グローバル・マネー・ジャーナル

2017.11.1(水)

現行制度が阻む所有者不明土地 有効活用化の実態とは(大前研一)

2017.11.1(水)
現行制度が阻む所有者不明土地 有効活用化の実態とは(大前研一)
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現行制度が阻む所有者不明土地 有効活用化の実態とは(大前研一)
所有者不明土地の実態
 増田寛也元総務大臣など、民間の有識者で作る研究会は先月26日、所有者の分からない土地が、2040年に全国で約720万ヘクタールに達するとの試算を公表しました。死者の数が増えるのに伴い、相続登記されず、実際の所有者が把握できない土地が増えると推計したもので、こうした土地が原因で生じる経済的損失額は、40年までに6兆円規模に上るとしています。
 こうした土地は、以前から九州の面積を上回る巨大なものだと言われてきました。それが2040年には北海道の面積に匹敵するようになります。これは法律を変えないとどうしようもありません。
 例えば、今私が進めている熱海のプロジェクトでもこんな経験をしています。一部の土地に住んでいた人が老人ホームか何かに入り土地が空いていたのです。そこも合わせて買った方が良いので買いたいと意思表示をしたのですが、実はそこには温泉があったのです。そしてその温泉権を16人の人が持っていたのですが、そのうちの半分はすでにあの世に行っているのです。
 そして、あの世に行った人のハンコがないと、この土地は分譲できないと言うのです。家の持ち主は売ってもいいと言っているのですが、その温泉についての承認が取れない限りは手続きができないのです。あの世からハンコを持ってくる方法を探さないと、にっちもさっちもいかないというのが現状なのです。ほとんどがこういうパターンだと思われます。
 所有者不明土地がどういう理由でできたのか、その原因を見ると様々な理由がありますが、今私の話した例が最も分かりやすいと言えるでしょう。ハンコが16ないと、譲れないわけです。例えば銀行で長い間放置された休眠口座のようなものがあった場合は、10年以上経っていれば社会福祉に持っていけという議論があるわけですが、この点に関しては、まだ法律がないのです。それが原因でこうなってしまうのです。
 相続未登記の理由を見ると、数次相続で遺産分割協議が難航している、あの世に行ってしまったためハンコが無いなどといった理由が挙がっています。要するに、自分が持っているときは固定資産税を避けたいということで、所有を明確にしない例が多くあり、そのまま死んでしまうと、休眠口座とよく似ていますが、この点についての法律がないということなのです。
 とにかくこうした相続未登録の問題については、法的にある程度の広告を出し、一年間さらしておいても何もなかった場合にはこのようにすると告知するべきだと思います。ただその場合、危ないのはアンダーグラウンドの方々がその土地は俺のものだとやってきたときに、あなたではないと言う理由も明確には見つからないことです。そうなった場合どのように防ぐのかという対策が必要です。
 ただやはり広告を出し、一定期間が経過した場合には公共の方で吸い上げてしまい、それを有効活用するというやり方にしないと、どうしようもないでしょう。土地が欲しい人はたくさんいるはずなのですが、制度がそれを阻んでいるのです。
経営者調査
 日本能率協会が先月18日にまとめた調査結果によりますと、国内企業の7割余りが、現在の主要事業について5年後の見通しがつかないと考えていることが分かりました。ITの急速な進展など、環境の変化に危機感を持つ経営者が多い実態が示されました。
 これは人材の面からも非常に大きな問題です。3年間は何とかなると思っている人と、3年間通用するか懸念を持っている人とが、同じ程度いるのです。5年になると、現在の事業形態が通用すると感じている経営者は15%しかいないのです。一方、懸念を持つと言う人が半数以上に上ります。さらに10年となると、ほとんどが今の産業、業態もダメなのではないかという考えになっているのです。相当大きな、いわゆるデジタル・ディスラプションといった変化が起こっていますが、経営者はそこをよく理解しているというわけです。
 しかしながら、そのことを受けて勉強するかというとそうではなく、座して死を待つといった状況にある企業が非常に多いのです。若手の人はそういう企業に勤めていれば当然不安なわけで、自分たちにやらせてくれと言えば良いのですが、やはり日本の場合にはそのような状況にはなっていないという現状です。
出国税の導入
 観光庁と財務省がこのほど、日本を出国する旅行客らを対象に、一人当たり1000円の出国税を徴収する方向で調整に入ったことが分かりました。訪日外国人の他、観光や仕事目的で出国する日本人も含め、調整対象は年間4000万人を想定しています。これにより、毎年400億円の財源を確保し、文化財など観光拠点の整備に充てる考えです。いかがなものかと思いますが、大体途上国に行くと出国税があります。
 訪日外国人は今後4000万人になると政府は言っていますが、そういう人たちから1000円ずつ頂こうと言うのです。私は出国税は取るだけ取ってもいいとは思いますが、観光整備などの目的で取るのであればそれは間違いで、そのくらいのことは各自治体や国がやらなければいけないことだと思います。何かもっと別の目的のために利用するべきです。
 例えば、空港のAI化、近代化に使うなど、そうした目的がなければ少しみっともないと思います。これで観光施設を整備すると言って、いろいろな場所で色々な国の言葉で案内が出来るようにスマホと連動させるなど、その程度のことであれば、自治体の予算等でやってもらわないといけないことだと思います。
講師紹介
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
10月29日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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株式・資産形成実践講座 加藤
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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!次週は休日のため、5月10日に配信いたします。