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2017.6.21(水)

【中東】カタールとの国交断絶の影響(大前研一)

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【中東】カタールとの国交断絶の影響(大前研一)2017/06/21(水)


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今回のテーマ

【中東】カタールとの国交断絶の影響(大前研一)

【中東】カタールとの国交断絶の影響

 サウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦、エジプトの中東4カ国は5日、ペルシャ湾岸のカタールと国交を断絶するとの声明を発表しました。カタールがムスリム同胞団などのテロ組織を支援したことが理由とし、カタールとの商船、航空機等の往来停止や外交団の引き上げを実施するとしています。

 これは、実はアメリカ・トランプ大統領が余計なことをしたから起きたことです。トランプ大統領がサウジアラビアに行き、サウジアラビアに全面的にあげ入れて、イランとのとんでもない軋轢を生むようなことをしてしまったのです。そして、両者の間で何とかやっていこうとしていたカタールがおかしなことになってしまったという話なのです。

 もともとイスラム同胞団というものについては、サウジアラビアもかなり肩入れしていたわけで、ISそのものもサウジアラビアが裏で手を回して育てたという面があります。その点ではオサマ・ビンラディンもサウジ出身です。

 このようにサウジアラビアに問題があるにもかかわらず、トランプ大統領があそこまで入れあげてしまったので、何とか両者の間でやっていこうとしていたカタールのようなところが、ムスリム同胞団のようなテロ組織の温床を援助していたのではないかと言われてしまっているのです。実際それを一番やっていたのは、サウジアラビアなのです。ですから、カタールはちょっと割を食っているという訳なのです。

  カタールという国は、実はイランに近いのです。そこで天然ガスを大量に採掘しているわけですが、そのガスの交渉はイランとつながっているのです。ですからイランと徹底的に喧嘩をしてしまうと非常に具合が悪いのです。スンニ派なので本来はサウジ側なのですが、イランとも中立関係を保とうとしているのがカタールなのです。

 そして、もう一つの問題は、アルジャジーラという中東のトップテレビ放送局がありますが、これはカタールの放送局です。この放送局がイランとの融和を主張し、サウジに対してはきついことを言っているとして、この放送に対する逆恨みという側面もあると言われています。

 本当のところはわからないわけですが、サウジアラビアも胸に手を当ててみれば、今まで自分たちが中東を混乱させるようなことを一番やっていたわけです。そしてその混乱に拍車をかけたのがトランプ大統領だったという話なのです。ある意味カタールはちょっと不意をつかれたという感じでしょう。

 UAEではカタールを擁護するコメントをした人は牢屋に入れられるとことにもなっています。しかしUAEも全方位外交をやりたい国なので、困っているのだと思います。

  中東には、GCC、湾岸協力会議というものがあり、サウジ、UAE、カタール、クウェート、オマーン、バーレーンが加盟しています。これが今回決裂しまったということで、今までのこの会議は何だったのかという事になってしまいました。

 一方、日本の場合ですが、カタールとの結びつきが非常に強く、液化天然ガスの輸入相手国を見ると、マレーシアやオーストラリアからも輸入していますが、3位のカタールにとっては日本が一番の相手国、トップ顧客なのです。ここがいろいろトラブルになると困った事態になると言えます。

 FIFAなどはあのような暑いところでやるのは問題で、カタールでやらないほうがいいので気になりませんが、日本との関係を見るとカタール情勢が非常に不便になって航空機も飛べなくなると大変困った事態になるのです。

【英国】与党・保守党が過半数割れ 混迷か

 イギリス議会下院選挙の投票が8日行われ、開票の結果、メイ首相率いる与党保守党は318議席を獲得し、第一党の座を守ったものの、解散前から12議席減らし、過半数割れとなりました。メイ首相は少数政党の協力を得て続投を目指す考えを示しましたが、政権運営は難しさを増し、EU離脱交渉にも影を落とすことになりそうです。

  私はこれまでも述べてきましたが、テレサ・メイは全くわかっておらず、全く必要のないことをやって自滅したと思っています。これで良かったのではないかと思います。彼女は言っていることとやっていることがバラバラで、何をやりたいのかわからない人なのです。

 ヨーロッパの現実、少なくとも大陸側の考え方というのは、そう簡単に彼女の言うようないいとこ取りは許されないとしている状況を見ると、彼女は相当ポイントがずれていると言えます。しかしながら選挙で大勝すれば交渉は有利になるとしていたわけですが、誰もそんなことは信じておらず、ヨーロッパの方ではどんな勝ち方をしても私たちは関係ないと言っているのです。

 実際、今回彼女は独走していました。勝手に自分の一番仲の良い内側の人だけで交渉をし、議会全体で話し合うということもしていませんでした。そうしたテレサ・メイのやり方が、近くにいる2人のアドバイザーたちによる密室政治だということも、国民は見抜いてしまったのだと思います。対する労働党党首の人気が出るとと思いませんが、こうした状況で、今のところは人気が出ていることになっています。

 下院選の結果の議席数を見ると、保守党は318議席で過半数に足りないわけです。スコットランド国民党は離脱についても自分たちとはかなり意見が違うのでそことは組めず、もちろん労働党とも組めません。そうすると、その次には北アイルランドの民主統一党という政党がありますが、これが10議席持っているので、合わせて328議席になれば過半数に達します。しかし、これはまさに数合わせです。

 しかも北アイルランド統一党というのは全く主義主張が違う上に、アイルランドとどうするのかという事についての問題もあります。イギリスはもし本当にブレグジットをやってしまうと、アイルランドとの間に境界ができてしまうのです。実際100万人近い人たちが毎日その間を通勤しているわけで、そんなところに障害ができると大変なことになります。もちろん北アイルランド民主党と組んだところで、彼らはテレサ・メイと同じ考え方ではないのです。

  また、特にアイルランドの場合には、シン・フェイン党というのがあり、こちらはカトリック系でかなり過激なところがあるのですが、ここはむしろブレグジットはおろか、アイルランドと統一したいという考え方を持っているのです。イギリスの傀儡である所の清教徒が支配する北アイルランド民主統一党のようなところと組むということは、北アイルランド自身が非常に不安定になるということなのです。

 したがってこの政権では何もできないだろうと思います。そしてテレサ・メイの考えているような分離交渉は無理なので、ハードブレグジットではなくソフトブレグジット、すなわち、いいとこ取りをしないで、出るにしても移民の問題だけは1つ2つ条件をつけさせてもらい、その他貿易等については全く今の状況と変わらない、結果的にブレグジットにならずに、移民の問題のみ再交渉するという形になると思います。

 ただし彼女はすでにリスボン条約に基づいてブレグジットの提案を3月にしているので、このまま何も進展がなく2年経ってしまったら、自動的に出なくてはいけなくなるのです。そういう届出をしたわけです。したがって彼女は非常にまずい選択をしてしまい、これからソフトブレグジットに向かうにしても、結構大変なことになると思います。

 また、日産のサンダーランド工場などから見ると、自分たちがヨーロッパ大陸に輸出をするときに10%の関税がかかるという話になってしまうわけです。これは本当にどうしようもないことで、この面からも、彼女は非常にまずい選択をしたと言えるのです。その自分のまずさに気がつけば良いのですが、彼女が組もうとしている連立が崩壊し、もう一度選挙をやり直すということをしない限り、この問題はすっきりいかないだろうと思います。

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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!