グローバル・マネー・ジャーナル

2017.10.11(水)

バブル期水準に近づく中小企業景況の背景を探る(福永博之)

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バブル期水準に近づく中小企業景況の背景を探る(福永博之)

日銀短観に見る中小企業景況感の改善傾向

 企業活動の動きを確認するために見ておきたいのが日銀短観です。今回は、8月下旬から9月中旬にかけて調査された結果が出ています。景況判断DIは、大企業と中小企業に分かれていて、景況感の判断の分かれ目が0となっています。直近のデータは、大企業のDIが製造業、非製造業ともに、20を上回る動きになってきていて、リーマンショックの前あたりの水準に匹敵します。このようなセンチメント型のデータは、このところ改善が目立っています。

 ただその一方、私たちの実感としてはあまり感じられていないというのが現状です。しかし、大企業だけ好調と言うのであればそれも納得なのですが、実は中小企業の業況判断も改善してきているのです。

 中小企業の非製造業は、リーマンショック前の水準を超えて、それこそバブルの時期の水準に近づく勢いを見せています。製造業はそこまでではありませんが、リーマンショック前の水準を上回ってきています。これほど中小企業の経営者のマインドも改善してきているということなのです。

 さらに期待されるのは想定為替レートです。今回の調査では、企業の想定レートは109円29銭となりました。前回の6月調査のときの結果が108円31銭でしたので、1円弱円安方向に修正したということになります。中間期の決算で円高方向で見ていた企業の一部は、もしかすると今後業績を上方修正するかもしれません。日経平均採用銘柄であれば、個別の動きに期待が高まると同時に、指数の押し上げにつながるということも考えられます。

 また、それぞれの項目について、前回の予測と今回の実績の差分を見てみると、大企業製造業では上振れが続き、しかも上振れ幅が右肩上がりに伸びています。このような強い状況は、1988年から90年にかけてのバブルの時期以来と言えます。非製造業も、上振れ幅は伸びていないものの、連続で上振れています。やはり90年頃と似た動きのように見えます。ちなみに大企業の景況感の改善は4四半期連続です。1年間ずっと改善が続いているというわけなのです。

 日銀短観には、実は中堅企業という分類もあります。データを見ていく際には、真ん中は省略し、大企業と中小企業を取り挙げる場合が多いです。その中小企業ですが、製造業非製造業ともに、業況判断指数は右肩上がり、前回の予測と比べても上振れが続いています。

 このように、中小企業も良いというのが今回の短観であり、特に改善傾向が続いているということが、特筆すべき点だと思います。アベノミクスについて、批判的な意見もよく聞かれ、そういう本も多く書かれていますが、この状況を見てそれほど批判的なことが言えるのかと驚きます。

 この状況は何もせずに上がってきたとはとても思えません。確かに、金融政策の他に、頓挫している政策などもありますが、やはり何かしら景気のアクセルを吹かすようなものがあったことは明らかです。センチメントが盛り上がらないことには、中小企業も動いていかないのです。そう考えると、たまたま運が良くそういうサイクルに入ったという見方もありますが、実態はそれ以上に良くなっていると思います。この状況が続くとなれば、先行きが楽しみに思えます。

消費者物価指数に見る今後の動向

 消費者物価指数は、2015年を100とした指数で見ても、100を上回った状況が続いています。前年同月比では8ヵ月連続の上昇となっていて、徐々に上がってきています。また、東京都区部の9月中旬速報値でも、前年同月比0.5%プラス、前月比では横ばいではありますが、物価の上昇がじわじわと起こってきていると思われます。

 黒田日銀総裁が物価目標を2%とし、当初は2年、2倍と言っていたものの、実現できずにここまで来ているわけです。そうした間に、アメリカはすでに利上げをし、なおかつ資産の縮小も開始しました。一方で、ECBがテーパリング、金融緩和を縮小するかもしれません。

 残された日本はまだ物価も低く、金融緩和を続けるだろうということで、日米欧の金利差が開いた状態が続くということが考えられます。そうすると、円安が維持され、やはり日本企業にとっては輸出関連が潤うということになります。海外に進出し、工場を持っている企業なども、最終的には配当や利益を円転して計上するので、その分でも円安ならば利益が上がることになるのです。

【小売】百貨店業界好調の背景とは

 消費関連で、小売り販売額を見てみます。最近の気になる動きとしては、百貨店が息を吹き返してきていることが挙げられます。最近、またインバウンドが好調で、観光客がお金を使い始めていると言われています。

 さらに10月は中国では国慶節となり、都内ではまた中心部に観光バスが止まり、多くの人であふれることになりそうです。そうした中、百貨店の売上高が回復し始め、さらにスーパーも少し戻してきています。

 一方でコンビニエンスストアがやや売り上げを落としてきています。これまでコンビニは100を切る状況が続いていますが、回復基調でみると、百貨店の好調さが鮮明になってきています。

 今後、小売りの決算発表が出てくると思います。8月の売り上げが回復して、9月も同様に良かったということになれば、インバウンドの関係で10月以降も好調さが保たれる可能性があります。小売業はちょうど2月、8月の決算の企業が多いので、10月中旬には決算発表の時期を迎えます。間もなく発表になりますので、注目しておくと良いでしょう。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「金融リアルタイムライブ」講師
株式会社インベストラスト 代表取締役
IFTA国際検定テクニカルアナリスト
福永 博之
10月04日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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