グローバル・マネー・ジャーナル

2015.10.28(水)

新3本の矢の評価 実現手段の明示なし(大前研一)

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新3本の矢の評価 実現手段の明示なし(大前研一)2015/10/28(水)


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今回のテーマ

新3本の矢の評価 実現手段の明示なし(大前研一)

【日本】新3本の矢の評価 実現手段の明示なし

 日経新聞は15日、「新三本の矢の評価」と題する記事を掲載しました。これは、新しい三本の矢にはかなり疑問点が多いとし、GDP600兆円などの目標達成は困難にもかかわらず、実現のための手段が明示されていないと指摘。前の三本の矢は、経済の沈滞ムードを払拭するのに一定の役割を果たしたものの、新たな三本の矢は、政策的裏付けのない望ましいゴールを示しただけという評価になるとしています。

 これは望ましいゴールなどではなく、ネバーランドからピーターパンが打つピンクの矢と同じで、どこかで見た夢という感じです。戦略を打ち出すならば手段というものもある程度めどをつけないといけないはずです。これまでの安倍内閣の経済政策は必ずしもうまく機能していません、その結果GDPが今年はマイナスになるわけです。500兆円が600兆円になるということは、20%伸びるということで、2%を目指して政策を総動員してもマイナスになったのに、どうして20%伸びるなどと言えるのでしょう。ホッケースティックのようなひどい曲がり方です。

 特殊生涯出生率も1.8にすると言っていますが、アジアの韓国、香港、シンガポール、全て1.4以下で、日本は1.41です。1.8など、不可能もいいところなのです。それを達成するためには結婚したい人が全部結婚し、全部が子供をもうけるということになるのです。フランスとスウェーデンが過去に同じようなことを試みましたが、これを達成しようとするとフランスではGDPの3.2%、スウェーデンではGDPの3.75%、つまりGDPの約3.5%の予算を使うのです。日本の安全保障、自衛隊がGDPの1%ですが、それで大騒ぎしているのに可能なのでしょうか。

 また、出生率を上げるためには、移民を増やし、戸籍を廃止し、フランスでは結婚していない両親から生まれる子供が50%という状況になっています。これについて一億総活躍大臣の加藤氏は早速、移民はやらないということを表明しています。そうするとどのような手段があるというのでしょうか。

 介護離職ゼロも掲げていますが、これはもっと難しいことです。今、介護職員数は非常勤も含めて130万人です。ところが、年間の介護を理由とした離職者は約10万人なのです。介護職員合わせて130万人しかいないのに、離職者をゼロにするためには預かる場所、介護施設と介護する人が必要なので、さらに50万人以上の人が必要になるということです。つまり、介護離職ゼロなどということはあまりにも唐突だと言えるのです。

 安倍首相は、全く考えていないのか、どの数字を取っても、本当にありえないものばかりです。本来ならまずは前の最初の三本の矢がどのくらいの効果があったのか、その反省から始めてほしいものです。今の安倍内閣の実力は、政策を総動員してもGDPを1%上げることもできなかったのです。それなのになぜ20%上げると言うのでしょうか。そしてもっと恐ろしいのはマスコミがそれをそのまま伝えることです。批判も何もないというのは本当に怖いと思います。安倍首相について私は最近、「白紙撤回総理」ということを論文で書き、それも随分確立してきましたが、これからは「ネバーランド総理」というネーミングを与えようと思います。

【日本】設備投資 企業に積極投資促す ~官民対話の初会合

 政府は16日、企業に積極的な投資を促すための官民対話の初会合を開きました。会合では設備投資の拡大を求める政府に対し、経済界は法人実効税率の引き下げや労働規制などの岩盤改革が先決と主張。新興国経済の減速により、企業の収益環境は険しさを増しており、民間の経営判断に再び介入の動きを強めようとする政府の動きに、経済界で反発も広がっています。

 今回、財界人を集めた会合での安倍首相の説明を聞くと、書いてあるものを棒読みしていました。その内容は、お金が余っているのだから、投資してくれというものでした。しかし企業はいらない金が余っているわけではありません。財界の人たちはもっと違うということを言わなくてはならないと思います。

 私が総理だったらこういう場合、投資しろという言い方はしません。皆さんの手元流動性は非常に高まっている、政府としてはできる限り市場にお金を供給している、これが吸収されない理由、つまりなぜこれが皆さんによって投資として有効に使われないのか、その理由を教えてくださいと話します。その理由が政府の理由であれば、政府がなんとかしなくてならず、規制緩和の一つになるかもしれません。

 ただ経営者に聞くと、介入に対して反発などと言っていますが、実はそうではなく、単に使い道があるとすると海外なのです。国内に再投資をするということは、今のところ全く必要がないという企業が多いのです。必要がないのに銀行はお金を持っているので、海外で買収をしているというわけなのです。つまり、国内にはニーズがないのです。安倍首相への要望があるとすれば、5000万人ほど国の人数を増やして欲しいということでしょう。人口増という要素がない限り、積極的に国内投資をしていくのは難しいことなのです。

 また、もう一つ安倍首相は今回のスピーチの中で間違ったことを言っています。投資をして生産性を上げろと言っているのです。生産性を上げるということは基本的に機械が仕事をするわけで、クビになる人が増えるということです。生産性を上げたら必ず人は余剰になります。安倍首相は経済のけの字も知らないのでしょう。派遣社員を永久職にしろなどと言っている人にとっては、生産性を上げるという言葉は禁句なはずです。ドイツでは、生産性を上げるなどと言ったら組合が大きく反発します。

 生産性を上げて、需要も大きく伸びるならいいのですが、人間も増えていなくて需要がフラットな時に、機械投資をして生産性を上げる場合は、労働者をクビにしても仕方がないということになるのです。しかもあれだけ並みいる財界人がこの話をじっと聞いていて、指摘もせず、質問もしないのです。そして会合が終わってからマスコミに、余計なお世話だなどと言っているのです。財界もだらしないものです。安倍首相は経済に関して無知で、あのように棒読みで話をするのは聞くに堪えませんが、私は面白い政治家だと思って見ています。

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