グローバル・マネー・ジャーナル

2015.12.2(水)

伸びない日本経済の要因を探る(大前研一)

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伸びない日本経済の要因を探る(大前研一)2015/12/02(水)


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今回のテーマ

伸びない日本経済の要因を探る(大前研一)

【日本】伸びない日本経済の要因を探る

 内閣府が16日に発表した7月から9月のGDPは、物価変動の影響を除いた実質で、前の期に比べて0.2%減、年率換算で0.8%の減少となりました。企業の設備投資が2四半期連続で減少、輸出や個人消費も力強さを欠き、景気の足踏みが長引いています。

 安倍首相の演説を聞いていると、アベノミクスの効果が出てきて各項目が伸びていると言っています。しかし、実質GDP成長率前期比の推移を見るとそうは見えません。安倍首相が就任した時期から数字は伸びたり落ち込んだりを繰り返しています。

 内訳別の推移を見ると、公共投資は伸ばした印象がありますが、住宅投資などは落ち込み、今やっと戻りつつあるところです。また、民間消費支出が伸びないとダメなのですが、その部分が全く伸びていません。輸出は直近では伸びていますが、それほど大きなものではありません。やはりこれではまずいと思います。日本だけ、まだ安倍黒バズーカの効き目があったと思っている人がいるようですが、ウォールストリートジャーナル(WSJ)は私がこれまで言ってきたことを次のように指摘しています。

 アメリカWSJは17日、「アベノミクスが息切れしている」と題する社説を掲載しました。アベノミクスの財政出動で日本の借金はGDPの250%に近づく一方、銀行の貸し出しが増えずデフレが続いていると指摘しています。

 IMFも、日本の経済は「やや休止中」と表現しています。安倍首相はその指摘に反論したという事ですが、誰が見てもあのGDPの数字を見たら休止中と思うでしょう。物価上昇率も2年で2%ということで取り組んできて、今頃はすでに達成していないといけないわけですが、2年半経って未だ実現していません。もう少し謙虚に、なぜ伸びないのか考えるべきです。デフレの根本原因は低欲望社会です。低欲望の中で経済を伸ばすことがいかに大変なのか少しは勉強してもらいたいものです。

 安倍首相のアドバイザーなどをやっている経済学者たちも、もういい加減にちゃんとした分析をして国民に説明しないと恥ずかしい状況です。20世紀の古い経済学を振り回し、もう一発、黒田バズーカ第3弾をやれなどと言っていますが、私に言わせると少し頭がおかしいのではと思います。

 私は科学者として育ちましたが、科学的な人間から見ると、こういう時は原因を分析し、その原因を見た上で皆に説明をし、対策を考えるのが常識です。原因の分析もしないで次から次へと同じ対策をずっと繰り返していて、息切れもいいところです。そもそも最初から狙いが間違っているのです。20世紀の経済学を使っても日本のように低欲望社会が進んでしまうと、お金は全く経済には吸収されないのです。過剰な資金を投入してもどこかに行ってしまうだけなのです。この基本的な勉強をとにかくしていただかないとどうにもならないのです。

 日経新聞が金融などを除く1530社の今期の見通しをまとめたところ、経常利益率6.6%と金融危機前の2007年3月期を上回り、過去最高となる見通しです。また経常利益の合計額も、これまでの過去最高だった前期から7%近く増える見通しだということです。このように企業の方は利益を出しているということです。安倍首相は企業経営者を招いて、それを投資に回してください、給料に回してくださいと言っていますが、企業側はニタニタしながら明確な答えを避けているのが現状です。

【日本】TPP関連の政策大綱 農地の大区画化など進む?

 政府が25日にまとめるTPP関連の政策大綱で、農地の大区画化など、農林水産省の体質強化策を盛り込む見通しが明らかになりました。農地中間管理事業の対象地で農地を大区画化、汎用化することで、担い手の収益力向上を維持する狙いです。

 これは素晴らしい、農地は大区画化しなくてはいけない、などと言っている人は頭がおかしいです。主要国の平均経営農地面積を比較すると、日本は全国では1.8ヘクタールで、都府県では1.3ヘクタール、北海道だけは18.7ヘクタールです。ドイツ、フランス、英国等は40ヘクタール以上で、日本の農家を10件一緒にしてみたところで、全く及ばないのです。全国で10件を一緒にするのは至難の技ですが、そうしたところで北海道並み、しかもそれはドイツの半分以下なのです。

 大区画化すればTPPの競争力が出てくると言う考え方は、極めておかしいのです。まず世界の事実というものをちゃんと見て、大区画化などという事は意味がないのだとわかるべきです。日本が競争力を増すために農地を大区画化するのが重要だと皆が言っていますが、そういうレベルでは無いのです。このことをきちんと理解しないとダメなのです。この計画を練っている農水省や委員会の人たちは、私に言わせれば全く自分の研究をしていないと思います。比較のグラフにはオーストラリアは含まれていませんが、オーストラリアを入れるとスケールアウトしてしまうのです。

 日本は米を中心に間違った政策を長い間とってきました。1戸ずつに補助金を出したために誰も売らず、小さいままなのです。今になってみると開放が悪かったのかと思えますが、当時としては農地開放が良いことだったと思っています。しかしそこにお金を注ぎ込み、70歳の人たちが土地にしがみついている状況なので、それをいくつか出してきたところで大したものにはならないのです。こうした基本的な事実を見て政策を立てなくてはダメなのです。全く基本的事実を捉えていないと言うことがばれた例だと言えます。

【日本】企業の内部留保への課税は起こるのか?

 麻生財務大臣は20日、自民党内で企業の内部留保への課税を検討する動きがあることについて、「二重課税になり得るのは言わずもがなの話。内部留保課税の話を財務省内で検討させているという事実はない」と否定的な考えを示しました。また、菅官房長官も、「そこまでしなければ経済界のマインドが変わらないのか、政策的な議論を深めることが先決」と述べ、慎重な姿勢を示しました。

 今回安倍首相が経済界の人々を呼び、内部留保をいっぱい持っているではないかと指摘しました。内部留保は350兆円に上っています。そこで、それを使って設備投資をするか賃金として払うよう要請したのです。

 しかしこれに関しては、企業はやりたい設備投資は海外にはあるものの、国内にはなかなか考え付かないという状況です。経団連などは協力しましょうとニコニコしながら話を聞いていますが、こうした議論は間違っていると言えます。また、海外に置いている資産で、内部留保としていないものも結構あるのです。そうしたことで、内部留保に課税をするということ自体は懲罰的で、金を持っていたら殺してやるという感じにも聞こえます。

 また、高市氏と安倍首相の議論を聞いていると、これも不思議です。安倍首相は、携帯電話にお金を使っているので消費が上向かないとして、携帯電話の値段を安くしろと言いました。これをどう聞き違えたのか、安倍首相べったりのはずの高市氏は、携帯電話の安値競争が行きすぎていて、ちゃんとした価格設定になっていないと言っているのです。結果的に、安倍首相は携帯を安くしろと言ったのに、高市氏はちゃんと値段をつけろと言っているわけです。二つの話がどうつながるのか、よくわかりません。

 政府がわかりもしないのに、とっさの思いつきや会議に出た無責任な委員の意見でいちいち騒ぐのは悪い癖だと思います。今の安倍政権は基本的な安倍黒経済さえきちんと動いていないのに、電話代が高いから消費がダメだとか、法人税下げてやるから投資しろだとか、経営や経理を全く知らない人の意見を押し付けるのです。法人税を下げてやるから給料を上げろなどというのは全く漫才の世界です。法人税を下げて残るのは、内部留保と配当用の資金だけです。給料はその前に入ってくるものなので、全く理解できません。

 企業経営についてこのくらいしか知らない人たちが、ああでもない、こうでもないとやっているということなのでしょう。350兆円も貯めこんでいて守銭奴だという言葉を麻生氏が使ったことも驚きです。政治をする人も少しは経営を勉強してからものを言ってもらいたいものです。また、政治家のアドバイザーも学者ではなく、経営をした人に見てもらわなくてはダメだと思います。

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