グローバル・マネー・ジャーナル

2018.1.31(水)

トランプ米大統領、ついにセーフガード発動を発表(大前研一)

2018.1.31(水)
トランプ米大統領、ついにセーフガード発動を発表(大前研一)
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トランプ米大統領、ついにセーフガード発動を発表(大前研一)
【財政健全化】財政黒字化、逃げ水の試算
日経新聞は23日、「財政黒字化、逃げ水の試算」と題する記事を掲載しました。内閣府がこのほどまとめた試算で、歳出改革をしない場合、国と地方の基礎的財政収支の黒字化が2027年度までかかる見通しです。消費増税の使い道を変更し、成長の前提をより現実的に見積もったことで、去年夏の想定から2年遅れるものですが、仮にデフレ脱却が視野に入り、日銀の金融政策が正常化に向かえば、物価の上昇以上に長期金利が上昇する可能性もあり、その場合財政の健全化はさらに遅れることになりそうです。
政府側は、プライマリーバランスが取れるのは2020年だと言って、まだそれを修正していません。ところが内閣府が試算すると、2024年だとか、今回のように2027年、また試算によっては2028年だと言っています。この問題を政府としては扱いたくないのです。
GDP成長率の予想の、ベースラインケース、成長実現ケースのグラフを見ると、過度な成長への期待は禁物です。国と地方の公債等残高もベースラインでの成長では全然減らないのです。
一般会計歳出の主要経費の推移を見ると、社会保障費は構造的にどんどん増えてくるので、他の部分を削ってでも、国債が増えている分の国債費と、社会保障費を確保しないといけません。構造的に悪化するわけなのです。
こうした状況で、プライマリーバランスは2020年というのを修正せず、内閣府の試算の2027年とは7年もずれているのです。安倍黒のコンビがどこか行ってしまって、今後どうなるのかという時に、また赤字予算を組んで、さらに補正予算をすぐに打つ、景気対策に次ぐ景気対策をしているわけですが、実際はそのぐらいの景気対策では効き目がないという状況なのです。
【社会保障問題】手取りの伸び、額面給与の半分
日経新聞は25日、「手取りの伸び、額面給与の半分」と題する記事を掲載しました。内閣府の統計で、給料の額面と手取り額の差が広がっています。保険料や税金の負担が増加していることが要因で、政府は3%の賃上げを呼びかけるものの、社会保障の支出を抑える改革をおざなりにしては手取りが増えず、デフレ脱却もままならないとしています。
名目の雇用者報酬というものを増やしてみても、保険料と税金を引いてみるといわゆる手取り、可処分所得というものはその半分なのです。したがって、報酬が3%伸びたとしても、実際手取りになってくるのは1.5%だという話なのです。実際には3%は伸びていないので、しかも残業カット、60時間上限などと色々なことをやっているので、結局所得は増えないのです。
他は全部そのままにしておけば良いのに、社会保険と税金を増やしながら賃上げをするわけです。そして賃上げをしてそのままにしておけば良いのに、残業はやめなさい、60時間が上限ということで、これによって所得は7兆円も減るのです。結局何がやりたいのか分かりません。座標軸がズルズルと動いてしまっているのです。最終的に我々のほうの手取り、つまり可処分所得、使えるお金が増えないという、これほど無駄な、矛盾したことを平気でやるというわけなのです。
【米通商政策】セーフガード(緊急輸入制限)発動
トランプ米大統領は選挙期間中に、中国を叩くようなことを言っていましたが、ついに太陽光パネルや、主として韓国LGなどの洗濯機の輸入急増に対し、セーフガード、緊急輸入制限を発動し、高い関税を課す方針です。そして、十分良いものになればTPPに参加すると言っていますが、何をもって十分良いものとなるのか分かりません。
TPPは基本的に、アメリカにとって最も有利と言われていたものなのです。したがって、日本政府はせっかく11カ国でこの3月までにサインをし、来年には発行させようとしていたわけで、今更アメリカが入ってくるなら、この新しい条件のもとに参加するべきだとするか、前にアメリカも含めて12カ国で合意したものがあるので、これにアメリカがストレートに戻ってくるならば、それも可能です。
日本が言っているように11カ国の方にアメリカが乗っかってくるなら良いとも言えますが、既に12カ国のバージョンで合意がされていたので、そこへ戻るという話になるのだと思います。結局とても迷惑な話で、トランプ大統領は意見がくるくると変わり迷惑なので、しばらく放っておいてくれと言うしかありません。日本は、アメリカが戻ってくれたらありがたいなどとやっていますが、そういう問題ではありません。
アメリカの主な貿易相手国別の収支では、財に関して言えばやはり中国がダントツで、36兆円に上ります。これがアメリカが中国との間に持つ貿易不均衡です。そして実は細かく見ると、この不均衡の最大の要因はiPhoneなので、つまり台湾のホンハイの輸出なのです。彼らが中国で作ってアメリカに輸出をしているので、このような数字が出てくるのです。
また韓国も、多くのものは韓国からではなく韓国企業が遼東半島などで作ってアメリカに行くのです。韓国や台湾は、中国をスルーしてアメリカに行くという訳なのです。この点では中国はかわいそうです。韓国分と台湾分を引くと、かなり不均衡が減るのです。
また中国分に関しては、ウォルマートなど、アメリカが勝手に買いまくっているという面があります。こうして見ると、中国の会社がアメリカに売りまくっているという部分は非常に小さいのです。中国側から見ても自分たちの経営はそこまでまだ来ていないという話になってくるのです。しかしこの点をトランプ大統領は全く分かっていないと思います。これが韓国、台湾の統計的にずるいところですが、このように統計を取るのが常識なのです。
一方、サービスの収支を見ると、アメリカはサービス部門が強いので、中国が最もこれを買ってくれています。
そして、カナダ、ブラジルと続きます。ただ中国のサービスに於けるアメリカに対する貢ぎ方は3兆円程度に過ぎず、貿易不均衡で言うと全く桁が違います。アメリカはこのようにサービスが強く、TPPはサービスを含んでいるので、アメリカにとっては非常に有利になったはずなのです。
講師紹介
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
1月28日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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【次回の記事】株式市場の1ヶ月を振り返る ~前月株価が動いた業種について~(福永博之)
【前回の記事】各国の財政バランスは改善傾向なのか?(田口美一)
株式・資産形成実践講座 加藤
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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!次週は休日のため、5月10日に配信いたします。