グローバル・マネー・ジャーナル

2018.10.24(水)

日米欧で異なる金融緩和からの出口戦略(大前研一)

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日米欧で異なる金融緩和からの出口戦略(大前研一)

米中間選挙 失業率低下の追い風

 アメリカのアマゾンドットコムは2日、国内の従業員の最低賃金を、時給15ドル、約1700円に引き上げると発表しました。これは、連邦政府が定める最低賃金7.25ドルの2倍以上に当たりますが、急成長を続けるアマゾンに対しては、利益を従業員や社会に還元していない、倉庫での労働環境が劣悪などの批判が高まっていました。
 アマゾンがいきなりこのようなことをやると、いろいろな人に迷惑がかかることになります。アメリカの最低賃金またはそれ以下で働く労働者数の推移を見ると、実際に数百万人が最低賃金以下で働いていることがわかります。ただ、最低賃金の2倍でやるというアマゾンは儲けすぎという批判で、これまでかなり安く倉庫などで使っていた人たちの賃金をいきなり15ドルに引き上げるとなると、今度はウォルマートで働く人がいなくなってしまいます。
 アメリカの労働者の時給の中央値を見ると、確かに15ドル近辺には来ていますが、その下には7.25ドルというところが最低賃金であり、その最低賃金を堂々と使っている企業が多くあるわけです。
 一方、主な著名企業の社員の給料中央値を見ると、Facebookはなんと20万ドル以上です。これが中央値なのです。グーグルのalphabet、Netflixなども、中央値が数千万円です。これに対してアマゾンは、物流などで働いている人が多いので賃金の中央値もうんと低いわけで、 コカコーラよりも低くなっています。Facebook、alphabetなどは、何億円と稼いでる人がかなりいて、その賃金中央値が何千万円となっている、このことを知っておくのも良いことだと思います。
 アメリカ労働省が5日発表した9月の雇用統計は、失業率が3.7%と、前の月に比べ0.2ポイント改善し、48年9ヶ月ぶりの水準となりました。また非農業部門の雇用者数も、13万4000人増加していて、11月の中間選挙で共和党とトランプ政権の追い風になりそうです。
 失業率がこれだけ下がっていると、中間選挙あるいはアメリカの選挙で、政権政党は負けないのです。従来の歴史が正しければ、この状況でトランプ大統領にとっては負ける理由は全くありません。ただ彼は、他のいたるところでドブ板を踏み外しているので、今回の結果がどうなるかはよくわかりません。ただ実際には、対前月比で雇用者数は増加が長く続いているわけです。したがって失業率も3.7%となっているのです。48年ぶりと言いますが、私が記憶している限りではこのレベルの失業率になったことはなかったのです。
 トランプ大統領は依然として間違ったことを言っています。中国が雇用を奪ったと、雇用を奪われた側に立って言っていますが、そんな事はないのです。たとえ、中国に行った会社がアメリカに戻ってきてやろうと言ったとしても、この失業率では中国から事業を戻せないのは明らかです。こうしたまともな議論をアメリカでやる人がいないということが大きな問題です。しかも、今の政権における多くの有力者が、中国が雇用を奪った、われわれはこの雇用をアメリカに戻さなければならない、などと言っているわけです。しかし中国に雇用を奪われた人が一体どこにいるのでしょうか。
 したがって、間違ったレトリックで国民感情だけを煽っている、要するにこれはテレビプロデューサーのやり方です。そうしたトランプの欺瞞というものが、ここにはっきりと現れているわけです。世の中は少し不安や行き過ぎを感じているので、株も何もかも、落ちやすい状況になっているわけです。

世界の金融緩和に対する出口戦略

 10日のアメリカ株式市場で、ダウ工業株30種平均が前日比831ドル安い、2万5598ドルで取引を終えました。アメリカ長期金利の上昇や、アメリカと中国の貿易戦争への懸念が背景にありますが、これを受けて11日の日経平均株価も大幅に下落、下げ幅は一時1000円を超え、約1ヶ月ぶりに1万3000円を割り込みました。
 トランプ大統領はFRBを非難しています。パウエルは何をやっているのか、クレイジーだというふうに言っています。しかし、クレイジーなのはトランプ大統領の方なのです。トランプ大統領はパウエル議長に対し、金利を上げてきたから株が暴落したと言っているわけですが、そうではなく、トランプ大統領自身が中央銀行に余計な干渉をし、政権内で対立や矛盾が起こり得る、もしかしたらパウエル議長をクビにするかもしれないということから、この暴落が起こっているわけなのです。トランプ大統領は原因を知りたければ鏡の中を見てごらんと言われるわけです。これは今アメリカで流行っていて、海外の人が何か問題を言い、トランプよ、原因を知りたければ鏡をのぞいてごらん、そこにその原因があるという風刺です。
 FRBが上げてきている政策金利ですが、この失業率であれば、こうした形で金利を上げていってもほとんど問題はなく、またそうしないとハイパーインフレになってしまうのです。非常にインフレを導きやすい状況なので、パウエル議長はそれを見ながら政策金利を上げていかないと、むしろ大変なことになるのです。中央銀行の総裁らしい動きをしているわけです。仮にイエレン氏が続けていたとしても、同じようなことをやっていたと思います。パウエル議長は、引き続き政権が何を言おうとも、自分たちの判断でやるのでご安心を、と言っているわけですが、トランプ大統領は何もわかっていないのに騒ぎ立てるという特徴があるようです。
 一方、ECBは出口に向かっていて、これから金利を上げると言っています。また、日本はマイナス金利がようやく0に張り付いてきたわけですが、これを上げていくときには、日本の場合はたるみっぱなしになっているので、出口戦略は非常に難しいと思います。アメリカは首尾よく、たるんだ後にこのように金利を上げてきていて、それでも失業率が低いので大きなマイナスの影響は出てきていないという、ある意味うらやましい状況になっているわけです。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
10月21日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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第4次内閣発足から見る未来(大前研一)

株式・資産形成実践講座事務局
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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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