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2018.06.27(水) |
英EU離脱問題 アイルランド国境問題の種火(大前研一) |
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資産形成に役立つ情報を、大前研一ならびに一流講師陣から学ぶ! |
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英EU離脱問題 アイルランド国境問題の種火(大前研一) |
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メキシコ 政策金利引き上げ7.75%に
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7月1日に投票が行われるメキシコ大統領選で、新興左派政党・国家再生運動のロペスオブラドール氏の支持率が52%と、2位を大きく引き離していることがわかりました
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これはまさに反トランプ陣営と言えます。もともとメキシコシティーの市長をやっていた人で、知名度の高い人ですが、アメリカとも対峙して行き、言うべきことを言うとしています。しかも左派政党で、開放政策には基本的に反対という考えです。久しぶりにこういう人が出てきたことで、経済界ではこの人では困るという気持ちはあるものの、今のトランプ氏のやりたい放題に対しては、国民はロペスオブラドール氏の方を支持するということでしょう。もしかしたら、最初の投票で50%以上を獲得して決まるという可能性もあります。
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メキシコの場合、石油を掘り尽くし、生産量も減って来ています。そうした中、対内投資を見ると自動車が非常に多くなっています。
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またメキシコは今、金利をどんどんと引き上げています。アメリカではパウエル氏がどんどん金利を上げているので、お金はアルゼンチンやメキシコなどからアメリカに流れるということで、メキシコの金利は7.75%に上昇しています。この金利は確かに魅力があります。ペソが下がってしまうので、7.75%より大きく下がれば意味はありませんが、ちょうどこのぐらいだと魅力があるということで、投資する人も出てくるのではないかと思われるレベルです。
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過去に、日産自動車がメキシコに工場を作った後、ペソは100分の1になってしまい、「泣きペソ」と言われたことは、私にとっても思い出深い出来事でした。現在の7.75%というのは、メキシコがひっくり返らない限りは、魅力のある金利レベルである事は間違いないと言えます。 |
今後、新しい大統領になってアメリカと戦ったときに、うまく答えた場合には、これはこれでうまく行くと思います。今、メキシコペソが下落していると言いますが、対米ドルでの推移を見ると、1ドル20ペソ程度を保っていて、下落が顕著なトルコリラなどと比べると、大きな下落とは言えません。 |
また、貿易相手国はアメリカが圧倒的で、輸入相手は中国も少しありますが、基本的にはアメリカと一体化した経済だと言えます。7.75%で面白いと思う人が、少しメキシコに投資をするようになってくると、そこで流れも変わると思います。新しい大統領がどう出るかにもよりますが、しばらくは目が離せません。来月には大統領選が行われます。 |
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英EU離脱問題 アイルランド国境問題の種火 |
日経新聞は20日、「イギリスEU離脱、先行き再び不透明に」と題する記事を掲載しました。
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イギリスとEUが19日に公表した共同文書について、EUのバルニエ首席交渉官は、アイルランド問題をめぐる深刻な相違が残っていると述べたことを紹介。当初は6月の首脳会議でアイルランドの国境問題を打開する想定でしたが、イギリス側がメイ政権の求心力低下によって、具体策を示せていない状況で、交渉が白紙に戻り、2019年3月に無秩序な離脱に陥るリスクも意識され始めているということです。 |
この点について合意しないままで離脱してしまう可能性が出てきていると言うことです。アイルランドとの問題というのは、両側に言い分があるのです。イギリスとアイルランドの間には、コモントラベルエリアというものがあり、国境を自由に横断可能となっているわけですが、これは実はEUができる前、イギリスとアイルランドの間で取り交わしていた協定なのです。そこへEUができたので余計に問題がなくなったという経緯があります。 |
しかし今度は、もしイギリスが離脱するのであれば、アイルランドとの間に国境を設けないとダメだということを、EUが言い始めたのです。イギリスにとっては、自由に行き来可能な協定がもともとあったわけなので、それを不問にしてくださいと言うのですが、EUはそういうわけにはいかないと言っているのです。 |
今のアイルランドの人で、北アイルランドで働いている人が非常に多い上に、配送のトラック等は両方の国境をまたいで一日に何度も往復しているので、この辺は非常に複雑な問題なのです。この問題は最後まで尾をひくと思われます。離脱してしまえば、どうしても国境線をここに敷くようにEUは求めるはずです。そうしないと、そこが穴になってしまうからです。 |
そこまでやるのであれば、北アイルランドは、自分たちは投票してEUに残りたい、さらには、アイルランドと一緒になりたいと言い始めるでしょう。そうすると、いわゆるグレートブリテン、United Kingdomが崩壊するということになり、さらにはスコットランドも自分もと言い始め、当然ウェールズも同じことを言い出すでしょう。それにより、私が前々から言っているように、United Kingdomではなく、England Aloneとなってしまうという流れが見えてくるのです。 |
ギリシャ金融支援終了 EU財務相会合 |
EU財務相会合が21日開かれ、8年間にわたるギリシャへの金融支援を、8月に終了する枠組みで合意しました。過去の融資の償還期間を10年延長するなど、返済の負担を軽減し、新たな金融支援なしでもギリシャが財政再建を続けられるようにする内容です。 |
今回ツィプラス首相が初めてネクタイをしたということが話題になっていますが、彼にとっては非常に嬉しい結果になったわけです。反EUで、負債など払わない、踏み倒せと言って首相になっておきながら、メルケル氏や当時のドイツ財務大臣だったショイブレ氏に叩かれ、意外に難しいということがわかり、それから我慢を重ねてきて、ついに今回、最終的な解決の日がやってきたというわけです。10年間の延長、さらに一部の債務を債権放棄にしてくれたということでの合意です。そうした中、彼は赤いネクタイを付け、初めて背広を着てきたというわけです。 |
実はギリシャの債務残高は、対GDP比で160%と、日本よりは低いものの、ユーロに比べれば非常に高くなっています。依然問題は抱えていますが、ギリシャが一応は危機を脱したということは非常に重要なことです。ただ、次はイタリアかという状況にあり、一難去ってまた一難という展開になっています。
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【講師紹介】 |
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▼その他の記事を読む:
【次回の記事】日本の個人金融資産とトルコ大統領選(大前研一)
【前回の記事】イタリア情勢/米家計純資産/企業決算(大前研一) |
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