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2018.09.19(水) |
欧州における混乱と崩壊の兆し(大前研一) |
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【英】無秩序離脱なら欧州で運転免許無効も?
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日経新聞は6日、「在英金融引き抜き、白熱」と題する記事を掲載しました。
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これはフランスのマクロン大統領が、イギリスに代わる金融都市の座を狙い、銀行やファンドの誘致策を次々に打ち出していると紹介しています。
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また、ドイツ取引所も、これまでロンドンが独占してきたユーロ建ての金利デリバティブ取引を活性化させる考えで、こうした金融業誘導の思惑も絡み、今後政治的な駆け引きがいっそう活発になりそうだとしています。
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来年の3月のタイムリミットの時点で、もし合意がなければ、HARD BREXITということになります。
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そのような無秩序離脱となった場合、ブルームバーグの報告によると、イギリス人は欧州で自動車免許を使えなくなるということです。これはかなり大きなインパクトになるでしょう。
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金融機関の場合には、単一パスポート制度によって、域内の他国での営業ができていますが、離脱により他国での業務に支障が出ると言われています。
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金融拠点としてのロンドンの受け皿を狙っているのは、フランクフルト、パリ、アムステルダム、ルクセンブルク、ダブリンで、基本的には皆、ロンドンの機能に来てほしいと思っているわけです。
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一方、イギリスとしては離脱によって惹きつけられるようなものはほとんどなく、失うものばかりと言えます。車の免許も使えなくなり、薬も輸入できなくなるかもしれないなどと言われていて、そのような情報があるなら投票する前にもっと詳しく伝えておいて欲しかったというところでしょう。
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そうは言っても、もしもう一度国民投票にかけるとなれば、離脱の交渉は一旦ストップとなり、来年3月のタイムリミットを一度EUに延期してもらい、半年ほどかけてやらないといけないわけです。しかし、すでにそういう時間はなく、実際にはそこまで行くか、メイ政権が崩壊するかという状況です。
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タイミング悪く、労働党が内輪揉めの状態に入ってきているので、このまま簡単に労働党に移行するという状況ではありませんが、メイ政権が崩壊するということ、つまり与党側が分解するということは、すでに過半数は持っていないので、可能性としてあり得ると言えます。与党は北アイルランドの議席を頂いて、助けてもらっている状況なのです。 |
今後特にアイルランドとの国境問題に関しては、まだまだ不確定要因があります。BREXITはいずれにしても、このまま行けばHARD BREXITの方に行くでしょう。
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ただ、アイルランドとの国境の問題については、日本で言うETCのようなハイテクを使って、対応する案が出てきています。いちいちパスコントロールで止まったりはせず、クリアされている車や人はETCのようなもので行き来ができる、人間と車が同時に、止まらずに行き来できるようにするといったアイデアがBBCなどでは取り上げられてきています。ハイテクを使うことにより、だいぶ楽になるのではないかという意見も出てきているわけです。
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【独】排他主義顕在化
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日経新聞は12日、「ドイツ、極右の伸長許す」と題する記事を掲載しました。これはザクセン州ケムニッツで8月末に発生した大規模なデモは、排他主義が色濃く反映したものだったと紹介しています。
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これらを取り込んだ極右政党が支持率を伸ばし、今やドイツ政治が無視できないほどの勢力になっており、極右が第一党になるという悪が実現すれば、ヨーロッパ全体の政治危機につながると指摘しています。
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今、このザクセン州のケムニッツというところが大きな注目を集めています。この街で開催されたストリート・フェスティバル最中の死傷事件をきっかけに、いわゆるネオナチのような人たちが警察と揉めて、さらにネオナチに反対する人たちとも衝突しています。
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その後ここ2週間ほどは、少し落ち着いた状況になってはいますが、やはり移民排斥という中で、ヒトラーの言葉やシンボルを使いながら活動するという動きが出ているのです。アメリカにもKKKのような同様の動きがありますが、ドイツの場合には議会の勢力にも現れています。
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ドイツ連邦議会の議席数を見ると、与党のCDU/CSUが、かなり議席を減らしています。一方で、極右政党と言われている、ドイツのための選択肢、AfDが、大きく議席を伸ばしてしまったのです。これが州によっては非常に大きくなり、第一党になる可能性もあるというわけなのです。
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ドイツの人口に占める外国人の推移を見ると、ここにきてやはり難民なども含めて伸びています。メルケル政権に対する批判もこの点にあるというわけです。
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一方、経済状況を見ると、失業率は下がっているので、難民がいなかったらどうなっているかという問題もあるのです。さらにGDP成長もきちんとしている状況です。
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したがって、ドイツの悩みというのは、経済がきちんと動いており、しかも雇用面でも、ほとんど人が足りないのでなかなか事業を伸ばしていくこともできないという時に、なぜこのようなケムニッツのような問題が起きるのかということなのです。
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これはやはり、自分の職が奪われる、この人たちが治安を悪くしているということで、ヒトラーの面影を掲げた人たちが跋扈し、警察ともぶつかる、そして、反対している穏健な市民ともぶつかるということになっているのです。そして今回は死傷事件の発生により、さらに感情を煽っていると言う部分もあるのです。
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【次回の記事】トランプ大統領のしたたかな戦略(大前研一)
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