2019年の段階では、3%に到達するでしょうというのがFOMCのメンバーによる見通しの中央値です。

 これまでの微妙な変化を見てみると、実は16年の3月には、かなりアグレッシブな利上げを想定していました。ところがそれを16年6月にかけて一旦下方修正し、9月の見通しではさらに緩やかなペースの利上げに下方修正しています。そして、今回の12月の調査で、少し角度が上がってきたというのが現状です。

 さらに長期的なFF金利の水準、つまり、アメリカ経済にとってちょうど均衡する中立水準はどこなのか、その見方の変化を示したグラフを見ると、2013年以降ずっと下がってきていました。そもそもアメリカも生産可能年齢人口が増えにくくなってきて、設備投資もさほど意欲的に出てこないので、アメリカの中立金利の水準そのものは下がったのではないかというセキュラースタグネーションに関わる議論がずっと続きました。それもようやく底入れしてきたというのが12月のFOMCでのメンバーの見方になっています。

 こうした見方はどう捉えるかですが、前回調査から見通しの角度が少し上がり、利上げしやすくなった、トランプ大統領の政策はとてもインフレを押し上げそうな政策で、FOMCのメンバーも背中を押されたと、ポジティブに表現するのが一つです。一方、それでも3年間で上がったとしても、金利はせいぜい3%程度で、前回の2004年から2006年の利上げ局面とは全く違うと考えるか、どちらかになります。私は前者の方だと思っています。

 随分と上昇ピッチが上がる環境が整ってきたと思います。金利の上昇ピッチが上がってくれば、ドル金利が上がりやすくなり、ドル金利が上昇すれば、ドルに対する資金の一極集中もグローバルに促されやすいと思います。ドル資金の一極集中をアメリカの当局、並びにトランプ大統領が許容するかどうか、その判断が相場を見通すうえで非常に注目されますが、現状はFRB単体で考えると、やはり金利水準が上がりやすく、ひいてはドルに一極集中するようなシナリオを描きやすい展開になるのではないかと思います。

トランプ政権、FRBのインフレ許容度を考える

 改めてトランプ政権の財政出動とFRBによる政策のコンビネーションが何を意味するのかまとめてみます。高圧経済、ハイプレッシャーエコノミーと表現することができ、その下で経済並びに中央銀行は、目標よりも高いインフレ率を許容することになると考えられます。

 1970年以降の景気拡大局面における、企業の価格設定とコストの関係をグラフで見てみます。0期を軸として、1ヶ月、2ヶ月と進むにつれて、物価に代わるデフレーターの指標がどのように変化するのかを表しています。今回のパスは2009年の第2四半期をボトムとして、デフレーターの推移を描いた線ですが、随分と下がっていることがわかります。1975年から85年の間のデフレーターは、景気が底入れをしてから随分とハイペースで上がってきました。それはインフレだからです。これによりレーガン大統領のスタートは非常に難しかったという時代です。しかし一方、今回ほど低すぎるのもどうかと思います。

 また、単位当たりの生産コスト、つまり、付加価値を1単位生み出すのに、労働コストや変動費など、どれだけのコストがかかるかを表したグラフを見ると、ようやく少し回復してきた兆しが見られます。ただ、これまでの低迷ぶりを取り戻すまでの回復には全く至っていません。リーマンショック前の景気サイクルと比較すると、当初は似たような動きでしたが、その数字を下回るような動きとなっています。

 グローバルサプライチェーンの構築後の展開だと思いますが、ただでさえアメリカはこのように、デフレーターにしても、物を作る上でのコストにしても、非常に物価上昇率を抑制するような価格設定行動が企業によって実施されました。多少の財政出動による物価の上昇について、FRBは自由に許容することができるだろうと考えています。

 もちろんインフレ率があまりにも加速度的に上がってしまうと、FRBとしては黙って見ている事はできません。例えば、現在の自然利子率がだいたい0%近辺と考えられるところ、実質金利がどんどん下がりすぎてしまい、金融環境として緩和的すぎてやり過ぎだということになれば、金融政策の引き締めに急いで動いてくるでしょう。しかし、上がり方次第ではありますが、常識的な物価の動き方から考えて、財政の発動による賃金上昇を起点とした物価上昇は、FRBにとってまだまだ全く自由に許容するレベルではないかと思います。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師
三井住友銀行 市場営業統括部
チーフ・エコノミスト(日本)
西岡 純子
2月8日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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 トランプ新米大統領が就任し、続々と大統領令を打ち出しています。今後の米経済をどのように予見し、マーケットに織り込まれていくのか。これまで以上に世界経済についてじっくり考えていく必要があります。

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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!