グローバル・マネー・ジャーナル

2015.9.2(水)

中国発 世界経済激震のインパクト(大前研一)

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中国発 世界経済激震のインパクト(大前研一)2015/09/02(水)


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今回のテーマ

中国発 世界経済激震のインパクト(大前研一)

【中国】上海総合指数が前日比4.27%下落 ~8月21日~

 上海総合指数は21日、前日比4.27%下落の3507で取引を終了し、株価急落後の7月8日の安値にほぼ並びました。この日発表された製造業の景況感指数が6年5カ月ぶりの低水準となったことが嫌気されたもので、中国政府が打ち出した株価対策の効果は、ほぼ帳消しとなっています。

 中国の場合には投資先が土地から株に移り、為替へと移っています。計画経済であり、中央集権で対応している間に機能不全になってしまったということで、何が起こるかわからない状況に世界中が身構えています。そうこうしている間にNYの株価も日本の株価も、大きく下落してしまいました。結局、中国の大減速がこの背景にあるわけで、無理に7%成長と言っている間に、不動産から株、為替まで調整するという流れになってきます。

 その諸悪の根源は、人件費を人為的に毎年15%ずつ上げたことにあります。私も中国で事業をやっているから分かりますが、当局はみんなを喜ばせるためにとにかく15%ずつ賃金を上げてきたのです。もし為替を自由化していれば、おそらくものすごく元安に振れないと競争力が維持できないでしょう。そして、為替も賃金もコントロールし、土地もコントロールし、さらに株式市場もコントロールするなどということは、できるわけがないのです。今回その矛盾が全て露呈したということなのです。ここまでくると、途方に暮れている中国政府には、むしろ自信を持って何か手を打ってもらったほうがよいと思うほど、世界中が恐怖に陥っています。

 上海総合指数の推移をみると、この一年間で稼いだ時価をまだすべて吐き出してはいません。これから先、企業業績はよくなっていくどころか悪化しているので、まだまだ株価が下がるという可能性もあります。また、為替を自由化したら、アメリカは元を強くしろと要求しているので一旦は急激に強くなるでしょうが、その後反対に大きく振れ、例えば1ドル=10元から12元という水準に行ってしまうでしょう。そうすれば少し競争力が増してくるので、為替に関しては自由化しないとだめだと思います。

 日経新聞は5日、「商品投資専門のヘッジファンド、米で清算相次ぐ」と題する記事を掲載しました。穀物生産大手カーギル傘下のブラック・リバー・アセットマネジメントやカーライルグループがヘッジファンドの運用停止や清算を進めていると紹介、相場の下落で運用が低迷し、投資家離れが加速したことが背景にあるとしています。

 原油価格は39ドルまで下げてしまいました。リーマンショックの後にその水準まで下げているので、初めての経験というわけではありませんが、調子よく来ていたのがここに来て急激に余ってしまっていて、中国もこれ以上必要ないというところまできているのです。BRICsが非常に好調な時はうまくいっていたのですが、状況は変化し、今はコモディティー、つまり鉱物資源や穀物などに余剰感が出ているのです。それで商品先物やヘッジファンドが組んでいた商品などを店じまいしないといけない状況になってしまったのです。

 ビジネスウィーク誌の記事でも、米国内の石油生産はどんどん伸びていて、原油価格は下落してきていることが紹介されています。まだサウジアラビアを含めOPECも、アメリカも減産には踏み切っていません。作れるだけ作っているので価格は下落し、底をつけたという感覚は少なくとも先週には出ていません。

 マーケットにとっては、中国の問題があり、商品価格の下落、原油の下落があり、世界的に非常に疑心暗鬼となっていて、ギリシャどころの騒ぎではないという状況になってきています。

【日本】4-6月GDP前期比0.4%減 年率1.6%減で3四半期ぶりマイナス

 8月21日の国内株式市場で、日経平均株価は前日の欧州株の大幅下落を受けて600円近く値下がりし、ほぼ1カ月半ぶりに2万円の大台を割り込みました。中国経済の減速を起点とする世界的な景気変調への警戒感が強まり、萎縮した投資家が株式や社債などから先進国の国債、金などの安全資産へ資金を移しているという現状です。

 アベノミクスは2年経ったら物価上昇率2%などと言っていましたが、実際は何も機能していないということも背景にあるのです。中国の景気減速やアメリカの利上げ、さらにはギリシャが影響しているなどと、他の責任にしたがりますが、要するに日本の場合もかなりあやふやな口車に乗せられていた部分があるので、株価も下落してきているのです。しかし、金融機関系の総研などでは日経平均が2万6000円も近いとか、3万円も視界に入ったなどと、つい数カ月前には評価していたのです。この部分はよく考える必要があります。

 株価は企業の生み出す富、収益の現在価値なので、それほど急激に上がることはないわけですが、総研の人たちは記憶が短いのか、どんどん上がると言うのです。そこまで上がるとするならば、日本企業がよほど収益力を増してくる必要があるわけですが、一部の企業がうまくいったとしても全体としてはやはりそれだけの企業業績は改善できないというのが実態です。

 日経平均をみると今年は1万7000円くらいからスタートし、2万円を超えてそれいけどんどんと言っていたわけですが、結局1万9000円台に戻ってきていて、なかなか上値が重い状況です。日本の企業の実態から見るとだいたいこの水準で良いのではないかと見られます。会社としては非常に強いところも出てきているものの、シャープやソニー、東芝など、まだまだ不安材料を抱えているところが結構あり、全体的にバラ色というわけではないので、その総合指数である日経平均はなかなかうまくいかないはずだと言えます。

 内閣府が発表した4-6月期のGDPは、前期比0.4%減、年率換算で1.6%減少となったことがわかりました。マイナスは昨年の7-9月期以来3四半期ぶりで、個人消費と輸出の落ち込みが響いたとみられています。

 アベノミクスはどこへ行ったのか、円安になったので輸出が爆発すると見る人もいましたが、そうはなっていないようです。GDP成長率の推移を見ると、アベノミクスは2013年から始まりましたが、それから2年半以上経っているので2%成長は堅いと思っていたら、マイナスになってしまい、このままいくと今年はプラス2どころかマイナス1.6%だと言うのです。

 その内容を見ると、公共事業をなんとか持ち上げようとしているものの、それほど力は強くありません。円安で輸出が伸びると期待したものの、全然伸びていないということなのです。むしろアベノミクスが始まった頃の方が上向く感じがありましたが、それが心理経済学だったわけです。

 実態としてみると、やはりこうした老齢化社会は下に向かう力が相当強いので、よほどの持ち上げる力がないと難しいと言えます。1600兆円の個人金融資産がマーケットにドンと出てくるくらいのインパクトで、凍てついた心理を溶かさないといけないのです。しかしアベノミクスは、やってあげるから大丈夫という形なので、みんながじっと待っているだけなのです。個人の投資を促さないといけないのに、チャンスが来たら投資しようという考えにはならないのです。

 企業には、設備投資をしなさい、給料を上げなさいなど、いろいろ要請していますが、給料を上げたのは一部の企業で、全体から見るとほんの少しにすぎません。2年半待ってこの調子で、黒田日銀総裁も最近は静かにしているという状況なのです。お金がだぶつき、国内に置いておいても仕方ないということで、金融機関は先を競って海外投資を始めています。しかもその海外投資の理由は、円の将来、つまり日本国債の将来が不安で、ドルでヘッジをしているということなのです。早く抜けたほうがいいという考えになってきているのが現状なのです。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
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大前 研一
8月23日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!