グローバル・マネー・ジャーナル

2017.3.29(水)

TPPなき今、EPA交渉を加速できるか?(大前研一)

グローバル・マネー・ジャーナル

TPPなき今、EPA交渉を加速できるか?(大前研一)2017/03/29(水)


大前研一学長総監修 資産形成力養成講座 グローバル・マネー・ジャーナル 「最新・最強・最高」クオリティの金融情報とデータ!

 第485号 資産形成力養成講座メルマガ

大前研一
 資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびに一流講師陣から学ぶ!

【2017年4月新規開講!】資産運用の心技体を学ぶ新講座リリース!

 2006年、資産形成を国技のように身近なものにしていきたい、という思いで開講した当講座も、12年目を迎えようとしています。多くのコンテンツを制作、多くの受講生に提供させていただき、多くの声をいただいてまいりました。今回、国技のようにという思いを新たに、11年の中でいただいた声を元に、新講座をリリースすることとなりました。柔道、剣道のような資産運用道として、資産運用のマインドから投資のアルゴリズムまで、実践力を身に付けながら学ぶことができます。引き続き資産運用への第一歩をサポートしてまいります。

【4月新規開講!】資産運用のマインドとスキルを学ぶ 3月31日(金)12時まで

【幕張合宿決定】6/3-4 新講座受講生は申込可能です!

今回のテーマ

TPPなき今、EPA交渉を加速できるか?(大前研一)

【中国】資本規制で事業売却代金を日本に送金できない

 日経新聞は18日、「中国資本規制、日本企業に影」と題する記事を掲載しました。日本企業が現地事業の売却代金を受け取れず、日本への送金が止まるなどの事態が続出していると紹介しています。外貨の流出を防ぐため、中国当局が人民元と外貨で国境をまたぐ取引を規制していることが要因です。

 中国から今、お金が持ち出せない状況になっています。売却したお金が持ち出せないという事態が起こっているのです。本当に何をやろうとしているのか見込めない事態です。中国に進出するのはウェルカムですが、撤退したときにはお金が持ち出せないということが続出しているのです。日本企業だけでなく、中国企業もそのトラブルに巻き込まれています。中国の金融当局は、もう少しここに透明性や明確なルールを入れるべきなのです。理屈がなく、お金が届かないという状況が起こっているのです。

 外貨準備がうんと減ってきて、中国当局としてもイライラしているのでしょうが、せっかくIMFのSDRバスケットに採用されたのだし、堂々と国際通貨になってほしいというところで、ここにきて内向き、下向き、後ろ向きということになってしまいました。

【EU】TPPなき今、EPA交渉を加速できるか?

 安倍首相は21日、ベルギー、ブリュッセルのEU本部で、トゥスク大統領、ユンケル欧州委員長と会談しました。その中で両首脳は、EPA日欧経済連携協定の交渉を加速し、年内の大筋合意を目指す方針を確認するとともに、各国で保護主義が台頭する中、日欧が率先して自由貿易を推進する考えで一致しました。

 ヨーロッパとの間で日本はあまり大きな懸案は持っていません。しかし、ヨーロッパが中国傾斜している中で、日本への関心は非常に薄くなっていますので、時々こうした大きな会議をヨーロッパとの間で持たなければならないでしょう。またEPAのような経済連携協定は、ヨーロッパとはもうすぐ締結できそうなところまで来てはいますが、TPPがなくなった今となっては、ヨーロッパとのEPA交渉を加速する必要が出てくるだろうと思います。

 トゥスクEU大統領はポーランドの出身で、ポーランドは彼の首相時代の対立野党の方が、今与党となっているので、ポーランドの首相がツゥスク大統領に対して下品な批判を繰り広げています。したがって彼はやや立場が悪くなっています。

 ユンケル委員長の方は、ヨーロッパ委員長としてまあまあの立場を保っていますが、トゥスク大統領の権威は今、大きく傷つけられているのです。全員一致を前提にしているいろいろな決め事も、ポーランドの反対によってマイナス1になりながらも通してしまうという、EUにとっては非常に異例の状況が起こっています。これもEUの一つの不安定要因だと言えます。

 日本とEUが世界経済に占める割合を見ると、EUは、GDP、貿易輸出入ともに巨大な割合を占めています。貿易は特に、EU間は関税無き自由貿易なので、非常に活発となっています。日本はその点では、かつて貿易で非常に栄えた国ですが、今では世界シェアの中で3.8%になっています。

 GDPもかつては世界経済の10%に達していましたが、今では5.6%です。アメリカは、24%のGDPと11%の世界貿易となっています。中国も次第に占める割合が大きくなり、日本よりもだいぶ拡大してしまったという状況です。

 ヨーロッパとのEPAは、いろいろなメリットがあると思います。ただワインが関税無しで入ってくるとしても、日本で代理店制度を採っていると、そこで値段が3倍になってしまうのであまり意味がないかもしれません。

 一方、自動車の輸入では、日本はヨーロッパの商品をずいぶん買っていますし、逆に日本がヨーロッパに売り込むことにもつながります。かつて日本はどんどんヨーロッパに売り込みをしていましたが、今は弱くなり、中国に置き換えられてしまっているのが現状です。

【日仏】高速炉「アストリッド」建設で協力の意義

 日本とフランス両政府は20日、原子力分野での協力を強化する合意文書に署名しました。次世代型原子炉としてフランスに建設予定の高速炉「アストリッド」について、両国がどのような技術を持ち寄り、知的財産をどう管理するかなどの枠組みを作る方針です。日本はフランスと協力し、高速炉の実用化を急ぐ考えです。

 これはあまり意味のないものだと思います。日本の文科省としては、もんじゅ閉鎖となった結果、なんとかこれを活かしたいというので高速増殖炉の開発をやっているということにしないと、プルトニウムの備蓄を日本に認めないというヨーロッパおよびアメリカの意見があるのです。そのことにより、苦し紛れにフランスと組んでやっていきましょうということなのです。

 フランスの場合は、実は、ラプソディーという実験炉と、フェニックスという、もんじゅと同じ原型炉の運転経験があり、さらにスーパーフェニックスという実証炉の運転に、既に成功してしまっているのです。実証ができたので、技術を全てタイムカプセルに詰めて、運転を止めてしまったという状況なのです。そこで今なぜ、新しい実証炉「アストリッド」をやるのか、私には疑問に思われます。

 実はその点で、ロシアやインド、中国、いわゆるBRICs諸国が実用化を目指して動き始めているのです。元祖のフランスとしては、高速炉で本当に成功した唯一の国であるわけなので、高速増殖炉と言えばロシア、中国などと言われると癪にさわるということで、あるグループが復活させたのではないかと見ています。

 そしてそこに今度は日本も、もんじゅ閉鎖ということで乗っかろうというわけで、非常にみっともない感じがします。日本の場合には、常陽という実験炉と、実証炉もんじゅがあり、その次の実証炉も実は計画されていたのですが、それは遥か先、今ではもう不可能ということになっています。もんじゅそのものも運転ができないまま終わりとなってしまったので、これに対する悔し紛れの逆転一発というつもりなのでしょうが、私は意味がない契約だったと思います。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一
3月26日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
詳しくはこちら

資産形成力養成講座 加藤

 多くの受講生の声が、講座の11年の歴史が詰まった新講座を3月にリリースしました。受講を開始されると、最初は何の講座だろう?というくらい、自らのライフプランについて考えます。それは、資産運用は、ライフプラン実現の手段だからです。

 アルゴリズムでは経済環境を投資に活かす手法を学びます。デイトレやFXといった概念はありません。世界中で実践されるようなインデックスでコツコツと実践していくスタイルの運用スキルです。世界標準の資産運用を学び、第一歩を踏み出してください!

【4月新規開講!】資産運用のマインドとスキルを学ぶ 3月31日(金)15時まで

【幕張合宿決定】6/3-4 新講座受講生は申込可能です!

資産形成力養成講座では、Facebookページでも金融にまつわる最新ニュースなどご紹介しております。ぜひこちらもチェックしてください。

 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!