グローバル・マネー・ジャーナル

2015.7.15(水)

上海総合指数 異例の株価底上げ策(福永博之)

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上海総合指数 異例の株価底上げ策(福永博之)2015/07/15(水)


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今回のテーマ

上海総合指数 異例の株価底上げ策(福永博之)

ギリシャはドラクマの発行に至るのか?

 ギリシャがユーロを離脱した場合、新しい通貨は元のドラクマに戻る可能性も指摘されています。しかし、そのまま別の通貨を発行するということになると、それだけでユーロ圏から脱退したとみなされる可能性があります。本来、ユーロを使っているのでユーロ圏であり、経済的にもつながりを持つわけです。ユーロを使わず自分たちの独自の通貨を発行したとなると、それがそもそもユーロ離脱の意思を表しているということになりかねないのです。

 そうならないために何をするかというと、ドラクマのような通貨ではなく、借用書のようなものを発行する可能性があります。通貨に似たような、ギリシャ政府がその金額を保証すると記した金券のようなものです。日本でも江戸時代などには似たようなものが使われていたかもしれませんが、そのようなものを発行して急場を凌ぐわけです。ギリシャ政府が保証しているものなので、最終的にはユーロで返すことになります。ですから、ユーロに残るという選択をする場合は、ドラクマが即復活とはならない可能性が高いのです。

 実際もし、ユーロを離脱することになった場合ですが、ユーロは一時下落するものの、弱い経済の国が出ていくことで、ドイツが牽引して上がっていくという考えも聞かれます。ただ、これまでのドイツの経済成長やユーロ円のチャートなどを見ると分かりますが、2007年、2008年あたりは1ユーロ160円、170円の時代でした。その後ギリシャ問題が発覚し、アメリカの住宅バブルがはじけるなどして、ユーロが弱くなったことによってドイツは潤ってきたのです。ドイツ経済が牽引してユーロ圏が良くなっていくならば、為替はユーロ高になります。そうなった場合、ドイツの輸出が本当に牽引役となれるのでしょうか。

 これまでドイツはギリシャに物を売ってきました。ギリシャの年金生活者などは高い年金をもらってドイツ車を高い値段で買っていたわけです。そうしたことから考えると、実際はドイツが牽引してユーロが上がることの方が一時的で、一旦ユーロが強くなるとすれば、その後はユーロ高によって逆に苦しめられる可能性が出てくると思われます。確かにドイツが支えている一面はありますが、ドイツ一国が支えることによって強くなったために、逆に経済が弱くなる可能性があるのです。ドイツとギリシャの力関係から一面的に捉えるのではなく、両面から見ていくことが大切なのです。

 一旦はユーロが買われ、輸出で潤っているドイツは苦しくなる可能性があるわけですが、もしそうなると日本にとっては、特に自動車産業などは、恩恵を受けることになるでしょう。その結果、ユーロ買いの日本株買いという流れが起きる可能性もあるかもしれません。

上海総合指数 異例の株価底上げ策

 中国は貸出金利を0.25%の引き下げ、預金金利も0.25%引き下げ、金融緩和を行いました。その背景となったのは株価の下落です。上海総合指数は6月12日に2008年1月以来、7年5ヵ月ぶりの高値水準をつけたにもかかわらず、その後26日には急落。これを受けて、翌27日に金融緩和策を発表したのです。ただその利下げが効いていないというのが現状です。

 そうした中、中国は7月に入ってからも下げ止まらないため、いろいろと株価対策を行っています。7月1日には人民元建てのA株の取引手数料を引き下げています。また、中国証券監督管理委員会が信用取引の決済期限を撤廃しました。日本では6ヵ月が期限ですが、期限をなくすという異例の措置です。さらに2日、中国人民銀行がレポ取引で350億元を供給。そして、中国証券監督管理委員会が国内の証券金融会社の資産規模の増強を発表。それに加えて、需給面ではIPOの認可を抑制し、IPOの数を減らすことを決めました。中国ではIPOが増えてきていて、そのための換金売りが出ることが株価下落の要因の一つと考えられるからです。

 ただ、企業は成長するために資金調達をして、設備投資や借金返済に回すわけで、もしIPOが止められてしまうと、そうした企業の活動資金が止まってしまい、経済にとっては良くないことになりかねないという懸念が残ります。そして、さらには日本のジャスダックやアメリカのナスダックに当たる創業板という市場があり、その株価を下支えする策や、ファンド企業が25社グループになりETFを買う策などが出ています。ETF購入については、2.4兆円とも言われています。日銀が今回の金融緩和で年間にETFを買う額が3兆円なので、かなり大規模な購入と言えます。

 こうした株価対策がなかなか効かないところが不安要素になっていますが、中国の経済成長は今後も続くとみています。何度か上海を訪れましたが、中国経済は日本の経済構造とは全く違っていて、どちらかというとアメリカ経済に似ています。アメリカも州ごとに経済がありますが、中国も同様に、それぞれの地域ごとに経済状況は異なっているのです。内陸部の新築物件が廃墟化している様などがよく報道されますが、それらはごく一部にすぎません。そうした物件が北京にあるかというとそうではないのです。基本的に経済構造としてはいろいろなものが重なってできている経済であり、何か一本がプツンと切れたらそのまま動かなくなるような薄い経済ではないのです。

 ただ、こうした状況が長引けば、基本的にはあちこちの筋肉が痛んでくることになるので、そうした影響を注意してみておく必要はあるでしょう。中国経済が悪化しているかどうかを見るのに一番良い方法はインバウンドの動きです。今はまだ株価下落の中でも中国を中心としたアジアからの観光客で日本国内のホテルや観光業界は盛況です。日本でもバブル崩壊後には給料が下がり、ローン返済も滞るなどして、旅行も控える動きになりました。そうしてみると、今の中国は株価が下落していてもそこまではいっていない状況です。

 今はそうした懐の深さがあるので、今後、夏の旅行シーズンで観光客が減るなどといった動きが出てきたら注意が必要です。富裕層は株で儲けて日本や韓国に旅行するのがステータスなので、この動きに変化が出て来れば、株価の下落に加えて経済状態も悪化してきている可能性があると言えます。観光客数や爆買いの金額に変化の兆しが出ただけでも注意した方が良いのです。

 上海総合指数は、現在、200日移動平均線前後で推移しています。一年間で投資した人の平均コストがこの移動平均線になるので、まだ大きな損失は出ていないことがわかります。損失を被っているのは6月前後の高値近辺で買った人だけなのです。6月時点では、年初に投資していれば1.5倍近くになっていたので、そこから下落し始めたという段階なのです。この移動平均線を下回ってもまだ下落が止まらないとなれば、その時には警戒が必要だろうと思います。日本に与える影響もその後に出てくると言えます。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師
株式会社インベストラスト 代表取締役
IFTA国際検定テクニカルアナリスト
福永 博之
7月8日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
詳しくはこちら

資産形成力養成講座 加藤

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それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!