グローバル・マネー・ジャーナル

2015.6.24(水)

世界の金利上昇はなぜ起こったのか?(田口美一)

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世界の金利上昇はなぜ起こったのか?(田口美一)2015/06/24(水)


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今回のテーマ

世界の金利上昇はなぜ起こったのか?(田口美一)

世界の金利上昇はなぜ起こったのか?

 アメリカとイギリスの金利は反転上昇局面にあります。チャートからもわかるように、アメリカの10年国債は、2014年の頭ごろから今年の年初まで金利がずっと下がり続け、2%以下まで下落しました。それが足元は上昇に転じ、ついに2.5%に近づくところまで上昇しています。年初からは80ベーシスポイント、つまり、0.8%近い上昇を見せているのです。イギリスもアメリカ同様景気の状態も良いので、アメリカと同様のペースで金利が上昇しています。

 一方、ヨーロッパや日本を見てみると、やはり同様に足元金利は上昇傾向です。ドイツは直近4月には10年債利回りが0.049%という最低水準をつけました。9年物はマイナスと、0以下まで下げていました。そこまで下落した金利が、足元急に上昇し、1%まで戻ってきているのです。イタリアもこのところ反転し、約1%上昇しました。日本も確かに上昇していますが、もっとも下げたところと比べると、0.3%ほどの上昇にとどまっています。日本でも5年物はマイナス金利が付いたので、日本も過去に見たことのない水準に金利が下がっていたと言えます。

 金利がマイナスになるというのはおかしな感じがします。これは通常お金を借りたら利息を払うわけですが、お金を借りたら利息をもらえるという状況で、かなり違和感があります。普通、プラスの金利の債券を買った場合、償還した際には100以上になって戻ってくるものですが、マイナス金利では償還した時に損してしまうということなのです。要するに、お金を借りると得をするということで、そうした異常な事態が起きていたわけです。それが足元、回復してきているということなのです。

 今回の金利の上昇は、なぜ起きたのでしょうか。今回の動きについては、2つのフェーズに分けられると見ています。まず、4月半ばから5月上旬の第一局面は、ドイツを中心としたヨーロッパ発の金利上昇だと理解するのが正しいと思います。そのヨーロッパの金利が上がったきっかけは、4月末にドイツの消費者物価が2ヶ月連続でプラスとなったことが挙げられます。それがサプライズとなり金利の上昇につながったわけです。

 ただ、それまでは非常に速いスピードで金利が下がっていました。年初には、0.5%だったドイツの10年国債が、4月半ばには.0.049%になり、9年債はマイナスになるところまで大きく下げていました。金利が下がったわけですから、債券価格は急上昇していたということです。人気高騰でどんどんと買われていたというわけなのです。金利がこれほどの水準まで下がっていた中、物価の上昇が確認されたので、金利も上昇に転じたと言えます。

 ちなみに、この間のドイツの株価を見ると、年初には9800でしたが、4月半ばには26%も上昇し、12374まで上げていました。そして金利が上がるとそれと歩調を合わせるように株も下がり、5月初旬には8.5%ほどの下落となっています。さらに実はユーロ・ドルも、年初から4月半ばにかけて12%も下げていました。ユーロが弱くなると、ドイツのような輸出国の景気は良くなるので株価も上昇していたわけです。金利は逆に下落していましたが、反転したことで株価も反動で下がり、ユーロも巻き戻されて強くなってきたということなのです。

 まとめると、やはりこの金利上昇は反動によって起きたと思います。4月まで債券は買われ過ぎ、金利が下がり過ぎていて、そこへドイツの物価が連続でプラスとなったことがきっかけとなり、それまでの動きの反動が出たというわけです。その反動により、株式市場や為替市場にも同じように反動が出たという理解が一番正しいと思います。

 こうした動きは市場に携わるプロにとっては分かりやすいものの、一般の投資家の方々は単に買われたものが売られたということでは理解し難いと思います。もちろん当然それだけでは動かず、物価指標がプラスとなるといったロジックが関わってくるものなのです。そして、それに加え今回は、米国景気が停滞し、だめだと見られていたヨーロッパの景気が復活するという期待が出始めていたことも背景にあります。さらに、大きな背景の一つには原油の持ち直しも上げられます。3月中旬には42ドルまで下げていた原油価格が、4月には少しずつ戻り始めていたことも要素の一つに加わって、ヨーロッパで金利が大きく上がったという理解が一番素直な見方だと思います。

 低すぎた金利の反動という動きは日本でも見られています。2013年に黒田日銀総裁が就任し、異次元緩和を始めた時に、どんどん国債が買われていきました。金利は急激に下がり続けましたが、やはりその反動で上がる局面も見られました。その後再び金利は下がっていますが、ドイツの今回の局面も2013年当時の日本の局面とよく似ているので、同じような動きであり、マーケットではよくあることだと言えるでしょう。

金利上昇の要因 第2フェーズで起こったこととは?

 次に、その後の6月以降の金利急騰については、最も景気の強いアメリカ主導のものだと言えます。ヨーロッパの金利が上がりつつあるときに、FRBイエレン議長が年内の利上げを示唆しました。アメリカの景気は順調に良くなっており、失業率も下がり雇用者も増えているとして、年内に利上げをする可能性も出てきたと発言したのです。これがアメリカの金利の反転につながりました。

 さらに、ドイツのみならずユーロ全体の消費者物価指数も半年ぶりに前年比プラスとなったほか、ECBドラギ総裁が市場予想に反して、市場の動きに慣れる必要があると発言し、参加者を驚かせた事などもありました。加えて、アメリカの雇用統計も予想を上振れて、金利の上昇をサポートする材料となりました。

 世界的に起きた今回の金利上昇は局面を分けて考える必要はあるものの、全体としてみると、景気も物価もマイナスに行くと思っていたところ、指標が改善を見せ、アメリカもやはり景気が良いという発言が出るなどしたことがその要因です。長期金利をめぐる要素のうち、景気とインフレについて数字がポジティブな方に転換してきたことにより、金利の反転が起こってきたと整理できると思います。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師
金融経済アナリスト
前クレディ・スイス証券副会長
田口 美一
6月16日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
詳しくはこちら

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それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!