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2016.4.20(水)

世界に激震!「パナマ文書」の衝撃(大前研一)

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世界に激震!「パナマ文書」の衝撃(大前研一)2016/04/20(水)


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今回のテーマ

世界に激震!「パナマ文書」の衝撃(大前研一)

【世界】「パナマ文書」の衝撃 租税回避問題に潜む深い影

 パナマの法律事務所から機密の文書が流出し、各国の首脳や著名人がタックスヘイブンを利用している実態が暴露された問題で、アイスランドのグンロイグソン首相は辞任を表明しました。この文書をめぐり政府首脳が辞任を表明するのは初めてです。

 この件について、日本政府は文書を調査する考えはないとしています。パナマを使っているのはヨーロッパ系や途上国が多く、アメリカ系は英領のグレートケイマンなどが多いので、日本のお金持ちの方たちはパナマをあまり使っていなかったかもしれません。

 今回の流出元はモサック・フォンセカという巨大な法律事務所です。支店だけで35カ国あり、パナマのようなところにペーパーカンパニーを作って、資産を隠蔽するという事務所です。パナマの大統領もここの関係者であると言われています。その事務所から、過去40年に及ぶ1150万件のEメール、財務情報、銀行口座情報が流出してしまったのです。

 南ドイツ新聞にこうした情報に興味はあるかというメールが届き、一体誰なのかと記者が尋ねると、自分は何者でもないと言ったというそのやり取りからスタートし、1年間に渡ってこれだけの多くの情報が送られました。200カ国、地域から登記された、21万4000件のオフショア法人が含まれ、南ドイツ新聞はびっくりして、これを自分たちで分析したら嘘だと言われる可能性があるので記者連合に委託し、手分けをして1年間かけて分析したのです。

 しかもその量は2.7テラバイトというから半端ではありません。140名の政府首脳級のほか、大富豪、スポーツ選手、テロ組織がリストアップされ、北朝鮮関係や、麻薬組織やイランなど、アメリカの制裁対象となっている組織や個人が入っています。ほかにもHSBCやUBSなど500を超える金融機関も含まれ、本当に半端ではない代物なのです。

 登場した人たちは、アルゼンチン大統領のマクリ氏本人や、アイスランドの首相本人、サウジアラビアの国王本人も入っていますが、国王に関してはお金を持っていてもおかしくはありません。ほかにもウクライナのポロシェンコ大統領なども入っています。そして習近平氏も、彼の妻の兄が実名で出てきてしまっています。

 さらに一番おかしいのはプーチンです。リストにあるのは古い友人の音楽家とされていますが、音楽家がなぜ2200億円も持っているのか不思議です。結局これはプーチンに対して賄賂を与えるので雑に扱える友達ということでしょう。プーチンは運悪くこのことがあった翌日に国民との対話が設定されていて質問をされたわけですが、「あれは古くからの友人で、音楽家で素晴らしい人だ、彼は海外で楽器を買ってロシアに持ち込んで、それをみんなに分けるということをしている」と語っています。しかしストラディバリウスを1000台買ってもそこまではいかないはずです。プーチンも非常に苦しい言い訳をしていました。

 また、アサド氏などは自分の国の人間を多数殺しておいて、何をやっているのかという気がします。イギリスのキャメロン首相は失敗しました。3回も違うと言っておいて、4回目に実は父親のお金があり、自分も35000ポンド持っているとし、税金は非課税国なので払っていないと言い出したのです。さらに元エジプト大統領のムバラク、マレーシアのナジブなどは息子の名前が出てきていますが、本人も2000億円ほどポケットに入れたと言われています。ほかにもメキシコ大統領のペーニャ・ニエト氏や、パキスタン首相のシャリフ氏など、オンパレードです。しかし、意外にアメリカ、日本、オーストラリアなどは出てきていません。

 この文書に登場するペーパーカンパニーの数を見ると、10万社を超える数に上っています。多くはヴァージン諸島、パナマ、ほかにはバハマ、セイシェル、ニウエ、サモアなどにあります。一方、文書に登場する仲介業社の所在国を見ると、香港には業者だけで37000社、スイスには34000社、英国には32000社もあります。これは確かに凄まじいものであり、今後数年に渡って相当多くの国に影響が出てくると思います。

 イギリスの場合には、キャメロン首相はもうもたないと思います。ちょうどEUに残るかどうかの投票を6月に控えていて、ついでに総辞職して選挙に向かうべきだと言われるほど、キャメロン氏への信用はなくなってしまっています。特に彼は税金問題を取り上げていて、タックスヘイブンは止めろと叫んでいた張本人なので、より厳しい批判にさらされるでしょう。

 こうした文書は今回に止まらず、今後も次々に出てくると思われますが、今のところ中国ではこの問題にとても神経質になっていて、このことを検索しようとしても弾かれてしまうように統制しています。NHKの番組を見ていても、この問題に触れると見られないようになっています。いつも雄弁な報道官も、ノーコメントの一点張りです。習近平氏の奥さんの兄がリストに載っているなど、確かにコメントしようがありません。

 この問題はCIAの文書などに比べても情報が膨大で、世界中の政治家その他が関係しているので、今後も半年から一年は影響が続くと思います。約50あるタックスヘイブンのうちの1つの法律事務所でこれだけなので、他の法律事務所からも出てきた場合にはもっとすごいことになる可能性があります。ただその結果として、こういうことはもう止めさせようということになり、全てコンピュータなどを使って透明にするところまでいかないと良くならないでしょう。

 日本のように税金の高い国は特にこうしたところへ行きがちですが、日本人は意外にそうは向かっていないようです。しかし税金が比較的低い国からもこうしたところへ逃げているのが現状です。また中国の場合は何れにしても国家の要人でも国家から逃げ出したいと思っている国なので、起こりうることでしょう。習近平氏の次にナンバー5とナンバー7が連座していることがすでに明らかになっていて、中国も救いがたい状況になっています。

【EU】ウクライナの連合協定めぐり国民投票 オランダで反対60%

 EUとウクライナが結んだ連合協定の是非をめぐる国民投票が6日、オランダで行われ、反対が60%と、賛成を上回る見通しです。

 これはロシアに対する制裁に対して、オランダは農作物などの輸出もあり関係が密であっただけに、経済的に打撃が大きいということで、このEU案には反対の立場が多く、60%が反対したということです。ロシアと寄りを戻そうという考えの人が多くなっているわけです。

 これは放っておくと意外にその方向に向かうと思います。ロシア側は他の国から輸入すれば間に合うということでなんとかやっているのです。ロシアは制裁によって困ってはいますが、実際にはその影響よりも油の値段が安いことの方が大きな問題なのです。ただ今回オランダが反対という結果になり、EUの結束がおかしくなることも予想されます。

【EU】英国EU残留世論調査 残留51%、離脱49%と拮抗

 英インディペンデント紙がまとめた世論調査によりますと、イギリスがEUに留まるべきと考えているイギリス人の有権者は51%、離脱は49%でした。

 この結果が投票までに、キャメロン首相のパナマ文書の影響を受けて、離脱の方に傾く可能性が高そうだと思います。ただ、離脱ということが投票で決まれば簡単に離脱できると思われていますがそうではなく、実際は最短でも2年かかります。

 かつてはグリーンランドの事例があります。グリーンランドはデンマークの一部ですが、自立権が与えられていて、デンマークとは異なり、離脱したいと言いました。小さな地域で人口も少ないのですが、離脱には3年かかっています。

 イギリスの場合を色々と分析してみると、最低2年かかることはわかっていますが、場合によっては8年から10年もかかるとされています。実際に離脱するまでにそれほどかかるとすると、イギリスに行っていた多国籍企業も危ないと思って大陸に移ってしまう可能性もあり、そのうちにイギリスはやっぱり離脱はやめたと言ってまた再投票することも考えられるのです。

 中途半端になるとどっちに行くかわからないものに投資などできないので、イギリスに対する投資は10年間止まってしまうことにもなりかねません。手続きにそれほどかかるということをまだみんな知らないのです。きちんとこのプロセスを説明し、時間がかかるという話になれば、全く活動が止まってしまう可能性もあるので、やめておこうということになると思います。キャメロン首相も頭が冷えた時には、この説明をやったらいいと思います。

講師紹介

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大前 研一
4月10日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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資産形成力養成講座 加藤

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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!