グローバル・マネー・ジャーナル

2018.8.29(水)

老朽マンション問題の解決法(大前研一)

2018.08.29(水)
老朽マンション問題の解決法(大前研一)
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老朽マンション問題の解決法(大前研一)

【トルコ】米電化製品の不買呼びかけ

 トルコのエルドアン大統領が11日、アメリカによるトルコへの制裁について、「これは恥ずべきことだ。同盟国を牧師1人と引き換えにしている」と述べ、アメリカを非難しました。また14日には、アメリカ製電化製品の不買運動を実施すると表明。iPhoneを例に挙げ、サムスンやトルコ企業の製品への乗り換えを促しました。
 この制裁については、ドイツとカタールがトルコを支援しています。カタールは、トルコ経済を援助しようと数兆円を提供することになっています。カタールはサウジにいじめられているので、サウジと対立しているトルコをお金の面で援助するとしています。ドイツのほうもトルコとの歴史的な背景があり、非常に重要な関係にあるということで支援をしています。
 トルコの経済情勢を見ると、トルコリラは1年間で40%も下落することになりました。その点でトランプ大統領はやり過ぎではないかと言われています。対外債務も大きく、GDPも成長していません。輸入品の物価が非常に上がり、インフレも進んでいます。
 エルドアン大統領にとっては、牧師1人と言っていますが、トランプ大統領にとっては違うのです。この牧師は福音派の牧師であり、福音派はアメリカで最も多いので、11月の選挙に向け、この牧師を取り返したということが重要になってくるのです。しかし、エルドアン大統領はこの牧師は、例のクーデターの時に暗躍したと言っているので、そう簡単に返すわけにはいきません。どちらも動けないという状況なのです。
 エルドアン大統領は、NATOという軍事同盟の中の、非常に重要なメンバーを、牧師1人で制裁しているのかとアメリカを強く非難しています。この状況に国民はかなり混乱していますが、逆にエルドアン大統領の人気も出てしまっています。トランプ大統領がトルコを追い込んで、エルドアン大統領がそれに強く対抗している状況だからです。愛国心とは恐ろしいものです。

老朽マンション買取で新設マンションの容積率上乗せ

 日経新聞が報じたところによりますと、東京都が、老朽マンションの連続した建て替えを促す制度を、2019年度にも創設する見通しです。不動産会社が老朽マンションを買い取ると、別の場所に建設するマンションの容積率を上乗せするもので、分譲個数を増やし、収益を上げられるようにすることで、不動産会社の参入を促し、企業主導で旧耐震基準のマンションの建て替えを進める考えです。
 これは東京都の考えがふざけています。インセンティブとして容積率を上乗せしてあげましょうと言うわけですが、容積率はそもそも何によって決められるかというと、鉛筆をなめて決めるものなのです。私は、これは完全な間違いで、容積率は自由にして、安全性だけを基準にするべきだと従来から言っています。容積率は、鉛筆をなめて、ここは100%、ここは200%、1番高い所は1400%などと決められています。
 マンションを建て替えた時に、古いマンションを買ってくれたら、新しいところに建てる際に、そこに200%を上乗せしましょうという制度を作るというわけですが、それを一体誰が決めているのでしょうか。そういった恣意的なことで建築基準法を作っていくなどというのは、世界にも例がありません。私に言わせると、古いマンションを買ったかどうかではなく、容積率はこれだときっちりと決めるべきなのです。
 新しいものに建て替えなくてはいけないという事態はかなり進んでいます。築30年以上の分譲マンションの数を見ると、2037年には500万戸に達してしまうのです。築50年も大きく増えてきます。2027年にも30年以上のマンションは300万戸に上ります。
 一方で、実はマンション建て替えの実施状況を見ると、まだ年に200戸、300戸という数字なのです。何十万戸と建て替えなくてはならないのに、これほどわずかしか建て替えられていない状況なのです。
 この状況に対する一つの考え方は、外部経済を使うことです。建て替えに住民の3分の2賛成がないとできないということや、そのためのお金を取っていないのでできないということが起きているわけですが、その場合には新しい容積率を、都が勝手に200%プラスするなどとというものではなく、物理的に決め、外部経済を使えるようにすることで、建て替えが可能になります。よく区役所などで、無料で建て替えて区役所を作ったという事例があります。そのかわり、一部に会社が入り、下層階は他の企業にしましたというような事例です。
 こうしたやり方を使うことによって、物理的な限界がここまでだとなり、建て替えをするときに、その足りない部分を外部経済によって補えるようになると、ずいぶん助かるのです。
 また、隣のマンションと一緒にしていくともっと広くなるというケースもあるでしょう。さらに、私が昔から提案しているように、東京都などの場合には、区画全体でやるという形にして、非常時の電源装置や非常食を蓄える場所、学校等をそこに入れることにより、街ブロック全体でやることにすると、この問題についての解決が見えてくるわけです。
 一言で言うと、鍵は外部経済なのです。それによって都心に近い所にはもっと人が住むことになります。
 しかし、天井方向、空方向に建物が伸びていくことによって、新しい経済がここにやって来るわけなのです。そのようなことをしないと経済的に難しいものなのです。
 多くのマンションが建て替えられない理由は、お金の準備がないことと、建て替えている間に住む場所がないということなので、これは東京都が容積率で釣るのではなく、建て替えのときの不足したものを準備してあげるべきなのです。
 新しいブロックで建て替えていくのであれば、その間に住む場所を用意して、それが終わったときには次の区画をやり、次々と区画ごとにやっていかなくてはいけない問題なのです。
 この件はマンションについてですが、実は住宅についてもこのような問題があります。耐震構造のない家もたくさんまだ残っています。そうしたことも考えていかなくてはならないので、おそらく地方自治体を含め、政治家が最も忙しくやらなくてはならない仕事の一つだと思います。
 日本はこのまま放置していくと、おそらく原宿にあった同潤会アパートのような状況で、もう住めないようなところにもかかわらず、10年20年と闘争が起き、建て替えに反対と言う人が2、3人いるだけで前に進めなくなるという話になってしまうのです。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
8月19日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
▼講座受講をご検討頂いている皆さまへ
▼その他の記事を読む:
【次回の記事】トルコ問題と米選挙の関連性(藤本誠之)
【前回の記事】
BREXITの現状~分断深まる~(唐鎌大輔)

株式・資産形成実践講座事務局
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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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[発行人 : ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ
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