グローバル・マネー・ジャーナル

2018.5.9(水)

韓国・北朝鮮「板門店宣言」の裏側を読む(大前研一)

2018.05.09(水)
韓国・北朝鮮「板門店宣言」の裏側を読む(大前研一)
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韓国・北朝鮮「板門店宣言」の裏側を読む(大前研一)

【米韓関係】駐韓国大使に米太平洋軍司令官・ハリス氏を検討

 アメリカトランプ政権が、現在空席となっている駐韓国大使に、ハリー・ハリス太平洋軍司令官の起用を検討していることがわかりました。ハリス氏は2月、オーストラリア大使に指名されていましたが、次の国務長官に指名されているポンペイオ氏が、韓国大使の早期任命を重視し、ハリス氏の起用を提案したということです。
 韓国大使が一年以上空席というすごいことになっています。これにより、国務長官はポンペイオ氏、外交関係の首席補佐官がボルトン氏、そしてハリス氏という軍人の出世頭の一人で、しかも太平洋艦隊のトップをやっていた人が韓国大使になるということで、どちらかと言うと北朝鮮を叩くということに関して、いつでも対応でき、知識もある人たちが揃いました。さらにマティス氏とも合わさると、北朝鮮側はやはり足がすくむということになります。アメリカの言うところの鼻血作戦です。
 これは他の状況から見ても明らかです。日本にはすでにオスプレイが来ており、いざ事が起こったときには、救出等の作戦にこのオスプレイを使うために集結させてきているわけです。米朝会談の前に北朝鮮を相当追い込んでいっているという感じです。この状況を見ると、北朝鮮が何らかの予想以上の妥協をする可能性は非常に高いと思います。この布陣は、2ヶ月前のアメリカの布陣と比べ、より好戦的で戦争経験のある連中がずらりと揃った形なのです。これは北朝鮮にとっては大変な圧力になると思います。
 また、あまりにも調子よく和平協定だなんだとやっている韓国のムンジェイン大統領に対しては、アメリカ側もだんだんと、もしかしたら北寄りに行ってしまうのではないかという懸念を持ち、半島全体の非核化ではなく北の非核化が先なのだ、そのところを勘違するなと、ゴツンとやる可能性もあります。
 いずれにしてもハリス氏は横須賀で育った日系アメリカ人で、しかも偵察パイロットをやっていた人です。そして太平洋艦隊の司令官をやっていた人です。その人が韓国大使になったわけです。一方、オーストラリア側は彼を歓迎していたので、今回の変更に驚いています。特に中国がオーストラリアに翼を広げて来ているので、このハリス氏に来てもらえると非常にありがたいという状況だったわけですが、やはり今回の場合にはもう仕方がないのだろうと思います。オーストラリアではこの件に関して、現地のテレビでいろいろな人のインタビューをやっていましたが、馬鹿にされているというようなことを言っている人もいました。諸般の事情から仕方がないのでしょうが、では代わりに誰が来てくれるのかとかなり頭にきている様子でした。

【北朝鮮問題】板門店宣言の本質とは?

 韓国文在寅大統領と北朝鮮金正恩委員長は27日、南北の首脳としては11年ぶりに対面し、正恩氏は、北朝鮮の最高指導者として初めての板門店の軍事境界線を越えて韓国に入りました。その後両首脳は、平和の家で1時間40分首脳会談を行ったほか、記念植樹や野外散策などでさらに対話を重ね、夜には朝鮮半島の平和と繁栄向けた「板門店宣言」に署名しました。
 私もこの宣言を全部読んでみましたが、かなり問題の多い宣言だと思います。少なくとも北と南がどうなるか、終戦協定から平和協定にしていくということについては、一応南北間でやっていき、その後ろ盾として、かつて戦いの後ろ盾になっていた中国とアメリカ、その二者にも入ってもらいましょうと言っています。終戦協定から平和協定へということを今年中にやりたいとしてます。ただ、何をもってその平和協定の中身にするのかということです。宣言を見る限りは、朝鮮半島の非核化ということは言っていますが、その非核化のやり方や、あるいはそのスピード、そして前から心配されアメリカも受け入れられないと言っている、朝鮮半島の非核化なのか北朝鮮の非核化なのかという問題です。
 アメリカとしてはボルトン氏やポンペイオ氏が、まずは北朝鮮が完全に非核化するのだと言っていますが、今回文在寅大統領もサインしたこの宣言は、朝鮮半島の非核化です。そうなってくると何が起こるかと言うと、米軍の韓国からの撤退が含まれてくる可能性があります。おそらく終戦協定で米軍はいるわけですが、その後平和条約になれば米軍は要らないということになってきます。米軍がそこから撤退する、あるいは米軍がいたとしても今現地にいる米軍は核を持っているわけなので、非核化の中ではこの核を取り除いてくださいということになるわけです。
 そうなると、日本にとっては大変なことです。何故かと言うと中国、北朝鮮、ロシアのいわゆる防衛の最前線は日本ということになるからです。今日本の中では佐世保と沖縄といったところが中心ですが、ここが最前線になってくるのです。韓国はもう北の脅威がなくなり、中国とも仲良くやっていきましょうということになってくると、日本にとってはかなり負担が重くなってくるという話が、今回の宣言から読み取れるのです。
 トランプ大統領はこの米朝会談というものに、どういう態度で臨むのかと言うと、オバマ氏や今までの大統領にはできなかったことを自分がやると言って焦っているわけです。ということはつまり、今回の宣言をそれで良いと言ってしまう可能性があるのです。もともと米軍は、北朝鮮の短距離ミサイルが1000発以上あり、それが韓国に来たときに被害が多すぎると見ていました。韓国からは引き上げたいという意思がもともとアメリカにはあったのです。そうなってくると日本の負担が非常に重くなってきます。
 トランプ大統領は韓国からも撤収して、韓半島全体の非核化に合意してしまう恐れがあります。そして自分は終戦宣言を平和宣言に書き換えた功労者であると言うのです。北朝鮮の方はアメリカに届くICBMを止めると言っています。しかし、ICBM以外のものはどうなのかとなると、中距離ミサイルや短距離ミサイルはまだあるわけです。そういうものは基本的に日本が射程距離に入っているのです。もちろん韓国もそうですが、平和協定を結んだ後は韓国を狙わないと思われるのです。そうなると、日本だけがターゲットに残ってしまうのです。ICBMはなくなり、アメリカはターゲットではなくなりました。
 しかし北朝鮮は依然として、核弾頭ではありませんがそれ以外のものは持っている上、今回非核化ということでは書かれていませんが、膨大な大量破壊兵器、化学兵器なども持っているのです。マレーシアの空港ですっと殺してしまうような化学兵器も持っているのです。私はこれを見ていくと、なんだか日本が裸になるようなことを、文在寅と金正恩は平気で合意しているのではないか、これが大きな問題としてあると思います。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座 学長
大前 研一
4月29日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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【次回の記事】選挙前後の相場の揺れに備える(藤本誠之)
【前回の記事】米中貿易摩擦の背景を解説する(大前研一)

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それでは、次回のグローバル・マネー・ジャーナルもどうぞお楽しみに!
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