グローバル・マネー・ジャーナル

2015.7.1(水)

緊迫するヨーロッパ情勢を俯瞰する(大前研一)

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緊迫するヨーロッパ情勢を俯瞰する(大前研一)2015/07/01(水)


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今回のテーマ

緊迫するヨーロッパ情勢を俯瞰する(大前研一)

【ギリシャ】3年債利回り30%台 ~16日・欧州債券市場~

 ※6月14日、21日撮影時点の内容です。

 独ZDFテレビの世論調査によると、ギリシャのユーロ圏離脱を望んでいるドイツ国民が51%に上ることがわかりました。1月に実施された調査ではこの回答は3分の1程度にとどまったことから、長引くギリシャ支援協議にしびれを切らしているのが現状のようです。

 ギリシャに翻弄され、ツィプラスは真面目に考えていないということで、ドイツをはじめ欧州諸国では、もう疲れたので早く切り離せという意見が非常に増えてきています。このところヨーロッパの銀行関係者やドイツの財務当局も、やはりプランB、ユーロ離脱を考えないといけないというところに急速に傾いていて、フランクフルトで行われていた会議も決裂したままになっています。ギリシャは依然として案を出すと言っていますが、今まで満足できるものを持ってきた事はありません。いよいよとなるとギリシャも何か出すかもしれませんが、このところの動きを見るともう秒読みと言えるでしょう。

 現在ギリシャ国債のレーティングはCCCになっています。この後いきなりDやFになる可能性も非常に高いと思います。数週間前はなんとか期待を持たせていましたが、急速にあきらめムードになっていてプランB、つまり最悪の事態に備えるという状況になっています。ヨーロッパは実際のところギリシャを切り離しても大丈夫なようになっていますがそれはやりたくないのです。ギリシャ人も極限のところまで見せられると、やはりもう妥協しろと言う意見が世論調査で多数になっています。この前の馬鹿な選挙は何だったのかと思われますが、ユーロに留まってほしいという人が過半数になっているようです。

 そして16日のヨーロッパ債券市場でギリシャ国債の利回りが急上昇し、3年債利回りが30%台の高水準で推移しました。また今週だけでギリシャの全預金額の3%に当たる42億ユーロ、約5880億円が銀行から引き出されたということです。

 取り付け騒動は英語ではrun on the bankと言いますが、そういう言葉が聞かれるようになりました。預金残高はグラフで見るとそれほど大きく減ってはいませんが、急激に減少していて、今後何かの拍子にドンと減る可能性があります。IMFに対する2000億円が払えるかどうかということで、今月末が山になるでしょう。

 一方、ウクライナでも債務交渉が難航しています。ウクライナの借金について、ヨーロッパは助けるわけにはいきません。EUのメンバーであるギリシャに対しては厳しく対処しているので、ウクライナを助ける訳にはいかないということです。二人の重病人がいて、片方は親戚、もう片方は縁もゆかりもないが大切にしたい将来の仲間というわけです。基本的にはウクライナの方が見捨てられるのが早いと思います。そしてアメリカはまたここで東欧7カ国に戦車、重火器の配備を検討するなどと余計なことをするのです。冷戦時代の亡霊が出てくるのか、ロシアに対してはまさになんでもありで、アメリカも負けてはいないという態勢になっています。

 そしてキプロスですが、時事通信は17日、「キプロス再統合、年内合意へ期待」と題する記事を掲載しました。ギリシャもトルコもへたってきたので、喧嘩している場合ではないということでしょう。南の方はギリシャ、北の方はトルコが実質支配となっていましたが、ギリシャが危機的状況でキプロスまで面倒を見ていられなくなり、こうなったらキプロス人だけで仲良くやっていこうとなったわけです。親の不幸が子どもの幸せになりそうな状況になってきました。この後ギリシャが破綻すれば、キプロスは単独でEUのメンバーであり、ユーロのメンバーでもあるので、情勢は変わってくると思います。

【トルコ】総選挙、与党・公正発展党が過半数割れ

 トルコ議会総選挙の投開票が7日行われ、与党・公正発展党の獲得議席数は258と、2002年の政権獲得以来、初の過半数割れとなりました。公正発展党はかろうじて第一党は維持しましたが、エルドアン大統領が求めた大統領権限を強化する憲法の改正は難しくなり、自身の影響力低下も避けられない情勢です。

 エルドアン大統領にとっては非常に残念な結果です。今回の選挙で伸びたのは右派と中道左派、さらに大きく伸びたのが、クルド系の国民民主主義党です。獲得数が10%ないと議席にならないのですが、今回は各地で10%を超えたので急に議席が増えたのです。従って、イスラム公正発展党が大幅に過半数割れとなり、憲法を改正して大統領権限を強くしようと思ってもどこかの党と連立を組まないといけないのですが、これが非常に難しいということなのです。

 エルドアン大統領はもともと首相を二期やり、その後大統領となりました。自身が首相だった頃は、当時の大統領ギュル氏の権限を制限していながら、自分が大統領になったらその権限を圧倒的に強くしようとしていて、ロシアのプーチン氏とやり方が似ています。エルドアン大統領は中東の名士と呼ばれ、ずいぶん期待もありましたが、やはりイスラム系です。トルコが曲がりなりにもヨーロッパから支持されてきた理由は、初代大統領のアタテュルクという人が、世俗主義を主張したことでした。大多数はイスラムでもクルドなど他の民族もいるので、政治からは宗教を除くとしてきたことが、世界がトルコを信頼してきた大きな理由でした。

 ところがエルドアン大統領はこの世俗主義をやめて、イスラム中心でやっていくとしたため、イスラム以外のヨーロッパなどが警戒し始めたのです。クルド人ももちろん反発しています。シリア国境の対応もうまくやらなかったこともあり、結果的にエルドアン大統領に任せていてはこの国はおかしくなってしまうとする動きがでてきたということなのです。依然として最大政党であり、与党はキープするとは思いますが、彼の思う方向には行かないでしょう。

 私はやはり世俗主義に戻るべきだと思いますが、この動きを見ている限りは、エルドアン大統領を説得する人はほとんどいないようなので、難しいかもしれません。ただせっかくトルコは発展し、1億人の人口を持ち、人口ボーナスもあり、場合によってはEUにも入れる可能性があるのに、ここで失敗すると、中東の大混乱の元になりかねません。クルド人は全部で3000万人という世界最大の国を持たない人種です。彼らがトルコには1000万人以上いるので、その一部が独立運動をしているということもあり警戒されています。対日親和性のあるトルコが大好きな私としては、世俗主義に戻ってもう少し寛容な政策にしてもらいたいと思います。

【ジンバブエ】自国通貨を廃止 1米ドル=3京5000兆ジンバブエドル

 ジンバブエの中央銀行は6月15日から通貨ジンバブエドルをアメリカドルに両替して回収すると発表しました。経済崩壊により価値が暴落し、使用されていない自国通貨を廃止するもので、両替レートは1アメリカドルに対し、3京5000兆ジンバブエドルということです。

 これはおそらくギネス記録でしょう。トルコリラが100万桁を落としたこともありましたし、ブラジルもクルゼイロという通貨がハイパーインフレになった時にレアルを導入し直し、1レアル=1ドルとしてフレッシュスタートができたという経緯がありますが、今回の数字は新記録でしょう。しかし皆米ドルを使っていて、誰もジンバブエドルを使っていないので、実はあまり影響がないのです。

 ジンバブエは本来なら非常に豊かなところで、日本と同じくらいの面積ですが、プランテーションで野菜や果物などなんでも作れるすごいところです。ムガベ大統領が多選禁止を破って27年という長期にわたり居座っていて、すでに相当な歳になっており、おそらくインフレになっても計算もできなくなっていると思われます。ムガベ氏は欧米嫌いで自分のポジションを固めていきました。ハイパーインフレとなりましたが、国民は近隣通貨かドルを使っていて、自国通貨は全く役に立たない状況です。かつてはハインツが世界最高のトマトの産地として巨大なプランテーションを作ったこともありましたが、そういうことを全て滅茶苦茶にしてしまったムガベ氏が最近の選挙でもまだ選ばれているという状況です。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一
6月14日、21日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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資産形成力養成講座 加藤

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これまで長期デフレを経験した日本。デフレに慣れ、インフレの想像がつきにくい方も多いかもしれません。しかし確実に、デフレ脱却に向けて動き出しています。インフレとはモノの価値が上昇する世の中。私たちはそうした物価上昇以上に持っている資産を高めていかないと生活力(購買力)を落としてしまうことになります。

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それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!