グローバル・マネー・ジャーナル

2017.10.25(水)

今後注目すべき金需要国 世界第二位の事情(近藤雅世)

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今後注目すべき「世界第二位 金需要国」の事情とは(近藤雅世)

各国の地政学的リスクと商品価格変動の関係

 NY金もNY原油価格も方向感のない動きとなっている。地政学的リスクが全くないわけではない。スペインカタルーニャの独立は今週(10月23日の週)が山場のようである。スペインのマリアーノ・ラホイ首相は、カタルーニャ自治政府の独立派幹部を排除する新たな権限を得ようと試みている。一方、独立派が過半数を占めるカタルーニャ州議会の指導部は23日会合を持ち、議会招集日を決定する。議会招集は週内になるとみられている。一部議員は、独立運動の指導者であるカルラス・プチデモン州首相に対し、今週中に正式にスペインからの独立を宣言するよう求めている。

 ただ、このカタルーニャ独立問題が商品価格に影響を及ぼすかどうかは未知数であり、スペインもしくはEUの経済問題に発展する可能性があるとしても、金価格が高騰するような要因にはなり得ないだろう。

 イラクではクルド人自治区にあるキルクーク油田を奪還するためイラク政府軍が戦闘を開始し、シェブロン等の石油企業が従業員を引き上げて操業を停止している。10月17日にイラク軍先鋭部隊とクルドのペシュメルガ部隊との間で衝突が発生したが、イラク軍はさほど抵抗を受けずK1軍基地や空港、キルクーク製油所、ババ・グルグル油田を取り戻したとしている。ただ、双方に犠牲者が出ている模様だ。米国は双方に数十億ドル規模に上る武器や訓練を提供しており、板挟みに陥っている。

 この問題は原油価格に若干の影響を与えている。NY原油価格は23日+0.06ドル高の51.90ドルとなっている。キルクーク油田はイラク南部のバスラ地方とならんでイラクの二大油田であり、パイプラインによってトルコ経由で輸出されているが、クルド人が独立投票で9割が独立を支持したことに対しトルコ政府は国内のクルド人の独立を恐れてエルドアン首相はいつでもパイプラインを封鎖する用意があると述べている。

インド政府による所得把握政策の実情

 インドでは、昨年から企業や個人の所得の把握について政府が様々な方針を打ち出している。その背景にこれまでのインドでは中央政府と地方州ごとに異なる15の税法があり、インド製の物の最終消費財価格の約25%は税金が占めるという非効率な社会であった。更に13億の人口のうち所得税を支払っているのは1250万人に過ぎないといわれ、個人や法人の所得を政府や税務署が把握していなかった。

 なぜなら、取引の大半が現金決済であり、現金決済は取引の明細を政府から隠すことになり、貯めた資金はタンス預金や金の延べ棒に変わり、いわゆる地下経済が発達していた。地下経済の規模はインドのGDPの40%を超えると言われている。こうしたアングラマネーをあぶり出すため、昨年11月4日500ルピーと1000ルピーを突然廃貨し、昨年末までに銀行で新たに発行された2000ルピーと交換せねば蓄えた財産が消えてなくなるという荒療治をモディ首相は行った。

 日本で言えば、今夜12時から5千円札と1万円札は使えなくなりますと夜8時のニュースで突然宣告を受けたようなものである。5千円札と1万円札でタンス預金をしていたギャングを含む金持ちは、あわてて夜中の金地金商に駆け込み、金を購入したが、金地金商もすぐに廃貨された通貨の受け取りを拒否した。こうした混乱を経て、隠されていた資金は銀行に持ち込まれ、銀行はその所得の出所等と共に誰がいくら交換したかを記帳し、所得の把握に一役買った。この廃貨等の所得把握政策がうまく機能して透明性の高い取引内容が明確になれば、今のインドのGDP総額は40%増加して、将来中国を抜く可能性がある。

 そして今年7月複雑怪奇だった消費税等を、物品税(GST)を導入して3つの種類に統一した。一つは中央政府が課す「中央政府GST(CGST)」、二つ目は「州政府が課す「州GST(SGST)」、最後に物品やサービスが州をまたいで供給される際に中央政府が課す「統合GST(IGST)である。

 詳細は別に譲るとして、金についていえば、これまで金を保有するための税金は、輸入関税が10%、付加価値税が州によって異なるが平均1.2%、実行税率1%、合計12.2%程度であった。GST導入により金のGSTは3%と決められた。1%から最高28%まである段階では低く抑えられたとインド業界筋は歓迎している。それにサービスに対する課税18%、それから戻し税を差し引いておおよそ13.5~14%となる見込み。つまり金に対する税金は徐々に切り上げられている。7月のGSTが導入された当初はかなり混乱がみられ、金の輸入は昨年以来大幅に落ち込んでいた。

 しかし、徐々に新しい制度に慣れて輸入量は元に戻りつつある。一方、インド政府は毎年経常赤字が大きく、昨年は▲152億ドルの赤字と経常収支のランキングは世界178位と最下位に近かった。経常赤字を構成する貿易赤字の中身として、金の輸入が多いことがインド政府の悩みであった。

 先週10月18日、インド政府は金の輸入を四つ星(過去3年間で5億ドル以上の金の輸出入のある商社)及び五つ星(同20億ドル以上)に限ると突然発表した。これらの商社に金の輸入を制限して輸入量をコントロールしようとしている。こうした商社はこれまで、ラウンドトリップと称される金を輸入してドバイやシンガポールの親族企業に再輸出し、現地で再溶解して輸入し直すという実績作りをしていた。この動きによりインドの金の輸入量は二倍になっていた。こうした動きを止めさせることも一つの理由と思われる。

 ワールドゴールドカウンシルのGSTの動きに対するレポートでは、インドの金業界はこうした取引の透明性を高める動きは長い目で見てインド経済の健全な成長に役立つと見て、短期的な金の需要減があるとしても、長期的にはインド経済の発展により金の需要は増えると見ている。果たしてルピーを信じていなかったインド国民が今後も資産を金で保存することを行うかどうかは歴史的な検証が必要であろう。世界第二位の金需要国の今後の動向は注目に値する。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「金融リアルタイムライブ」講師
株式会社コモディティーインテリジェンス
代表取締役社長
近藤 雅世
講師より寄稿いただいた内容をご紹介しております。
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