政府は16日、国際金融経済分析会合の初会合を開き、その中で講師役の、ノーベル経済学賞を受賞しているジョセフ・スティグリッツ氏が、消費税は総需要を増加させるものではないので、今のタイミングで引き上げるのは適切ではないと指摘しました。一方、安倍首相は18日の参院予算委員会で、世界経済に不透明感が増しているとの認識を示すとともに、「経済状況を注意深く見ていきたい、経済が失速しては元も子もなくなる」と述べ、2017年4月の消費税率引き上げ再延期に含みをもたせました。
これは非常に卑怯なやり方で、ノーベル賞受賞者や、もともとの応援団のような人たちも呼んで、世界経済について意見を聞きましょうとやっているのです。そして、わざわざ世界経済について語ったはずのスティグリッツ氏までが、消費税を上げるのは今は適切ではないという話をしているのです。ノーベル賞をもらったような人がストライクゾーンに球を入れるようなことをしたわけです。飛行機代を誰が出したかにもよるのでしょうが、非常にみっともないやり方です。
それよりもさらに、出だしで黒田日銀総裁が、「不可思議なことがあります、質問していいですか」と言って、「金融政策を打っても賃上げが遅いのはどういうことでしょうか」と尋ねているのです。中央銀行の総裁が、金融政策について思ったほど効果が出ていないのはなぜでしょうかなどと聞いているのです。市中引き回しの刑だというくらい罪の重い質問でした。スティグリッツ氏がなんと言おうと、自分はこのやり方を信じているというくらいでないといけないのです。
また、安倍首相の言い方にも驚きます。経済が失速しては元も子もないと言っていますが当たり前のことです。親の恩はありがたいという言葉と同じで、当たり前すぎてなんの意味もない言葉です。ただ、安倍首相は最近まではそうは言っていませんでした。リーマンショッククラスのことが起こった場合は別として、と言っていたのですが、今回は経済が失速しては元も子もないと言い、消費税増税は延期しますと持って行きたいのです。この経済の失速は原則として過去形になっていなくてもいいのです。失速していなくても、失速するのが恐ろしいからと言えるのです。そうならば最初からそんな約束はしなければよかったのです。ダブル選挙に向けての見え見えの作戦だと言えます。
しかし、タブル選挙については非常にタイミングが悪いのです。7月に参議院の選挙をせざるを得ないわけですが、本当は8月にしたいのです。安倍首相は今回、対抗馬がいないので総裁選に受かるとして、改選された場合、オリンピックまでもつのです。2020年8月がオリンピックなので、その開会の総理を務めるためには、どうしても選挙を8月にしたいのです。つまり、目的は幾つかあり、一つは三分の二を取りながらダブル選挙することです。まず参議院選で勝つ、という目標はどこかへ行ってしまい、ダブル選挙にして、公明党と大阪維新とでどちらも三分の二以上を取ってしまおうということなのです。
そしてもう一つは、オリンピックの時の開会を宣言する首相になりたいという目的ですが、その場合選挙は8月にしなくてはならず、ダブル選挙はできなくなります。参議院選は3年と決まっているのでどういう理由が見つかるかわかりませんが、何か技術的に、ダブル選挙に持ち込む理由を探ろうと苦悶しているのです。だから歯切れも悪いのです。元も子もないといろいろ言いながら、基本的には約束していた消費税増税は延期します、そんな悪い人間なので裁いてくださいと選挙に臨むわけです。しかし増税延期でもって裁いたら、民衆は拍手を送るに決まっています。方法としては、参議院を先にやっておいて、余韻のある間に衆議院もやる、ダブル選挙だが一、二ヶ月ずらして行うとか、いわゆる小手先の議論に入ってしまっています。
このように外国の専門家を呼び、周辺を固め、世界の賢人に聞きましたところ、これはやめろということでしたと話を持って行きたいのです。実に見え見えの演技で、歌舞伎などで唸っている間にくるくると回って江戸に到着してしまったという演出と同じ感じです。また、それについて、批判もなく垂れ流ししている新聞も恐ろしいものがあると思います。
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