グローバル・マネー・ジャーナル

2018.12.19(水)

米IT「ビッグ5」時価総額(大前研一)

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米IT「ビッグ5」時価総額(大前研一)

IT「ビッグ5」の時価総額の動きに注目

 12月3日の株式市場で、アマゾンドットコムの株価が一時、前の週末に比べて5.2%高まで上昇し、時価総額でアップルを抜き首位となりました。年末商戦が好調と伝わり、投資家の見直し買いが入ったもので、マイクロソフトも加えた三つ巴の競争が激しくなっています。
 その数日前には、マイクロソフトが1位になったというニュースが走りました。アメリカのITビッグ5の時価総額のグラフで見てみると状況がよくわかります。去年に比べマイクロソフトの時価総額が大きく伸びているのです。
 一方、アップルは最新のiPhoneの売れ行きがそれほど良くないということで、時価総額が落ちてきています。アマゾンがアマゾンエフェクトと言われる現象で時価総額を伸ばし、ここにきて三社ともに、7900億ドルから8000億ドルとレベルでほとんど肩を並べています。これから先は、1位は日替わりメニューということになってきます。
 その一方で、フェイスブックはかなり遅れていて、その半分程度の時価総額になっています。グーグルのアルファベットも、調子が良いと思われていましたが、ここにきて1位とのの差が見えてきています。去年と今年の差を見ても大きな伸びが見られません。大きく飛躍したマイクロソフトやアマゾンに比べると伸びが小さいわけです。今週の株式を見ていると、FAANGの中でも少し景色が変わってきたという感じがします。

COP24と環境問題についてのトランプの反応

 地球温暖化対策について話し合う国連会議COP24が2日、ポーランドで開幕しました。2020年以降の地球温暖化対策を定めるパリ協定について詳しい実施ルールを決定するのが主な目的した。温室効果ガス排出削減目標の立て方などをめぐり、先進国と新興国が対立しており、合意できるかが焦点でした。
 途上国の方はお金を欲しがり、先進国の方は途上国に排出を減らすように求め、お金の点だけが揉めているのです。COP24の精神には全員が賛成ですが、経済負担は誰がするかというところがテーマになっています。当然予想されたことですが、今その点で難渋しているわけです。
 主要国・地域の二酸化炭素排出量の推移を見ると、もともと高いアメリカは、このグラフには2016年以降が含まれていませんが、実はトランプ政権になってからさらに高くなっているのです。多くを排出している中国とアメリカが対応すれば良いことなのです。今後はインドの排出量が増えているので、そうしたところへ資金を負担してあげることが課題になってきます。
 トランプ大統領はなぜCOP24を止めたのかという事についてですが、彼は耳がない、つまり聞く力がないということがタイム誌に書かれています。地球環境問題についてのアメリカ政府の報告では、異常気象という点でかなり深刻な被害をもたらすことが示されているのですが、それに対しトランプ大統領は、「少し読んだがそれはそれで良いのだ。だが私は信じない」などと言っているのです。ウッドワード記者が「Fear」いう本を書き、恐怖の男と表現しましたが、その中でトランプ大統領は全く理解力がなく、レポートをいくら持っていっても読まない、誰とでも、対立すれば自分が勝つと思っている人で、かなり異常な男だと書かれています。小学校5、6年レベルの頭しかないと言われていますが、今回の発言はまさにそれを示しています。あれだけ深刻に環境問題について書いているアメリカ政府自身のレポートについて、「アメリカ政府自身のレポートを読んだが、信じるかどうかというと私は信じない」などと発言するのです。ちょっとだけ読んだというのが、また彼のすごいところです。絶対、表紙を見ただけなのでしょう。

フランスのEU財政基準対策

 フランス各地で12月8日、マクロン政権に抗議する大規模デモが4週連続で行われました。参加者が黄色いベストを着て抗議するこの運動は、11月からネット上で広がってきたもので、この日はパリだけで約1万人、全国で12万5000人が参加。事態の沈静化に向け、ドルジ環境大臣は5日、燃料増税を19年中は行わない方針を示しましたが、デモの参加者からは対策が不十分との声が上がっています。
 これはマクロン倒しということで、マクロン大統領の辞任を求めています。しかも100ほどの町でローカルに盛り上がってきていて、今はついにパリの中心街まで来ています。これはかなり組織的な運動で、まだ統率されたり政党があったり、主義主張があったりはしませんが、貧乏人をここまで馬鹿にすることはやめてくれという動きです。フランスのテレビ、フランス2では、かなり細かい報告をしています。
 実は、いわゆるワーキングプア(中位所得の60%以下の所得の労働者)が問題なのです。平均の60%かそれ以下の収入の人たちがかなりいて、その人たちが車で通わなくてはいけない時に、燃料税が引き上げられると、自分が5万円ほどしか使えるお金がないのに、燃料代が1万円を超えてしまうということになり、これでは食うに食われず、耐えられないというわけなのです。マクロン政権はちょうどボトムをヒットし、1番良くないところに手を入れてしまったのです。
 その一方でマクロン大統領は、法人減税をすると言っているので、金持ち減税だと言われています。また公務員を12万人クビにするということも言っています。こうした中で、全く関係ないのですが、フランス政府はルノーの株式の15%を持っています。日産がそれを買い取ってあげれば良いのです。ルノーの株価は時価総額で3兆円から3兆5000億円ほどなので、その15%は4500億円です。
 一方、この燃料税でどのぐらいになるのか計算したところ、3000億円なのです。そうすると、少なくともほぼ1年分増税分をフランス政府がルノー株を日産に売ることによって賄えるのです。そして日産はすでに15%を持っているので、フランス政府から買い取ることで30%になるわけです。
 こうした数字を計算してみると、意外に面白い発想ができるものです。マクロン大統領もここまで追い込まれたら、日産から稼ごうとせずに、日産に、自分の株を売るから5000億円助けて欲しいとすれば良いのです。私が交渉官だったらこういう話をしてはどうかと思います。
 フランスは失業率がまだ10%と高いものの、財政収支の推移を見ると、対GDP比で-2.8%までまとめてきています。EUの財政基準ではGDPに対して単一年度の赤字は3%しか許してくれませんが、フランスでは現在違反している状況です。マクロン大統領の作った今回のバジェットでは2.8%に収まるので、マクロン大統領としてはどうしてもそれをやりたいということなのです。
 そして主要国における人口1000人あたりの公的部門の職員数の比較を見てみます。主要国の中ではフランスが1番多く、90人に上ります。そのうち41.6%は地方政府、19.2%が政府系企業で、ルノーなどもここに入ります。24.6%が中央政府で、このような数の中央政府は他にありません。イギリスの場合には政府系企業が多くあり、アメリカとドイツは地方政府が大きい状況です。そして実は日本は、1番公的職員が少なく30数人なのです。日本は政府が無駄遣いをしているという声が暴動にまでならないわけはここにあります。それに対しフランスはここを引き締めないとどうしようもないのです。マクロン大統領が公務員を12万人減らすと言ったのは正しいわけですが、それよりも先に燃料税などに手を出してしまったので、ここが大変な問題になっているのです。いわゆるワーキングプアというのは世界的に大きな問題であり、日本でも問題が広がっています。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
12月9日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
▼講座受講をご検討頂いている皆さまへ
▼その他の記事を読む:
【前回の記事】最近の商品価格について(近藤雅世)

株式・資産形成実践講座事務局
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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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