グローバル・マネー・ジャーナル

2018.4.11(水)

米中関係悪化の背景 ~標的となったトランプカントリーの農民たち~(大前研一)

2018.04.11(水)
米中関係悪化の背景 ~標的となったトランプカントリーの農民たち~(大前研一)
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米中関係悪化の背景 ~標的となったトランプカントリーの農民たち~(大前研一)

【米中関係】アメリカをWTO提訴へ ~中国政府~

 アメリカ政府が中国製品1300品目に25%の関税をかけると発表したことを受けて中国政府は4日、アメリカをWTO世界貿易機関に提訴するとともに、アメリカ産の大豆、トウモロコシ、小麦など、合わせて106品目に25%の関税をかける方針を明らかにしました。
 目には目をという展開になりました。日本は日米貿易戦争の時にこうしたことは行いませんでした。言われたことに従い、柳のようになびいて、それによりかなりの部分は米国生産に切り替えてしまい、言われる通りにしてきました。一方、中国の場合には、目には目を、やられたらやり返すということで、最後まで付き合うと言っています。
 実は反目しているところが非常に面白く、今回の大豆、トウモロコシ、小麦などに関しては、トランプカントリーの農民の部分なのです。むしろ農民から、トランプは我々の敵だと言われることになるのです。大豆などは、中国はアメリカ以外となればブラジルから買うのです。アメリカの農民としては冗談ではないという事態になるわけで、極端に言えばトランプは自分たちの敵だったのかということになり、今焦っているわけです。
 中国は、トランプを支援していた州から来るものを見て、例えばウィスコンシン州、アイダホ州、アイオワ州、インディアナ州などを一つずつ狙い撃ちにしているのです。自動車と飛行機は当たり前ですが、それ以外の品目はいわゆるアメリカ両岸ではない、ミドルにある「トランプカントリー」の農民を狙ってやっているのです。
 もともとアメリカと中国の貿易不均衡は30兆円ほどの差がありますが、アメリカが輸入しているものは中国が売り込んでいるものではないのです。日本が日米貿易戦争をやっていた頃は、言っては悪いですが、日本が強かったのです。当時は家電メーカーもとても強く、ソニーや、パナソニック、シャープなど、日本が向こうに拠点を作り、売り込んでいたわけです。さらに自動車も、トヨタ、ホンダ、日産が売り込みをしていたのです。
 このように日本企業が売り込んでいたわけですが、中国企業でアメリカに売り込む力を持っているところはないのです。アメリカに売り込むブランドもありません。本当はファーウェイという会社が、いわゆる携帯の基地局やルーターなどをアメリカに売り込もうとしていて、その力もあるのですが、創業者のレン氏が人民解放軍のメンバーだったことなど安全保障上の理由で、アメリカはここの製品を入れていないのです。
 そのチップを使っているということで、シャオミという携帯会社もアメリカに進出できないのです。アメリカに売り込む力を持っている数少ない会社があるにも関わらず、それらが実は、力を発揮できない状況なのです。
 アメリカ人が一番買っている30兆円のうちの5兆円は、実際はiPhoneなので、本来中国が売り込んでいるわけではなく、アップルが中国で作らせて輸入しているだけなのです。そうして辿っていくとヒューレットパッカードなども出てきて、アメリカの企業が勝手に向こうで作らせて輸入しているものばかりなのです。それに加え、ウォルマートのような小売の会社がバイヤーを香港に置いて、中国製品をどんどん買いまくっているのです。
 このように、日米貿易戦争との抜本的な違いは、中国の会社が売り込むほどの力がないということです。そして、アメリカ側が作らせて買っていたものが25%高くなるというだけなのです。一方、中国がアメリカから買っていた数少ないものに、トランプ大統領が一番大切な農民たちの生産物があり、中国はそこを叩こうとしているということなのです。もともとはトランプ大統領の勘違いからこうしたことをやっているということに気付かせるには非常に良い対抗策だと思います。
 トランプ大統領は、その結果、全部終わってみたらアメリカはより強い良い国になっているなどと言っていますが、そんな証拠はありません。トランプ大統領にはもう少し勉強してもらう必要があります。

【エジプト大統領選】シシ大統領が再選 ~選挙管理委員会~

 先月投票が行われたエジプトの大統領選で、選挙管理委員会は2日、現職のシシ大統領が有効投票の97%以上を獲得し、再選されたと発表しました。しかし今回の選挙では、立候補者が当局に拘束されたり、唯一の対立候補がシシ政権を支持する人物だったことから、国内外から公正な選挙では無いとの批判も上がっています。
 お笑いの一種と言えるような状況です。しかし、私はこれを支持するものではありませんが、アラブの春の後というのは全てが不安定になったので、これによってエジプトが安定するとすれば、仕方のないことかと思います。
 近年の政情を見ると、ムバラク政権の後、ムルシーが大統領になり、この人は民主的に選ばれたにもかかわらず投獄されてしまいました。そして次のマンスールの後シシになり、一旦落ち着いたわけです。基本的に民主的な選挙をすると言いながら、対立候補が出て来れないという状況を作っているわけで、いわゆる独裁と言えます。
 投票率も50%を切っており、こうしたことに意味があるのかと思いますが、シシから見ると、自分は軍事クーデターで大統領になったのではなく、国民が選んでくれてなったのだという正当化のために、この選挙が使われたのだと思います。しかしそもそも、ムルシーが投獄される理由はなく、アメリカがこの投獄に賛成しており、むしろシシを担ぎ出してきたのはアメリカなのです。エジプトで民主的に本当の選挙をすれば、イスラム原理主義の方向に行ってしまうということから、それを許さずに民主化だ、アラブの春だ、と騒いでいたアメリカこそ、批判されるべきではないかと思います。
 ただ、今回のような卑怯なやり方を認めてはいけませんが、シシで安定しているのであれば、これ以上の混乱は避けたいとも思います。アラブの春、転じてアラブの混乱になるよりは良いでしょう。
 エジプトの場合は、エネルギーがあまり出ないこともあり、観光業で稼いでいます。しかしこうした不安定な状況に加え、ロシアの飛行機が落とされたこともあり、観光客数が激減しています。これを何とかしてさらに安定した良い国に変えていかないといけないというわけです。ただ、ISの方はかなり駆逐されてきたので、観光客も戻る可能性はありますが、いずれにしても観光客が大量に狙われているという状況では難しいと思います。1200万人位の観光客が来ていないと、エジプトはやはり潤わないのです。
 そうは言っても、悪い水準ながらも、失業率はそれほど高くなっておらず、経常収支も赤字ではありますが最悪の状態にはなっていません。シシはある意味役割を果たしていると言えます。ただ今回の選挙のやり方については、そこまでやらなくても選ばれていただろうということで、あまり極端な事はやるべきではなかったと思います。しかし、シシにしてみれば、師匠のプーチンも同じようにやっているのを見習ったということなのでしょう。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
4月8日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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▼その他の記事を読む:
【次回の記事】米TPP復帰に向けた不透明な動き(大前研一)
【前回の記事】更なる市場開放を求めるトランプ政権の動向(大前研一)

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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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