グローバル・マネー・ジャーナル

2018.11.7(水)

新たな時代の日中関係(大前研一)

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新たな時代の日中関係(大前研一)
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新たな時代の日中関係(大前研一)

新たな時代の日中関係

 安倍総理は25日、日本の首相として7年ぶりに中国を公式訪問しました。総理はまず李克強首相と会談し、東南アジアなど第三国でのインフラ整備を通じた日中協力を強化し、関係の改善を進める考えで一致しました。また、習近平国家主席とは約1時間20分会談し、新たな時代の日中関係について、競争から協調へ等の三原則を確認しました。
 中国の場合には、この人をどのぐらいに歓迎するかということを決め、それに合わせて皆が忖度をするというわけですが、今回の場合には出来る限り高い歓迎度に設定しています。ただ、逆に何か問題が起こったときにはそれが大きく下がり、再び日本企業へ投石をしてガラスを割るような事態にもなり得ます。今回の中国の、食事までするような大歓待にあまり期待をしない方が良いのです。
 また、新たな原則として、競争から強調へ、お互いパートナーとして脅威にならない、自由で公正な貿易体制の発展という三原則を確認しました。しかし中国が尖閣周辺をうろうろすることは止めているわけではありません。
 そして今回かなり重要な事は、ODAを止めるということです。第三国でインフラ開発を協力してやっていこうとなりました。しかし実は、この問題は日本と中国で報告の仕方が違っているのです。例えば第三国のプロジェクトをケースバイケースでやっていこうとなったことに対し、中国のCCTVを見ていると、日本側が一帯一路に賛同し、これを一緒にやってくれると報道されているのです。一方、日本政府はそれだけは言ってもらいたくないとしています。一帯一路に協力するわけではないと言うのです。しかしCCTVでは、平気で安倍総理が一帯一路計画に協力をしていくと言ったというコンテクストで伝えられています。
 また、ODAについては、日本の円借款、ODA関連のものを見ると、中国はかつては供与額トップでしたが、今はインド、インドネシアが上位に来ています。今ちょうどインドの首相が来日していますが、インドが1位というわけです。日本のインドに対する直接投資も近年増加しており、インドに対してはODAだけではなく、直接投資でも日本の存在感が大きくなっているのです。

イタリアはギリシャの二の舞になるのか?

 欧州委員会は23日、EUの財政規律ルールへの深刻な違反があると判断し、イタリアの2019年予算案について、3週間以内に再提出を求める方針を決定しました。これに対しイタリアのコンテ首相は、「予算は経済成長に向け議論を重ねて策定したものであり、見直すのは意味がない」と表明、またマイオ副首相も、「われわれは降参しない。もし降参すれば、緊縮財政を好む人が帰ってくる」として、修正に応じない考えを示しました。
 これはギリシャのツィプラス氏の4年前の状況と非常に似ています。民衆はこのように放漫財政を行っている人を支持して、コンテ氏のような人が首相になるわけです。ただ、そうするとイタリアには何か改善の方法があるのかと言うと難しいのです。例えば、イタリアは対GDPで130%もの累積債務があります。それに対しEUのルールは60%なので、これは許されないことになります。こうしたことに対しイタリア側は、我々としては放漫財政で景気を良くして、結果的に税収を増やしていきたいなどと言いますが、これもうまくいった国など無いのです。期限まで3週間しかないわけですが、イタリアがこのように駄々をこねると、ヨーロッパがさらにガタガタすることになるわけです。
 イタリア10年債の利回りもかなり上がってきています。つまりみんながイタリアの10年債から逃げ始めているわけです。イタリアにガタが来て、もしもBREXITのようにEUを出るとなってしまうと、EUで3番目の規模の経済なので、EU全体にとっても大変なことになると思います。ギリシャがようやくICU、急患室から抜け出てきたところですが、今後はこのイタリアの動きを注視して見ていないといけません。
 コンテ氏ですが、このことが起きたときにはロシアを訪問していました。プーチン氏と非常に仲良くやっていたわけです。あまり危機感を持っていない可能性もあるわけですが、がつんとやられたら目が覚めるのではないでしょうか。ツィプラスの二の舞になってくれた方が良いのではないかと思います。

世界資産運用大手の巨大化

 日経新聞は24日、「資産運用3巨人、世界の1割握る」と題する記事を掲載しました。アメリカの資産運用大手、バンガードグループが、アップル、アルファベット、フェイスブックの筆頭株主になっています。また、ブラックロック、ステート・ストリートを加えた3社の株式運用額は1000兆円に迫り、世界の時価総額の1割余りに相当するということです。
 これはかなり凄いことで、ブラックロックはリーマンショックの後、いくつかのファンドを買って世界トップに出てきたということはよく知られていると思います。しかし、バンガードとストリート・ストリートが上位に入り、かつてトップだったフィデリティーは4位に落ちています。ドイツのアリアンツも巨大でしたが、5位に落ちています。
 このようにファンド会社が巨大になってきて、資産規模の大きな会社の筆頭株主となり、当然のことながら、こうした人たちの意向を受けて会社の意思決定が行われ、反対意見を投じられたら大変だということになっています。企業経営をやっている人にとっては、非常に影響力が大きくなっているのです。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
11月4日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
▼講座受講をご検討頂いている皆さまへ
▼その他の記事を読む:
【次回の記事】日銀の金融政策の今後(田口美一)
【前回の記事】
訪日客の大幅な減少と消費増税(大前研一)

株式・資産形成実践講座事務局
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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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