グローバル・マネー・ジャーナル

2018.4.4(水)

更なる市場開放を求めるトランプ政権の動向(大前研一)

2018.04.04(水)
更なる市場開放を求めるトランプ政権の動向(大前研一)
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更なる市場開放を求めるトランプ政権の動向(大前研一)

【日米関係】2018年版貿易障壁報告書を発表 ~米通商代表部~

 アメリカ通商代表部は先月30日、2018年版の貿易障壁報告書を発表しました。日本に対して、ジャガイモなど農産品の更なる市場開放を求めた他、貿易赤字の主な要因とする自動車についても、日本政府による承認手続き等が非関税障壁になっているとして、改めて不満を表明。4月に予定される首脳会談で、トランプ大統領が一段の市場開放を求める可能性があります。
 これは本当に旧聞に属することで大変大きな問題です。こういう交渉をして、長い間に日本とアメリカは今日の良好な関係にまで至ってきたわけです。ただ、アメリカの中で特にトランプ大統領に近いフォード家が、日本でほとんど撤退してしまったのでその恨みがあり、非関税障壁のために自分のところのものが売れていないのだということを、わかりやすくトランプ氏に吹聴しているわけなのです。これが要するにトランプ氏やライトハイザーUSTR代表などが、かなりいい加減に主張していることなのです。
 2018年版の貿易障壁報告書が出ていますが、今までの歴史から見たら何を言っているのかと驚きます。突然新人が出てきて、日本という国を勉強して適当なことを言っているのです。またジャガイモが登場してくる理由はアイダホにあります。アイダホあたりがジャガイモの輸入を求めているわけです。しかし私に言わせると、農産品の交渉はさくらんぼなどをはじめ、長い歴史があるのです。
 自動車に関しては、日本の輸入新車登録台数の比較を見ると、ドイツ勢が上のほうに並んでいます。プジョーやルノーがその次にあり、フィアットなども入っています。フォードは正式に撤退してしまっていますし、この中にアメリカ勢はほとんどないのです。
 結局、アメリカの車が日本人に好まれないというよりも、日本の中で売る努力をしてないという点に問題があるのです。今度のトランプ政権との交渉では、グダグダ言わずアメリカで売れている車を、日本向け等とは考えずにそのまま輸入しろと主張してきたのです。韓国に対しても同様のことを言っていて、韓国はそれを飲みました。要するに、わが国の色々なルールに準拠したものでないといけない、などと言うなというわけです。
 選挙の前で首がちぎれそうになっている人が騒いでいるという感じです。このような要請は、一度ドイツのメーカーに日本でどのような努力をしてきているのか聞いてごらんと、突っ撥ねれば良いのです。今は関税もないわけです。そういう意味で交通の安全規制等だけは準拠してもらわなければ困るという事はもちろん当たり前です。
 安倍総理が今度アメリカに行くことになっています。文在寅氏と金正恩氏のミーティングの前に、トランプ氏と安倍総理のミーティングがフロリダであると言われているわけですが、その辺を大きく煽られると、安倍総理は全部飲んでしまう可能性が高いです。トランプ氏は、晋三はよくやると言っているわけですが、今回の発言を見ていると、あいつがニタニタ笑っているのはアメリカを騙しているからだ、その喜びの顔だ、などとトランプ氏は平気で言っているわけです。

【米フェイスブック】時価総額約8兆4000億円減

 米フェイスブックの個人情報が流出していたことが発覚して以降、株価が27日までに18%下落し、時価総額も約8兆4000億円減少しました。沈静化へ向けてザッカーバーグCEOは議会で証言する考えを示していますが、一部の投資家からは、これらSNSへの規制が厳格化されるとの懸念も上がっています。
 このフェイスブックの問題はかなりシリアスで、時価総額も大幅に減っているわけです。アルファベットやツイッター、そして最近の発言だとアマゾンまで攻撃対象になってきているということです。フェイスブックの株価を見ると、落ちているとは言っても暴落ではありません。ただ18%というのはかなり大きな下落です。
 ITのビックスリーなど、アメリカ上場企業の時価総額ランキングを見ると、実は3月30日の時点でアマゾン、マイクロソフトの次に、バークシャーハサウェイが出てきてしまっていて、5位に入っています。上位はIT企業ばかりでしたが、それ以外も入ってきているのです。その次に中国のアリババやJPモルガン、ジョンソンアンドジョンソン、そしてエクソンモービル、バンクオブアメリカ、ロイヤルダッチシェルというところが入ってきていて、この1ヵ月ほどの間にIT関連の下落が激しかったことが分かります。
 またESG投資ということも関係してきます。ESGは環境、社会性、ガバナンスの頭文字で、投資判断として財務諸表ではなくこのESG関係の要素を考慮してもらいたいということをアナン国連事務総長が機関投資家に呼びかけたことがあります。それにより国家年金等がPRI、責任投資原則に署名しています。今の年金基金や日本のGPIFもこれに署名をしています。こうしたことを考えるといわゆるソーシャルという部分で影響があるわけです。
 フェイスブックに関しては、デリートマイアカウント、アカウント削除の流れが起きていますが、実際、自分のアカウントを登録してしまっているとなかなかデリートできません。デリートのプロセスがものすごく難しいのです。デリートしたとしても、以前の友達の友達のようなところに自分の情報が残っています。そうしたものは今後も漏れる可能性はあり、完全に消すことはできません。
 今まで生きてきた中で触れ合ったり名刺交換をしたりした人、私の場合は何千人かいると思いますが、そうした人たちとの関係を、1枚の名刺を消したと言っても、なくすことはできないのです。その意味でフェイスブックの最大の問題点は、登録している人が膨大な数であるだけではなく、その関係の関係を含めたつながりをデリートすることがほぼ不可能ということなのです。
 また、EPA、つまり米国版の環境省というものがありますが、デジタル社会にもこの環境省に匹敵するものが必要なのではないかという議論も出てきています。水であればこうして濾過したものしか出してはいけない、空気にはこれ以上のこのガスを出してはいけないなどといった規制があります。デジタル社会でもEPAというものをきちんと考えようという、極めて重要な記事が、フェイスブックの樽から害のある汚い油が漏れ出しているという絵とともに、ビジネスウィークに掲載されています。
 一方、フェイスブックは、自分たちが犠牲者だと言っていました。ケンブリッジアナリティカ社などがデータを転売した、自分たちは犠牲者だと言ってたわけですが、そうではないだろうという批判から、結局一般の人たちからの信頼が著しく失われました。しかし、自分はここから脱出したい、フェイスブックの痕跡を全部消したいと思った時には、それが消えないという問題が明らかになってきたとうことなのです。こうしたシリコンバレーの逆回転は今後もかなり尾を引き、世界の経済地図をも変える可能性があるということなのです。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
4月1日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
▼講座受講をご検討頂いている皆さまへ
▼その他の記事を読む:
【次回の記事】米中関係悪化の背景 ~標的となったトランプカントリーの農民たち~(大前研一)
【前回の記事】米通商政策にみる貿易不均衡のからくりとは(大前研一)

株式・資産形成実践講座事務局
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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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