ロイターは4月30日、「効力失うギリシャ危機カード」と題する記事を掲載しました。これは、ギリシャが デフォルトに陥ったり、ユーロ圏から離脱したりする事態となれば、ヨーロッパの金融市場に壊滅的な影響が及ぶという従来の見方が変化していると紹介。ECBの国債買い入れプログラムなど、これまで数年かけて築き上げてきた各種の防火壁があるためということで、 その中心的な存在が先月開始されたばかりの1兆ユーロの量的緩和だとしています。
ギリシャ問題はもう行くところまで行けということになっています。3年前には大変だと大騒ぎし、当時、実際にイタリアやポルトガル、スペインが危機的状況になりましたが、今回はそれらの国々が騒がれていないので、おそらくギリシャだけを切り離せると見られています。その場合には、ヨーロッパが3年間で作ってきたESMやOMTなどの安全機構が機能するので、切り離してもよいということなのです。
そして、ギリシャのバルファキス財務大臣は横に置かれることになるでしょう。ツィプラス首相も中途半端なパッケージを持って行って門前払いをくらっていてはまずいと感じ、民衆の支持は失ってもヨーロッパの言うことを聞くか、自分たちで奈落の底に突っ込んでいくか、どちらかの選択を迫られることになるでしょう。切り離された場合でもツィプラス首相はクビになると思われ、彼は今、ヨーロッパの言うようにすることを認めるか民意を問うと言い始めています。民意が良いと言ってくれれば、もう一度ヨーロッパ型の緊縮財政案を再提出するということになります。
ポピュリスト的なことを言って拍手喝采で迎えられたものの、それでうまくいくようなマジックはあるわけはないのです。おそらく、圧勝したことで、ヨーロッパの対応を甘く見ていたのだと思います。強面で英語もうまいバルファキスを財務大臣に据えてみたものの、前回のミーティングではけんもほろろでした。ギリシャ切り離しの可能性が五分五分以上になってきていると言えるでしょう。
一方ドイツですが、歴史的な低金利が続いています。日経新聞は4月15日、「高くつく低金利のコスト」と題する記事を掲載しました。これは低金利により、ドイツの預金者は過去5年間で総額1900億ユーロ、約24兆円を失ったと指摘。本来の金利であれば定期預金や保険などで、その分の金利収入を得られたとするものですが、それに加え今年だけで700億ユーロ、約9兆円のマイナス効果が加わるかもしれないと紹介しています。
この記事は実はフランクフルター・アルゲマイネの記事が元になっているのですが、これは非常に重要な観点を示していると思います。低金利でドイツ経済は安定しているように見えますが、預金者から見ると伝統的な金利である4-5%と比べると24兆円失ったというものです。日本も銀行預金が230兆円ありながらゼロ金利です。5%の金利が付いていればと考えると同じ状況なのです。
そう考えるとこの10年間で100兆円を超える利子が日本人のポケットに入るはずだったのですが、この金利収入がないために使う金もないという事になっているのです。低金利が一般消費者に及ぼす影響を日本は全く無視してきています。ドイツもこのことを無視して国の安定や銀行の経営のために低金利を維持していますが、この観点は間違いで、本来の金利を払うべきだという点を突いているこの記事は、非常に良いことを言っていると思います。これが、私が「心理経済学」の中などで以前から主張している点なのです。
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