グローバル・マネー・ジャーナル

2017.12.13(水)

日本企業の競争力のために必要なこととは何か(大前研一)

2017.12.13(水)
日本企業の競争力のために必要なこととは何か(大前研一)
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日本企業の競争力のために必要なこととは何か(大前研一)
【英EU離脱問題】「清算金」で英、EUが基本合意
 複数のイギリスメディアが先月28日、EU離脱交渉の懸案である清算金をめぐり、イギリスとEUが基本合意に達したと報じました。イギリス側が500億ユーロ、約6兆6000億円を払う方向で検討しているということで、これによりこう着状態にあった離脱交渉が大きく前進する可能性があります。
 テレサ・メイ首相は国内では孤立していて、ここでいきなり事態が進展しました。これまでEUは10兆円程度を要求していたところ、イギリスは2兆7000億円を提示し、話にならないと突き返されていました。6兆6000億円なら話し合いにもなるという額です。問題も一歩前進し、EUも話し合いに乗ってくるでしょう。
 一方、EU市民の権利保護や、アイルランドの北アイルランドとの国境問題等は非常に難しい状況が続いています。もうあと一年しかないので、今後どうなるのか注目されます。
 テレサ・メイ首相の立場はますます弱くなっていることに加え、勝手にこのように5兆円も清算金の支払い額を上乗せしたことがいいのかどうか、労働党のコービン党首がそうした点を責めている状況です。突然この数字が出てきたので、半年も時間を無駄にしてなぜ今まで言わなかったのかと、皆が驚いている状況で、実態は全体像が見えていないというわけです。
【税制改正】所得税改革案で合意
 政府与党は6日、自民党税制調査会の所得税改革案で合意しました。基礎控除を一律10万円引き上げる一方、給与所得や公的年金の控除は減額するもので、これにより、フリーランスなどで働く人は減税、年収が850万円以上の会社員は増税になるということです。
 この年収850万円という額は、世界的に見ると先進国では決して高所得とは言えません。この点から見ると、これを高所得者と言っているところからまず認識が違うように感じます。
 また例えば、私立高校の授業料を無償化するとしていますが、年収800万円以上の世帯では無償化はやりませんと言っているのです。これは一体何なのかという印象です。そうなると、増税をされた上に、子供が高校へ行っている場合、本来無料になると思っていたところが自分の収入が超えているという事態にもなるのです。
 ここから先は、上に政策あれば下に方策あり、という中国を見習って、サラリーマンを辞めて会社とは契約関係となり、自分はフリーランスの人間として会社と契約をするということも考えるべきでしょう。そうすると年収は変わってきます。自分の事業体としての収入ということになるので、自分の給料は250万円にすることも可能なのです。さらに家を事務所に使っている場合には、それを経費とすることもできます。
 結局、会社員、使用人という考え方を止め、プロ野球選手等と同じように、契約にしてしまうという働き方、働くモードがこれから研究されていくでしょう。このように一律に授業料無料ではなくなるとか、急に負担が重くなるとか、私立に行かせるつもりだったのがとんでもない授業料を払わされるとか、そうした事態が起こるわけです。そして、そのボーダーが850万円などというのは、意味がわかりません。8500万円というなら話は別ですが、850万円の所得でそのようなことをされては非常に微妙です。
【法人税率】賃上げ、革新投資で法人税20%
 政府は、積極的な賃上げなどに加え、IoTなど革新的な技術に投資した企業の法人税負担を、実質20%程度に引き下げる方針を固めました。アメリカやフランスなどの動きをにらみ、当初想定していた25%程度からさらに引き下げるもので、日本の立地競争力を高めながら、企業がため込む資金の活用を促す考えです。
 賃上げをした会社やIoTなどの革新的な投資をした会社に対して、大幅な税率引き下げをするというものですが、それならばスーパーコンピューターの会社を逮捕するのはやめるべきでしょう。とにかく、こんな形で、ニンジンを餌にして、人間を釣ろうなどという考えは間違いです。もっと客観的にやるべきなのです。
 日本企業の競争力のためには、賃上げではなく、利益を上げることを促すべきです。それにより、法人税は20%であっても払う税金は額が高くなるということが大切なのです。法人税を20%に下げても、実際の納税額は増えるという、レーガン税制の時のようなやり方を考えるべきなのです。
 そもそも、革新投資かどうなのか、政府が判断できるものなのでしょうか。革新投資の最たるものは、尖ったすごい人間を採用してくることにあるのです。そういう人の年俸は一億円かもしれません。革新投資と言うと、なんとなく設備投資やIoT投資だと思っているかもしれませんが、私が今日本の企業に最も足りないと思っているのは、世界に冠たる仕事ができる人間です。尖った人間を採用して、1億でも2億でも払うという考えが足りないと思うのです。これなくして、日本は21世紀の競争力は得られません。政府には余計なことはしないでもらいたいものです。
 政府は一体何をもって、この法人税20%に値する会社と言うのかはっきりしません。そうすると皆嘘をついて、革新的投資、IoT投資と言い始めるでしょう。実際やっていることは何かと言うと、とんでもない下請けいじめのビジネスなのかもしれないのです。
 このように、看板だけで税率が変わるようなことをやって、マイクロマネジメントをしては意味がありません。また賃上げをするかどうかというのは、企業が自由にやることにより結果的に大きな利益を出して、法人税を下げても税収そのものが上がるということが優先なのです。
 人間を人形劇のように釣り糸で吊るして操ろうという今回の案は、とんでもない発想です。さらに、それに対して、バカにするなと言わないところが、経団連のすごいところでもあります。企業は、こうしたふざけたことを言う役所や政治家がいたら、経営もわかっていないのに口を出すなと言うべきなのですが、みっともない限りです。
講師紹介
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
12月03日及び10日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
▼講座受講をご検討頂いている皆さまへ
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【次回の記事】日本は消費ではなく貯蓄に課税をすべきである(大前研一)
【前回の記事】IMF見通しにみる世界の経済成長率推移(田口美一)
株式・資産形成実践講座 加藤
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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!次週は休日のため、5月10日に配信いたします。