ギリシャ総選挙で勝利した急進左派連合のツィプラス党首は先月26日、右派独立ギリシャ人と連立政権を組むことで合意しました。ツィプラス氏は同日首相に就任し組閣に着手、EU支援の条件となっている緊縮財政に反対する政権が誕生する見通しで、ギリシャは再び欧州債務問題の焦点に浮上しています。
今回は反緊縮を唱えていたツィプラス氏率いる急進左派連合が149議席を獲得し、圧勝しました。実際は99議席を取り、第1党は50議席もらえるので、合計で149議席となったわけです。他の党も合わせて圧倒的に反緊縮で議席を固めてしまいました。この勢力は、国民から選ばれたので全く妥協の余地はないとし、ヨーロッパの要求をはねのけると意気込んでいます。しかし、ユーロからの脱却やEUからの脱退は望まないとしていて、どうしていくのか明確な答えを持っていないのです。
ただギリシャ国民がこれだけ圧倒的に反緊縮を支持したという事は、やはり事情があると思われます。ビジネスウィーク誌にギリシャ経済に関する記事が出ていましたが、2008年、1000人あたり2人しか亡命していなかったギリシャですが、去年は4.7人が国外へ出て行っています。この国は嫌だと言ってオーストラリアなどへ脱出しているのです。
そして失業率は2008年には7.2%だったのが、現在は25.5%と、4人に1人が失業している状況です。また、新車登録台数も2008年には29万6000台でしたが今は8万4000台しかありません。さらにGDPも630億ユーロから480億ユーロに大幅に縮んでいます。ギリシャの株価指数を見ても2856ポイントから819ポイントに落ち込んでいるのです。ギリシャ経済はこのような状況で、ギリシャの人から見ると、緊縮をしても底なし沼のようで、もういい加減にして欲しいと感じているのだと思います。こんな国からは出て行こうと国外へ出る人もいますが、そうもいかない人たちが多くいるはずで、反緊縮勢力の拡大につながったと言えます。
EUはドイツとともに、ユーロゾーンに残る限りは緊縮をするように要求しています。もともとマーストリヒト条約ではそういう約束になっていたと主張し、ギリシャの無駄遣いを非難しているのです。そうした中で、ギリシャはロシアと組もうという動きを始めています。EUが行っているロシア制裁に反対し、ロシアを味方につけようなどというめちゃめちゃなところも現れてきているのです。欧州議長も話し合いをしに行ったにも関わらず、ギリシャ側は話し合いに全く応じず、かなり激しい物別れに終わりました。ドイツがいきなり話し合うとどうなるか分からないので、今後はオランド氏やスペイン、ポルトガルなども加わって説得に当たることになっています。
ツィプラス氏については、学生時代から共産主義者として有名な人でした。日本で言えば学生運動上がりと言えます。日本でもそういう人が首相になり、その時に原発事故が起こり、大迷走をしたのは皆さんもご存知の通りです。このツィプラス氏もギリシャはどうしたらいいのか名案は持ち合わせていません。ただ今まで外からかけられてきた箍はもういやだと主張し、国民もそれを支持したことによって自分は首相になったというポピュリストなので、非常に困ったものだと思います。
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