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2015.1.7(水)

40ドルへ!? 続く原油安の影響とは?(大前研一)

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40ドルへ!? 続く原油安の影響とは?(大前研一)2015/01/07(水)


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今回のテーマ

40ドルへ!? 続く原油安の影響とは?(大前研一)

【日本】NISA3兆円始動~日経新聞~ 一般家計でも浸透2014年末で推計800万口座

 日経新聞は先月30日、「NISA1年、3兆円始動」と題する記事の中で、NISA(少額投資非課税制度)が始まって1年が経過し、一般の家庭でも利点がある資産づくりの手段として浸透しつつあると紹介しました。推計では口座開設は去年末で800万口座に達したとみられ、金額にして3兆円規模の資金が株式市場に流れ込んだとしています。

 新聞で大騒ぎして取り上げている割には、その規模は3兆円です。金融資産1600兆円のうちのたった3兆円に過ぎないのです。800万口座で3兆円なのに大騒ぎしすぎだと思います。日本の家計の金融資産1600兆円の中身を見ると、ほとんどが現金預金です。株、投資信託は合わせて242兆円で、それと比べても3兆円は僅か1%でほとんど誤差の範囲です。一方アメリカの場合には、株式・出資金で33%、こうして比較してみると、日本は少し株にシフトしたと言われていますが、全体の統計ではまだまだ一滴に過ぎず、なぜ大騒ぎするのか疑問です。

 NISAについては、おそらく金融機関が広告代だけでもかなり多く支払っていると思われます。政府が株を囃し立てるためにやろうとしていると思いますが、GPIFと同様に、株が値上がりし、アベノミクスがうまくいっていると見せるためのやらせです。NISAの残高は、日本は3兆円に対し、イギリスは株式で22兆円と、より多くなっています。アメリカはそうした事は気にせずに株に投資するので21兆円程度にとどまっています。日本の場合、年間の限度額が100万円ということで、実際に株式市場に影響を与えるような規模ではないと言えます。

 その中で、日経新聞は先月30日、株価指数等に連動するETF(上場投資信託)の2014年の売買代金は、累計30兆円と、1年前に比べて6割増加し、過去最高を更新したと報じました。

 ETFはあまり広告などをしていないのに、NISAよりも大きな規模に膨らんでいます。ETFが大きくなると結局は株に資金が行くので悪くはありませんが、ETFはパッケージであり、個々の会社について興味を持って考えて投資するわけではないのです。ですから、ETFがあまり増えてくるのはいかがなものかと思います。アメリカの場合はもちろんETFや投信は非常に大きいものの、それよりはるかに大きいのが株式です。そうすると、一般の人でも個々の会社について非常によく知っているのです。個々の企業に興味を持ってもらうという点では、手放しで現状を評価するのもいかがかと思います。

 政府から見れば結局株式投資に回るので、株が上がり景気が良くなり、アベノミクスの評価につながるので歓迎でしょう。しかし、このETFの増え方は異常です。取引状況を見るとすごい勢いで増えているのが分かります。当然、株が下がれば投資家が逃げていくということになります。最近は10,000円を割る水準から18,000円近くまで株が上昇しているので投資をするのは良い事ですが、もう少し個々の会社まで興味を持って投資してくれるとありがたいと思います。

 また、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が先月22日に公表した9月から10月の運用委員会の議事要旨によりますと、10月末に決定した新たな資産構成を過去10年間に当てはめると、リーマンショックがあった2008年度は30兆円の赤字、実績は9兆円の赤字になることがわかりました。

 過去に当てはめてシミュレーションをしてみると、年金は1割以上落ちると言うことです。ただ長い目で見た場合には株式市場は伸びるという肯定派もいます。それはもちろんアメリカでは言えることです。しかし日本の場合には、このような人口減社会において、同じようにいくかというところは疑問です。

 ポートフォリオを見ると、ここで政府は大幅に国内債券の運用をシフトし、国内株、外国株、外国債券の運用に変更してしまったわけです。これは一方で、国内債券に対する自信がなくなったと言うことでもあります。国内債券が下落した場合、株式も水準を保てません。このような運用そのものに問題があるのです。国内債券が暴落するかもしれない、国債デフォルトに繋がるかもしれないような増税繰延をし、無駄削減をやらずにいる政府は、たまたま2015年度は税収が少し増えると言われているので呑気にしていますが、このポートフォリオにしたところでリスクは大きく変わらないだろうと思います。

【世界】原油安、個人マネーに影~日経新聞~ ロシア関連投信12月に2割値下がり

 日経新聞は先月24日、「原油安、個人マネーに影」と題する記事を掲載しました。原油安の影響で、ロシアやエネルギーに関連する投資信託は、12月に1割から2割値下がりし、個人投資家からの問い合わせも増えています。原油安は経済全般や家計には総じてプラスである一方、個人マネーの萎縮を招く可能性もあります。その一方、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源担当大臣は先月21日、原油価格が20ドルに下落しても関係ないと述べ、減産はOPEC加盟国の利益にならないと強調しました。

 原油の問題は、誰が誰をいじめようとしているのか、誰と誰の我慢比べなのか、既に分からない状況になってきています。ベネズエラ等はさしあたって非常に苦しい状況に追い込まれています。ロシアはもちろんそうです。アメリカはシェールで競争に勝てると思って脱OPECを考えていたわけですが、原油価格が40ドルまで下がってくるとシェールはうまくいかない状況になってしまい、アメリカもこれによってメリットは無いのです。

 原油価格のこの水準は、初めてのことではありません。リーマンショックの後、40ドルまで一旦下がっています。その後100ドルを超えるような水準になり、今また40ドルに近づいてきているという状況です。ロシアが危機的状況だと言われていますが、ロシアはこのような状況を2、3回経験しています。原油価格が高い水準が7、8年続き、ロシアは潤った状況に慣れてしまってはいますが、過去の経験から今回も耐えられると言えます。

 たちが悪いのはサウジアラビアです。サウジアラビアの場合は原油価格が10ドルまで下がっても耐えられるのです。井戸元価格が2ドルというとんでもない国家なのです。もちろん、シェールを潰すことがサウジアラビアの言い分です。しかしそれでアメリカ自身も潰れてしまうということになった場合、それによってサウジだけが繁栄することにもならないでしょう。今のところ言えるのは、やはりOPECという組織は時々このようにして競争相手を排除するということです。世界に独占禁止法があれば、まさにその対象です。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一
1月4日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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資産形成力養成講座 加藤

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それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!