グローバル・マネー・ジャーナル

2018.7.18(水)

日本の財政健全化は本当に実現するのか?(大前研一)

2018.07.018(水)
日本の財政健全化は本当に実現するのか?(大前研一)
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日本の財政健全化は本当に実現するのか?(大前研一)

【日本】プライマリーバランス 2025年までに黒字化?

政府は、9日に開いた経済財政諮問会議で、中長期の経済財政の試算を示しました。これは今後高い成長率が続いても、国と地方を合わせた基礎的財政収支は、2025年度に2兆4000億円の赤字となり、政府が目標とする黒字化には同じ程度の歳出削減か、歳入の増加が必要としたもので、これを受けて安倍総理は、茂木経済再生担当大臣に対し、目標達成に向け歳出削減の工程表を取りまとめるよう指示しました。
プライマリーバランスを取るのは2020年ではなかったのかと思いますが、いつの間にか蜃気楼のように2025年になりましたと言っています。今回の財政健全化について、経済財政諮問会議で出てきた数字を見ると、驚くようなものがあります。2025年でさえもプライマリーバランスを取るには2兆4000億円足りないと言うのです。その理由は経済成長がベースラインケースと成長実現ケースとあり、成長実現ケースを見ると、これはGDPが毎年3%伸びると言うケースとしているのですが、達成は困難でしょう。
役人や政治家にAIを使って嘘つきの度合いを見たほうがいいと思います。これは嘘に決まっています。今少し税収が増えたと言うだけで、これを借金の返済に使わずにいかに無駄遣いするかという議論が、選挙も近いので政治課題として出てきてしまっているのです。とんでもないことです。
日本はプライマリーバランスが2025年でも達成できません、2%以下の成長だった場合には永久に達成はできませんなどと言った途端に、国債が暴落するのです。国債が暴落してしまうと日本の場合はGPIFも日銀もインプロージョン、つまり中から爆発するという話になるのです。とんでもない状況になるわけです。
日本の場合には、GDPに対する財政の赤字は非常に悪く、イタリアの方がまだ良くなってきています。またドイツは黒字になってきています。
一般会計歳出の主要経費の推移を見ると、実際に社会保障費を見直さなくてはいけない状況で、今は32兆円が社会保障費となっています。これは硬直化していてなかなか減らせない状況にあります。減らすと、選挙では高齢者が票を入れるので、大変なことになってしまうからです。実際、公共事業その他は削っていますが、国債費と社会保障費、つまり硬直性があって減らせないものが、要素として50%を超えるという、恐ろしい状況なのです。

【英】国民再投票すればEUステイの可能性も

EU離脱をめぐるメイ首相の柔軟路線に反対する姿勢を示したということで、ジョンソン氏は辞表で、われわれは植民地の境遇に向かっていると警告、同様の理由でデイビスEU離脱担当大臣も辞任し、強硬派2閣僚が辞任したことによって、BREXITの行方は一層混迷が深まっています。
EU側は実はこの状況をウェルカムしていて、ようやくたたける土台がドキュメントで出てきた、たたき台を出してくれただけ前向きだとしています。今回のミーティングは新しい離脱担当相が交渉をやることになるわけですが、どのように結果が出てくるかは予断を許さないところがあります。
今、イギリスの貿易相手はとしてまず押さえておかなくてはいけないのは、輸出も輸入もEUが圧倒的なのです。トランプ大統領が、そんなことを言うならイギリスとアメリカで特別なディールを二国間FTAでやり、すごいことになると言っていますが、今のところアメリカへの依存は少なく、EU依存が圧倒的に多いので、アメリカが置き換えられるとは思えない状況です。私はトランプ大統領の言っている事は疑問だと思います。いずれにしても現実的に言えば、米英の関係が今までよりも密になるという事は当然考えられますが、EUとの間に少し敷居ができるということになります。
今回メイ首相が出してきたものは、穏健EU離脱案というもので、要するに中間的な領域を作り、そこであらゆるサービスをするものです。
金融関係については、今イギリスは非常に開放的なので、世界中からいろいろな機関が来ているわけですが、そのようなサービス貿易については、ある程度の制限を受け入れるものの、イギリス自身の自由度は確保し、EUには縛られないとしています。人の自由についてはある程度制限をするとしています。特に問題となるのはアイルランドとの国境ですが、ここについてはやはりパスコントロールを置く方向に行っています。連立を組んでいるアイルランド独立党はこれに反発すると思われるので、これがその通り進むかはわかりません。
そうなってくると、コービン労働党党首はこれに反発をしているので人気が出てきている中、結果としてもう一回国民投票をしろというアイデアを出してきています。もう一度国民投票すれば、私が以前から言ってるように、間違いなくステイということになり、BREXITはなくなってくると思います。今閣僚2人がやめてやや空中分解気味ですが、ここで下手をすると再投票、労働党側が勝ち、国民投票でステイになる可能性が少し出てきた状況と言えます。

【トルコ】エルドアン大統領が娘婿のアルバイラク氏を経済担当責任者に起用

6月24日の投票で再選されたエルドアン大統領が、9日、首都アンカラの国会で就任宣誓を行い、通算2期目に入りました。
これにより1923年の建国以来続いてきた議員内閣制が廃止され、国政の広範な権力を集中させた大統領制に完全移行することになります。しかしトルコの経済環境は悪化しており、今後強権の歪みが紛失する恐れもあります。
アルバイラク前エネルギー天然資源大臣が、経済担当責任者に就任しています。彼はこれまでも大臣をやっていたわけですが、今度は財務大臣なのでお金を握ることができ、何かあるのではないかと思われています。
トルコの一人当たりGDPは頭打ちになっています。10000ドルの中進国の罠というところに入り込んでいるので、経済運営が最も難しいところに来ているのです。中進国の罠というのは、ここにきて輸出力などが出てきて経済が良くなったものの、良くなったが故に給料も上がり、競争力を失うという段階です。韓国やトルコ、メキシコなどが陥っている状況です。そのような一番難しい時にエルドアンの独裁ということになっているのです。
フェイククーデターと言われている2016年7月のクーデターが失敗したあと、エルドアンが締め付けをやったわけですが、これが半端ではありません。解雇された政府系の職員が15万人、拘束者が14万人、逮捕者が8万人、閉鎖された学校その他が3,000個、アカデミックで失業した人が6,000人近く、裁判官や検察官は4,400人、閉鎖させられたメディアが189社、逮捕されたジャーナリストが319人という、世界的にもあまり例のないような粛清です。そういう状況になっているわけですが、実はこれは世界的な傾向でもありますが、エルドアン氏は行き過ぎていると思います。
今回の憲法改正では大統領制が始まったわけですが、首相がいなくなってしまったのです。今までは首相と大統領がいて、その前は首相が強く、エルドアン氏も首相をやっていました。しかし今度は大統領に自分がなり、任期を逃れ、大統領のほうに権力を移して、司法にもこの大統領の権限が及ぶことになります。司法は三権分立で独立でなくてはいけないと言われていたのに、大統領の下では司法に対しても影響を及ぼすことができるという、ある意味とんでも大統領ができたということなのです。独裁そのものを定義したような大統領制が今回スタートしたのです。エルドアン自身はもう18年やっているわけですが、今回の場合には、あっと驚くような法律体系の中でスタートしたわけなのです。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
7月15日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
▼講座受講をご検討頂いている皆さまへ
▼その他の記事を読む:
【次回の記事】トランプ劇場と今後の日本の対応策(大前研一)
【前回の記事】
米国が仕掛ける貿易戦争と今後の主要国経済(西岡純子)

株式・資産形成実践講座事務局
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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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