|
2018.03.28(水) |
米通商政策にみる貿易不均衡のからくりとは(大前研一) |
|
資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびに一流講師陣から学ぶ! |
|
米通商政策にみる貿易不均衡のからくりとは(大前研一) |
|
【ロシア大統領選】プーチン大統領が通算四選 |
ロシア大統領選の投開票が18日行われ、プーチン大統領が通算で4選を果たしました。得票率は過去最高の76.66%で、プーチン氏は勝利宣言で「非常に難しい条件下であげた実績が認められた」と語りました。 |
難しい条件下というのは、ロシアに対する経済制裁などがあったことでしょう。得票率は76.66%と報告されていますが、これには海外にいるロシアの人の投票は入っていないのです。その票は40万票以上あったそうで、そのうち90%がプーチン氏の票ということで、合計すると80%を若干超えると言われています。 |
プーチン氏としては、非常に高い支持率を基に信認を得たいと思っていたようなので、その点はクリアしたわけです。ただし、いわゆる投票率、選挙に何人来るかというところは67%で、70%を超えないとだめだと言っていたのですが、そちらはクリアできませんでした。つまり、選挙をボイコットした人が結構多かったと思われます。 |
いずれにしてもプーチン氏は、2024年までこのまま務めるというわけです。任期は6年で、6年二期となるわけですが、今後は次は誰かということになってきます。やはり、6年間の後半は後継争いがかなり顕在化してくると思われます。プーチン氏はそれをうまく押さえつけられるのか、抑えつけすぎて誰も出てこなかったということになれば、習近平氏化して、ほぼ永久にということになります。ただ、その時点でもまだ70代前半なので、やろうと思えばもう一期くらいはできると思います。 |
ロシアの経済情勢ですが、GDPの成長率はかろうじて持ち直してきています。また、ルーブル安に進んでいましたが、一応ルーブル高の方向に戻すこともできています。これは原油の値段が大きく関係しています。また、外貨準備高を見ると、一時は枯渇するのではないかと言われていましたが、徐々に増えてきています。 |
|
しかし、輸出品目は依然エネルギー依存の状況です。兵器は今後非常に有望で、金属や兵器的なものについては、まだまだ可能性があると思います。 |
|
ロシアはみんなにいじめられて逆に強くなっており、国内で輸入できなくなった農産品や果物などを作れるようになっています。また、中間的な国であまりロシアに対して禁輸措置をしていないところなどから果物などを輸入するようになってきていて、ある意味、販路を新しく開拓し、購買元を広げており、その点では良かったと思います。危機のピークは越えたと思います。 |
【米通商政策】鉄鋼25%、アルミニウム10%の追加関税発動 |
トランプ政権は23日、鉄鋼とアルミニウムの関税を引き上げる輸入制限を発動しました。鉄鋼には25%、アルミニウムには10%の追加関税を課すものですが、NAFTAの再交渉を控えるカナダとメキシコは除外するほか、EUや韓国等も除外されています。その他の適用除外国も4月末までには確定するということです。 |
この問題は、トランプ大統領のキャラクターという以外に、彼の知識が非常にお粗末だということを示しています。つまり、6兆円規模の関税を課すという中国からの輸入についてよく見てみると、ほとんどがアメリカの会社のものなのです。そのアメリカの会社の代表は、iPhoneを作っているアップルであり、アップルの製品はほとんど、フォックスコンという会社が成都で100万人の雇用を生み出して作っているのです。 |
それを、アメリカでiPhoneが売れるということになると、アメリカは輸入します。その数字が、統計上では中国からの輸入と出てきます。しかしそれはアメリカの会社の製品なのです。二番目はヒューレットパッカードのような企業ですが、そちらも中国で作って国内へ持ってくるわけです。このようにして一つずつ見てみると、中国との貿易不均衡の大半は、アメリカの会社が中国企業に委託して作っているもので、典型的なのがiPhoneのようなものやHPの製品等、ほとんど中国で作ってしまっているものなのです。 |
|
それをアメリカに持ってきて売っており、しかもアメリカの利益になるわけです。こうしたもの以外に、もう一つはウォルマートなどの小売の会社で、中国から物を購買してきてアメリカ人に安く売るという企業です。そうなってくると、本来ならよく考える必要があります。しかしトランプ大統領はそういった峻別をしているのでしょうか。 |
中国の会社が売り込んでいるのであれば話は別ですが、アメリカの会社がやっていることなのです。そこのところを理解していないのです。日本との貿易摩擦の時もアメリカは理解していなかったのですが、当時はもう少し複雑で、日本はトヨタ、ホンダ、ソニーなど、日本の会社でアメリカに売り込む力があったのです。 |
しかし今、中国の会社でアメリカへ自力で売り込むだけのマーケティングの力などを持って、自分のブランドを自ら盛り込むような企業はまだ無いのです。ほとんどが頼まれて生産していて、誰かのブランドでやるOEM、もしくはまるっきりアップルのためにものを作っているホンハイのような会社なのです。 |
本当は自分で売る力を持っているファーウェイのような会社は、アメリカでは売らせてくれません。またシャオミも売らせてくれないということになったので、やはり中国からの輸入は、基本的にはアメリカが自分で買っているものが大半なのです。それによって何が起こるかと言うと、25%など税率を上げると、iPhoneが今1,000ドルだったものが1,200ドルになる、そういう単純な話なのです。 |
一方、IKEAものはよくアメリカでも売れていますが、あれはスウェーデンの会社で、アメリカのIKEAの商品が高くなります。 |
アメリカが長い間インフレを抑えることができた理由は中国のおかげであり、アメリカで物を作っていれば、インフレの権化のようになっていたはずなのです。そこのところに関しては、要するに貿易不均衡の中身というものを、トランプ陣営は全く理解していないと言えるのです。 |
私は日米貿易戦争の頃には、ほぼ毎日のようにテレビに出て解説をし、アメリカとのディベートなどもやってきました。しかし今のアメリカのトランプ大統領を取り巻くUSTRや、ライトハウザー代表は、お粗末そのものです。このようなことをやっていけば、天に向かって唾を吐くというような状況になるでしょう。英語で言うと、自分の足をめがけてピストルを打つということになるのです。 |
また、日本は鉄鋼、アルミの除外国には入っていません。韓国やEUが入って、日本が入っていないのです。この理由についてトランプ氏は、安倍総理は私の良い友達だが、彼がケラケラ笑っている理由はアメリカをこんなに利用しまくっているからであり、そんな日はもう終わりだ、と言っています。 |
また習近平氏に対しても、良い友達ではあるが、あいつがアメリカを縦横斜めに利用するだけだ、などと言っています。安倍総理に対しては、非常に下品な言い方で、あいつがほくそ笑んでいる理由は我々から儲けまくっているからだという言い方をしています。トランプ氏は、憲法も司法もこの人には通用しないというようなキャラクターの人物なので、こうしたことはあまり気にすることもないかと思います。 |
【講師紹介】 |
|
▼その他の記事を読む: 【次回の記事】更なる市場開放を求めるトランプ政権の動向(大前研一) 【前回の記事】最近の商品価格の動向を解説する(近藤雅世) |
|
|