金利がマイナスになるというのはおかしな感じがします。これは通常お金を借りたら利息を払うわけですが、お金を借りたら利息をもらえるという状況で、かなり違和感があります。普通、プラスの金利の債券を買った場合、償還した際には100以上になって戻ってくるものですが、マイナス金利では償還した時に損してしまうということなのです。要するに、お金を借りると得をするということで、そうした異常な事態が起きていたわけです。それが足元、回復してきているということなのです。
今回の金利の上昇は、なぜ起きたのでしょうか。今回の動きについては、2つのフェーズに分けられると見ています。まず、4月半ばから5月上旬の第一局面は、ドイツを中心としたヨーロッパ発の金利上昇だと理解するのが正しいと思います。そのヨーロッパの金利が上がったきっかけは、4月末にドイツの消費者物価が2ヶ月連続でプラスとなったことが挙げられます。それがサプライズとなり金利の上昇につながったわけです。
ただ、それまでは非常に速いスピードで金利が下がっていました。年初には、0.5%だったドイツの10年国債が、4月半ばには.0.049%になり、9年債はマイナスになるところまで大きく下げていました。金利が下がったわけですから、債券価格は急上昇していたということです。人気高騰でどんどんと買われていたというわけなのです。金利がこれほどの水準まで下がっていた中、物価の上昇が確認されたので、金利も上昇に転じたと言えます。
ちなみに、この間のドイツの株価を見ると、年初には9800でしたが、4月半ばには26%も上昇し、12374まで上げていました。そして金利が上がるとそれと歩調を合わせるように株も下がり、5月初旬には8.5%ほどの下落となっています。さらに実はユーロ・ドルも、年初から4月半ばにかけて12%も下げていました。ユーロが弱くなると、ドイツのような輸出国の景気は良くなるので株価も上昇していたわけです。金利は逆に下落していましたが、反転したことで株価も反動で下がり、ユーロも巻き戻されて強くなってきたということなのです。
まとめると、やはりこの金利上昇は反動によって起きたと思います。4月まで債券は買われ過ぎ、金利が下がり過ぎていて、そこへドイツの物価が連続でプラスとなったことがきっかけとなり、それまでの動きの反動が出たというわけです。その反動により、株式市場や為替市場にも同じように反動が出たという理解が一番正しいと思います。
こうした動きは市場に携わるプロにとっては分かりやすいものの、一般の投資家の方々は単に買われたものが売られたということでは理解し難いと思います。もちろん当然それだけでは動かず、物価指標がプラスとなるといったロジックが関わってくるものなのです。そして、それに加え今回は、米国景気が停滞し、だめだと見られていたヨーロッパの景気が復活するという期待が出始めていたことも背景にあります。さらに、大きな背景の一つには原油の持ち直しも上げられます。3月中旬には42ドルまで下げていた原油価格が、4月には少しずつ戻り始めていたことも要素の一つに加わって、ヨーロッパで金利が大きく上がったという理解が一番素直な見方だと思います。
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