政治リスクの調査やコンサルティングを手掛けるアメリカのユーラシアグループは1月5日、年初恒例の10大リスク予想で、2015年は「欧州の政治」をリスクの筆頭にあげました。イアン・ブレマー氏率いる同社の予想は市場関係者の注目度が高く、2014年も原油安やウクライナへのロシアの強硬策を的中させています。
イアン・ブレマー氏は、トマ・ピケティ氏と並んで今非常に注目を集めている一人です。「『Gゼロ』後の世界」という本を書いて非常に有名になった人です。ただ今年の予想を見ると、私の意見とはだいぶ違っています。
まず、欧州の政治ですが、イスラムの欧州における影響ではなく、欧州の政治がリスクだと書いています。これは、ギリシャを中心に再び金融不安などが起こってくるのではないかというものです。次いでロシアをリスクとして挙げています。私はロシア、ウクライナ、欧州の政治については、すでに決着がついたと考えています。ギリシャの場合、急進左派連合が勝った時には、一度だけ我慢して予算を立てるのを見て、緊縮予算にしない場合には、ユーロゾーンから切り離してしまうという策がためらわずに採られると思います。それによって、緊縮をしなければ、ポルトガルもスペインもイタリアも切り離すのだと示すことになるので、実はもう決着がついていると言えるのです。
また、ウクライナ、ロシアに関して言えば、ウクライナはすでに戦う力もなく破産状態なので、ここから先EUが本当に膨大なコストがかけて、ウクライナを救済するでしょうか。今のヨーロッパには、それは無理なことです。もちろん、ブルガリアやルーマニアのようにまだ自分たちも恵んでもらいたいと思っている国がずらりと並んでいるので、ここでEUの中にウクライナを入れる事はまずできないでしょう。今、EUは後退しつつあり、プーチンも経済制裁や原油安でダメージを受けています。結局は、ミンスク合意を徹底しようという話にならざるを得ないほどウクライナは疲弊しているのです。その点からも欧州政治やロシアの問題は解決済みであり、大きな問題にはならないと思います。
むしろ、その次に挙げられている「中国の低成長」等の問題の方が大きいとみています。また、ブレマー氏は、米・ソではなく中・米の葛藤も大きなリスクであると言っていますが、私は中国が今の段階でアメリカと葛藤していくということは表立ってはやりにくいだろうと思っています。裏でコソコソと気づかれないようにやる可能性はありますが、問題になるとは考えていません。
やはり、国民の不安という点から見ると、今回フランスで起きたような問題が大きいでしょう。ヨーロッパにはイスラムを自国に抱え込んでいる国がたくさんあるので、こうした問題とどのようにして共存していくのかが課題です。これには今のところまだ答えが出ていないので、今年のリスクとして残るだろうと思っています。
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