グローバル・マネー・ジャーナル

2018.11.28(水)

国内2Q GDP前期比0.3%減(大前研一)

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国内2Q GDP前期比0.3%減(大前研一)

安部黒バズーカはどこへ行ったのか

 内閣府が11月14日発表した2018年7-9月期のGDPは、前期比0.3%減、年率換算では1.2%の減少となったことがわかりました。マイナスは2四半期ぶりで、全国で相次いだ自然災害の影響で個人消費が伸びなかったことなどが要因とみられます。
 安倍黒バズーカはどこへ行ったのかという話です。
 超緩和政策をやっているにもかかわらず効果は不十分で、これがやはり、低欲望社会である日本のひとつの特徴なのです。人生安心して暮らしてください、貯金を使っても大丈夫ですよという、安心感の出てくる政治をしないと、状況は良くならないのです。いきなり人生100年時代などと言われたら、80歳までは何とかなるとしても、あと20年もと言われると、やはり持っているものは使いたくないでしょう。取っておかなくてはいけないと思って当然です。それに対して政府のやっていることがちぐはぐで、はちゃめちゃなのです。
 日本の場合は、個人金融資産が1300兆円と言っていたものが1500兆円になり、今や1800兆などと言われ、どんどん溜まっていっているのです。少し使ってしまっても大丈夫だということをポリシーの中心に置かないと、そのお金が全く市場に出てこない、誰も使わないというこんな状況が続いてしまうのです。

BREXITの行方、暫定合意のその先

 イギリス政府は14日臨時閣議を開き、事務レベルでEUと暫定合意した離脱協定案を了承しました。協定案は、イギリスとEUの経済関係を重視し、懸案のアイルランド国境問題が解決するまで、イギリスがEUの関税同盟に残ることなどが盛り込まれたものですが、対EU強硬派は、離脱後もイギリスの主権を取り戻せない内容だとして反発を強めており、来年1月に議会承認を得られるかは不透明な情勢です。
 3月29日が最終ということなので、今月中には決着しないといけません。それには議会を通さないといけません。閣僚のほうは一応了承し、了承しなかった閣僚を取り替えてしまいましたが、これからの問題は議会です。議会を通るかどうかは極めて不透明となっています。その後それを国民投票にかけるかどうかという話になります。
 しかしその前に、テレサ・メイ首相に対する不信任案が出てくる事態もあり得ます。日本と同じ制度なので、不信任案によってメイ首相が政権を失うという可能性もかなりあるとみられています。その場合はもう一度総選挙をし、その間ヨーロッパには待ってもらい、3月29日を最終日にしないようにして、もう一度国民投票をするという動きも出てくるでしょう。実際そうした動きを組織的にやっているところも出てきています。
 EU離脱を再投票した場合の投票行動についての世論調査では、現在は残留の方が10ポイントほど上回っています。また、何はともあれ国境管理が非常にきつくなるということになれば、アイルランドとの間だけではなくドーバー海峡含め、問題が生じてきます。特に問題になっているのは薬です。イギリス側も薬を輸出はしていますが、全体で見ると輸入が圧倒的に多いのです。ドイツのある製薬会社は、糖尿病に欠かせないインシュリンが、いくら生産しても追いつかないほど、イギリスの方が積み増しをしようとしているそうなのです。低温で郵送し、保存しなくてはならず、非常に難しいということを、BBCがドイツの製薬会社のインタビューを交えて伝えていました。すでにこうした混乱があるのです
 今回はイギリスとEUが暫定合意をしました。これは長くは持たないと思います。基本的にはEUの関税同盟に残留としていますが、いつそれが終わるのかと言うと、来年から2年後となっています。
 しかし、それを言い出せるのはどちらになるのかを詰めていくと、イギリスに主権がない状態が続くことになるのです。また、そういう煩雑さを避けて、今イギリスにあるオペレーションを大陸に移そうという会社もかなり出てきています。特に金融の分野は、暫定合意のままで、金融機関の世界の中心はロンドンということでやっていくのは難しいことになります。今回の案では難しく、議会を通らない可能性は半分以上あるだろうと思います。

安部・ペンス会談の中味

 アジアを歴訪したペンス米副大統領ですが、13日、安倍総理大臣と会談しました。ペンス氏は会談後の記者会見で、日米間の貿易不均衡はあまりにも長く続いていると述べ、貿易問題を是正するための二国間貿易協定の交渉の促進に強い意欲を表明。一方、安倍総理は協定自体には言及せず、日米双方の利益となるよう日米間の貿易投資をさらに拡大させたいと語りました。
 これはほとんど意味のない訪問でした。ペンス氏は、貿易問題については自分の考え方というよりも、トランプ大統領の言っているような、不均衡そのものがアメリカの雇用を失わせ、アメリカの富を失う原因になっているとの認識で議論していますが、それは事実ではありません。そうした間違ったことに基づいた話なので、空虚な響きになっています。
 安倍総理とはFTAについて議論をすると言っていますが、対する日本側はFTAはやりませんと一生懸命主張しています。茂木大臣などもFTAは無いとはっきり言っているわけです。
 しかし、ペンス氏の頭の中はFTAになっているのです。それを記者会見で問われたペンス氏は、今の項目に加え、プロフェッショナルサービスやソフトウェア、知的所有権なども含めるので、FTAにつながると話していました。それならばTPPから脱落せずに入っていればよかったという話なのです。
 日本の方は「FTAはしない」と言うことを国民に説明すると言っていますが、これも嘘なのです。アメリカとの合意ではそのようにはなっていないのです。それでこのようなことを言われると困るわけです。アメリカ側はFTAを二国間ずつでやると必ずアメリカの方が強いと言っており、日本政府はすぐに国民の方を先に騙してしまうのです。FTAという言葉はもう誰も使っていませんなどと言いながら、実際ペンス氏はFTAを連発していたのです。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
11月25日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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▼その他の記事を読む:
【次回の記事】日米欧2019を読む(藤本誠之)
【前回の記事】
米利上げが与える新興国への影響(唐鎌大輔)

株式・資産形成実践講座事務局
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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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