グローバル・マネー・ジャーナル

2018.3.14(水)

先行き不透明感が再び強まっている英・EU離脱問題(大前研一)

2018.3.14(水)
先行き不透明感が再び強まっている英・EU離脱問題(大前研一)
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先行き不透明感が再び強まっている英・EU離脱問題(大前研一)
【米通商政策】輸入制限発動に署名 ~米トランプ大統領~
 アメリカのトランプ大統領は8日、鉄鋼とアルミニウムに輸入制限の発動を命じる文書に署名しました。それぞれ25%、10%の関税を、すべての国に適用する方針ですが、NAFTAの再交渉を進めるカナダとメキシコは当面猶予し、また日本を含む同盟国も、交渉次第で関税を解く余地を残すものとなっています。
 これはほとんど意味をなさない輸入制限です。何のために、誰のためにやるのか全く判りません。カナダとメキシコはNAFTAがあるのでとりあえず猶予するとしたり、ターンブル首相は非常に親米的で政策的にも軍事的にも透明なので、オーストラリアは対象としないなどとしたり、一体何を目的としたものなのかがはっきりしないわけです。40年前の世界観に基づいてこういうことをやっているのです。
 鉄鋼会社も既にアメリカの鉄鋼会社は少なく、ゲルダウやミッタールもアメリカに進出しています。そういう点では必ずしも純アメリカの鉄鋼会社の保護というような、日米鉄鋼交渉をやっていた時などとは既に様変わりしているのです。これはやはり選挙公約という頭があるのでやっている事なのでしょうが、ほとんど意味のないものだと思われます。
 アメリカの鉄鋼の輸入相手を見ると、カナダがトップ、ゲルダウなどが入っているブラジルが2位です。1位のカナダは猶予され、4位のメキシコも猶予されています。そうすると、基本的には3位の韓国、ボスコが対象ということになってきます。これは冷静に考えて、仮に25%チャージをしてもあまり影響は無いと思われます。そして、アメリカの物価がそれぞれ高くなるというだけで、あまりアメリカの雇用にはプラスに効いてこないと思います。
 またアルミニウムについても、輸入相手のほとんどはカナダです。カナダは猶予するということになってくると、こちらもほとんど意味のないことになるわけです。
【イタリア総選挙】野党・中道右派連合が第一勢力
 イタリア総選挙の投開票が4日行われ、野党4党で作る中道右派連合が上下院とも4割程度の議席を獲得し、第一勢力となりました。中でも、EU懐疑派である極右「同盟」とポピュリズム政党「五つ星運動」が大きく議席を伸ばしており、新政権の枠組みをめぐり発言力が増す可能性があります。
 イタリアの場合は、かなりバラバラになってしまっていて、ベルルスコーニ元首相もここにきて復活してきています。イタリアは、北方のロンバルディア、ピエモンテ、ヴェネトあたりが、いわゆるロンバルディ同盟というものを作っています。このロンバルディ同盟があまりにも北のイメージが強いということで、イタリア全土の支援を得るために、「同盟」という名前に変えたわけです。この人たちは日本では極右と言われていますが、あまりそういう主義ではありません。
 工業化の進んだところでは、実は南の方に対する負担が大きく、ローマも北で税金をとって南に援助しているだけではないかということで、それを拒否するための独立運動をしていたのがロンバルディ同盟なのです。源流はそういう同盟なので、この人たちはそれほど極右ではないと思っています。したがって、ベルルスコーニの右派とも組んで一つの政権をとってもそれほど乱暴なことはしないと思います。
 イタリアは都市国家の集合体と言われており、トスカーニャやカンパーニャ、シチリアなど、それぞれ非常に異なった歴史と思想を持っているので、なかなか1つの国としてまとまっていくのは難しいわけです。真ん中にあるローマが、北から税金をとって南を援助して、政治的に安定してきたという経緯があります。ただ今回の状況を見ていると、五つ星運動というのは実はやや微妙なところがあります。単独政党としては最も多くを取ったのですが、五つ星運動はローマやなどで市長を出しているものの、あまり成績は良くなく、スキャンダルなども起こしているのです。その点で、私は今後、五つ星運動がどんどんと伸びていくという事はないだろうと思います。
 私から見ると、まあまあであるロンバルディ同盟を原点とする人たちと、ベルルスコーニの右派が一緒になってやっていけば、今までとあまり変わりないという形になると思います。たまたま今まで左派と言われていましたが、イタリアの場合はフランスと同様で、左に行っても右に行っても、中央にいる人間のキャラクターが重要なのです。今までの左派はレンツィ氏で、非常に良い政治家だと思っていましたが、そのようにそのキャラクターによって違ってくるものなので、左、右と言うのはイタリアの場合はあまり当てはまらないと思います。
 ただリビアの方から海を渡って多くの難民が直接イタリアの島にやってくるので、その面倒を見るというのはかなり大変です。何十万人という人がそこを通じてやってくるので、これに反対だというのは理解ができます。日本でもどこか南の方で同じような問題が起こり、沖縄あたりの一つの島にそれだけ多くの人がどんとやって来るようになった場合には、それを許すなという考えが出てくるのは当然理解ができると思います。イタリアではそのような極端なことがここ数年続いていたので、これから先はイタリアそのものが大きく倒れるような事態は無いだろうと思います。
【英EU離脱問題】「離脱協定」素案を公表
 EUは先月28日、イギリスの離脱の条件を定める離脱協定の素案を公表しました。これはイギリスに支払いを求める精算金の範囲や、経済環境の激変緩和のための移行期間などを提示したものですが、離脱後も北アイルランドをEUの関税同盟に残す可能性に触れたことにイギリス側が猛反発しており、交渉の先行き不透明感が再び強まっています。
 テレサ・メイ首相は、イギリス議会で全く妥協はしないと強がりを言っていますが、そうすると来年の3月には、妥協をしてもしなくても自動的に出て行かないといけないわけです。もうあと一年しかないというこの時期に、全く妥協しないと言っているわけです。
 ここでもやはり重要な点として、北アイルランドをどうするかという問題が出てきています。アイルランドそのものはEUのメンバーなので、離脱してしまったときには、北アイルランドとアイルランドの間に物理的なチェックポイントができてしまうのです。これは北アイルランドの人にとっては全く認められないものなのです。
 また実は、離脱というオプションは北アイルランドにもない上に、スコットランドにもないのです。離脱してしまえばスコットランドは独立運動をし、その後スコットランドがEU加盟の申請をします。EUのメンバーが一国でも反対するとEUには入れないわけですが、その時にはもはや反対するイギリスはEUにはいないので、スコットランドウェルカムになってしまうわけです。
 したがって、イギリスにはこういう問題を冷静に考えていたら、Brexitに投票しなかっただろうという人が現在6割以上いると言われています。私は再投票以外に道はないと言い続けています。BBCなどでもそういう話をしています。ようやくイギリス人はこの問題の難しさに気づいたのです。複雑なものをあいまいにしてくれていたのが実はEUだったわけで、これを切ってしまうとなると、手切れ金ぐらいは何とか払えるでしょうが、今述べたような大きな問題が残るわけです。
 考えてみればUnited Kingdomという国は、not so united kingdomだったのが、北アイルランドとスコットランドとウェールズであり、離脱によりEngland aloneになってしまうということが見えてきているのです。なぜイギリスの人たちがこうしたことがわからず投票してしまったのか、私にとっては不思議で仕方ありません。ずっとイギリスを見てきた私としては、やはりとどまることを決めるためにもう一度国民投票を行うしかないと思います。
 テレサ・メイ首相は、絶対に再投票しないと言っていますので、もしかしたらその代わりに政権を失って、労働党側が再投票をやる可能性が出てくると思います。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
3月11日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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株式・資産形成実践講座 加藤
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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!次週は休日のため、5月10日に配信いたします。