そうした中、中国は7月に入ってからも下げ止まらないため、いろいろと株価対策を行っています。7月1日には人民元建てのA株の取引手数料を引き下げています。また、中国証券監督管理委員会が信用取引の決済期限を撤廃しました。日本では6ヵ月が期限ですが、期限をなくすという異例の措置です。さらに2日、中国人民銀行がレポ取引で350億元を供給。そして、中国証券監督管理委員会が国内の証券金融会社の資産規模の増強を発表。それに加えて、需給面ではIPOの認可を抑制し、IPOの数を減らすことを決めました。中国ではIPOが増えてきていて、そのための換金売りが出ることが株価下落の要因の一つと考えられるからです。
ただ、企業は成長するために資金調達をして、設備投資や借金返済に回すわけで、もしIPOが止められてしまうと、そうした企業の活動資金が止まってしまい、経済にとっては良くないことになりかねないという懸念が残ります。そして、さらには日本のジャスダックやアメリカのナスダックに当たる創業板という市場があり、その株価を下支えする策や、ファンド企業が25社グループになりETFを買う策などが出ています。ETF購入については、2.4兆円とも言われています。日銀が今回の金融緩和で年間にETFを買う額が3兆円なので、かなり大規模な購入と言えます。
こうした株価対策がなかなか効かないところが不安要素になっていますが、中国の経済成長は今後も続くとみています。何度か上海を訪れましたが、中国経済は日本の経済構造とは全く違っていて、どちらかというとアメリカ経済に似ています。アメリカも州ごとに経済がありますが、中国も同様に、それぞれの地域ごとに経済状況は異なっているのです。内陸部の新築物件が廃墟化している様などがよく報道されますが、それらはごく一部にすぎません。そうした物件が北京にあるかというとそうではないのです。基本的に経済構造としてはいろいろなものが重なってできている経済であり、何か一本がプツンと切れたらそのまま動かなくなるような薄い経済ではないのです。
ただ、こうした状況が長引けば、基本的にはあちこちの筋肉が痛んでくることになるので、そうした影響を注意してみておく必要はあるでしょう。中国経済が悪化しているかどうかを見るのに一番良い方法はインバウンドの動きです。今はまだ株価下落の中でも中国を中心としたアジアからの観光客で日本国内のホテルや観光業界は盛況です。日本でもバブル崩壊後には給料が下がり、ローン返済も滞るなどして、旅行も控える動きになりました。そうしてみると、今の中国は株価が下落していてもそこまではいっていない状況です。
今はそうした懐の深さがあるので、今後、夏の旅行シーズンで観光客が減るなどといった動きが出てきたら注意が必要です。富裕層は株で儲けて日本や韓国に旅行するのがステータスなので、この動きに変化が出て来れば、株価の下落に加えて経済状態も悪化してきている可能性があると言えます。観光客数や爆買いの金額に変化の兆しが出ただけでも注意した方が良いのです。
上海総合指数は、現在、200日移動平均線前後で推移しています。一年間で投資した人の平均コストがこの移動平均線になるので、まだ大きな損失は出ていないことがわかります。損失を被っているのは6月前後の高値近辺で買った人だけなのです。6月時点では、年初に投資していれば1.5倍近くになっていたので、そこから下落し始めたという段階なのです。この移動平均線を下回ってもまだ下落が止まらないとなれば、その時には警戒が必要だろうと思います。日本に与える影響もその後に出てくると言えます。
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