グローバル・マネー・ジャーナル

2017.12.20(水)

日本は消費ではなく貯蓄に課税をすべきである(大前研一)

2017.12.20(水)
日本は消費ではなく貯蓄に課税をすべきである(大前研一)
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日本は消費ではなく貯蓄に課税をすべきである(大前研一)
【日本】2018年度税制改正大綱を決定
 自民公明両党が、2018年の税制改正の大綱を決定しました。これは、年収850万円を超える会社員への所得増税やたばこ増税などで、差し引き約2800億円の増税とするほか、森林保護や観光インフラ整備の財源とする、27年ぶりの新たな国税を創設することなどが盛り込まれたもので、政府はこれを月内に閣議決定し、2018年1月招集の通常国会に関連法案を提出する方針です。
 これで驚くのは、年収850万円以上の人を金持ちだと定義づけているところです。Googleなどのエンジニアの初任給は、1500万円なのです。世界的に見ると850万円で金持ちだと言う先進国などないのです。850万円以上稼いでしまうと金持ちの部類に分類され、なんでもチャージしてしまうというとんでもない判断を勝手にしているのです。議員たちも当然これを超えています。自分たちでどんどん引き上げていて、2400万円以上の給与を貰っている彼らは、超金持ちになるわけです。
 今回定義づけられた金持ちたちに増税するとなると、さらに景気が悪くなります。やはり何千万円以上の人を金持ちとしてやるのは良いと思いますが、850万円などという水準でやると、世界に対してもとてもみっともないと思います。
 またファイナンシャルタイムズは、消費税など消費側に課税をするのではなく、貯蓄に課税しろと言っています。これが私が言っている資産課税です。固定資産と流動資産、貯金などを含めて、そちら側に課税するということに対しては大賛成です。基本的には、やはりフローに課税をするのではなく、ストックに課税するようにしないと、日本のような国はだめなのです。これから給料があまり上がっていくこともないので、こうしたことを口を酸っぱくして言っているのですが、ようやくファイナンシャルタイムズが、日本のような国は消費ではなく貯蓄に課税をという内容を出し、やっと援軍を得たという感じです。
 家計と企業の現預金の保有額推移を見ると、徐々に増えていっているのが分かります。長期不況と言われながらも貯蓄は増えているのです。こちら側に課税していくと、1%の課税だけで8兆円、9兆円という額になるので、このことが非常に重要だと考えます。
 基本的にはフローに対する課税を止め、ストックに対して課税をするということです。企業で言えば、使っていないお金等の資産や、生産に利用していない土地などに課税していくということで、1%で十分だと思います。所得税等は全て廃止し、相続税も廃止し、資産課税に切り替えると、相続をした子孫が同じだけ払っていくことになるのです。その意味では、いわゆる相続というものに対して資産課税は中立なのです。そちら側にシフトするべきなのですが、どうも財務省や議員たちは金持ちに課税しろと言いがちです。しかし、本当の金持ちは資産を持っているので、そちら側に課税をするのが正しいと思います。
【米国】税制改正・法人税率21%で大筋合意
 アメリカ共和党の議会指導部は13日、上下両院の一本化へ向け協議していた連邦法人税率について、21%に引き下げる案で大筋合意しました。両院とも20%への引き下げでそれぞれ可決していましたが、実施時期を2018年で統一する一方、税収減を懸念する議員に配慮し、減税幅を1%縮小したもので、週明け早々にも上下両院で採決する見通しです。
 今年中にトランプ大統領がサインして、法律になるということで、これができればトランプ大統領の役割は終わりということで、共和党はトランプ大統領と決別しても良いというほどではないかと思います。その点でこの法案は極めて重要です。
 アメリカの税制改革の要旨を見ると、連邦法人税を21%に下げるものの、州税もあるので実質的には20%台の上の方になります。また海外の留保資金を戻す際も配当課税を廃止します。これは非常に大きなことです。2.5兆ドルのお金がアメリカに舞い戻る可能性があります。これにより、アメリカ側はジャブジャブのQE、つまり、ものすごい額の印刷をしてお金を2.5兆ドル刷ったのと同じ効果が出てくるので、これはものすごいことになるでしょう。
 また個人の所得税の最高税率を、39.6%から37%に引き下げますが、これはあまり響かないと思います。そして、いわゆる国際課税ということで、多国籍企業のグループ取引に一部課税し、物品税が非常に問題視されていたわけですがこれは取り止めになったということです。さらに海外留保資金に一度限りで課税という事ですが、このように課税すると嫌がるところが多いので、今後これは緩められる可能性もあります。とにかく、アメリカに金が戻ってくることが非常に重要なのです。
 こうなると、クリントン時代の後半のように、盆と正月が一緒に来たような状況になるわけです。日本への影響も非常に大きくなるでしょう。今、アメリカは金利を少し高めてきているところなので、そこにまたお金がどんと入ってくるということになると、クリントン政権の最後に非常に似た状況になってくるというわけです。アメリカは株も上がれば、海外からのお金もどんどん入ってくるという状況になる可能性があります。
【タックスヘイブン】EU共通のブラックリスト承認
 EU財務相理事会は5日、タックスヘイブンをめぐるEU共通のブラックリストを承認しました。これは韓国、パナマ、チュニジア、UAEなど、17の国と地域を掲載したもので、EUが一体監視する体制を整え、課税ルールを見直すよう圧力をかける考えです。
 今回は、大見出しの割にはよく見ると細かいものです。税務当局間の納税者情報の自動交換が徹底していない地域、これはサモアなどとされていますが、自動交換をできるようなシステムを持っていないだけかもしれません。法人税収を著しく減少させる国際的なタックスプランニングの基準ができていないUAE、また、OECDの税務執行其助に関する多国間条約を締結していないバーレーンのようなところなどが挙げられていますが、ずいぶん細かいことだと思います。
 他にも、有害な優遇税制があるのが韓国などで、韓国企業に特に優遇している税制があるということで、全部で17ヶ国をブラックリストに掲載したといいますが、あまり大きな影響はないでしょう。韓国がここに挙げられたというのは驚きですが、韓国はこういうことがあると、すぐ直すという癖のある国なのですぐ問題は無くなるだろうと思います。
講師紹介
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
12月17日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
▼講座受講をご検討頂いている皆さまへ
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【次回の記事】【総括】2017年の価格の動きをみる(近藤雅世)
【前回の記事】日本企業の競争力のために必要なこととは何か(大前研一)
株式・資産形成実践講座 加藤
 多くの受講生の声が、講座の11年の歴史が詰まった新講座を3月にリリースしました。受講を開始されると、最初は何の講座だろう?というくらい、自らのライフプランについて考えます。それは、資産運用は、ライフプラン実現の手段だからです。
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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!次週は休日のため、5月10日に配信いたします。