グローバル・マネー・ジャーナル

2016.5.18(水)

日産・三菱買収劇に見る投資戦略(大前研一)

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日産・三菱買収劇に見る投資戦略(大前研一)2016/05/18(水)


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今回のテーマ

日産・三菱買収劇に見る投資戦略(大前研一)

【日本】燃料代、軽自動車税など差額補償~三菱自、日産~

 燃費データの不正問題で三菱自動車と日産自動車は9日、対象車を保有する顧客に燃料代や軽自動車税等の差額を保障する方針を固めました。また、日産が約2000億円を投じ、三菱の3割余りの株式を取得することでも合意しました。

 今回の買収劇は、放っておいたら私が以前話したように、中国の東風や第一汽車が買いたいと名乗り出ます。将来の排ガス規制なども含め、中国の会社は技術的に非常にトラブルを抱えているからです。他には、アメリカのグーグルやアマゾン、テスラも含め、自動運転車、電気自動車に関わる企業が実際に製造を担う企業が欲しいということで、三菱に声がかかることも考えられます。そして、当然今まで関係が深かった日産、という三つの候補が考えられたわけです。確実に売りに出た、一、二ヶ月でトラブルになるという事態になれば、必ずこのどこかが入ってくると思っていました。ある雑誌にそのことを書きましたが、それが出される前にこの事態となったのです。

 日産ゴーン氏はさすがです。風と共に去りぬ、と言うほどにあっという間に名乗り出ました。その理由は、今34%の株式を2000億円で取得できるとすると、日産にとっては非常に安いものだからです。国内の軽自動車販売台数では三菱はそれほど多くありませんが、日産は10%以上のシェアを持っています。実はこの分は三菱が作っているのです。この軽自動車は日本にしかないセグメントですが、世界での影響を見ると、日産と三菱を合わせると自動車販売台数は950万台になり、GMやフォルクスワーゲンが射程距離に入ってきます。野心家のゴーン氏にしてみると、世界のトップスリーに並ぶ、千載一遇のチャンスなのです。三菱は腐っても鯛で、少なくとも100万台は売っている企業なのです。

 さらに、三菱自動車が売れている場所、地域別の販売台数をみると、その他欧州やその他の地域が多いのです。ゴーン氏はロシアが頭にあり、すでにルノー日産は、ロシアの大手自動車メーカー、アフトワズの株を50%持っています。しかしロシアではパジェロなど、三菱のブランド認知度が高いのです。三菱のランサーやパジェロは、パリダカールラリーでいつも勝ってきた車です。そして、ロシアはモスクワの外へ出るとまさにパリダカール状態、全土がダカールのような土地なのです。

 そのことから、ロシアでは三菱車のランサー、パジェロに対する信頼が厚いのです。三菱は早とちりで、パジェロの生産をやめると言っていますが、ゴーン氏は必ず復活させると思います。ゴーン氏は日産のZなどに憧れて育っているので、Zを復活させた経緯もあります。パジェロは止めると発表されていて、新型の開発もすでにやめているわけですが、ゴーン氏が必ず復活させるでしょう。ロシアはパリダカ的な国内なのでパジェロへの評価が高く、日産はそのロシアで最大のアフトワズを経営しているのです。

 また、実は三菱はルノーの競争相手であるプジョーシトロエンとロシアで協業しています。ゴーン氏は複雑な人なので、もしかするとそのままにして、プジョーいじめに使おうと思うのか、またはその提携を切らせて、自分たちの陣営に入れてやろうと思うのかどちらかになりますが、ロシアでは圧倒的に強くなるでしょう。

 さらにインドネシアなどへ行くと、三菱ブランドはダイムラーの傘下になったトラックはもちろん車も非常に人気があります。かつて工場を持っていたオーストラリアなどでも三菱は善戦しており、日産ルノーができてないところが強いという意味で、相性は抜群だと言えるのです。

 今回34%の株式を取得するわけですが、燃料不正の問題については金を支払わなくてはならなくなります。20%の燃料分で5年前に購入した人にはその差分を支うということで、膨大なロスになります。しかし、このロスは三菱に払わせるのです。そうすると、日産が買ったことで高騰している株は、この支払いをさせることによって下がり、もしかしたらそれによって破綻するかもしれません。日産はその時に全部買うと思います。ゴーン氏とはそういう男なのです。

 今の段階で唾を付け、誰も入っては来れません。拒否権のある34%を取得したからです。三菱の商事、銀行、重工なども皆日本の貴族のようなもので甘いのです。レバノンのゴーン氏にやり方で敵うわけがないのです。三菱に不正の支払いは全部払わせる、そのために上場を維持させているのです。安いのでこの値段で全部買ってもいいところを、さらにこの後地獄を見た時に全部買うという戦略なのです。

 三菱のブランドを残すと言っているのもその戦略の中では当たり前と言えます。インドネシアやロシアでは三菱でなくてはだめだからです。三菱ブランドは変わったところに行くと変わった強さを持っているのです。オーストラリアでも工場があった影響で知名度が高く、私自身もオーストラリアで危険なところへ行った時、パジェロに乗っていたおかげで救われたことが何度もあります。水の深いところを越えていく時などもこの車に限るので、オーストラリアに3台目のパジェロを持っているほどです。

 何れにしてもゴーンの発想とはこういうもので、わかると簡単です。日産は三菱の3倍軽自動車を売っていますが、その弁償は全て三菱に出させ、自分で株を買っておいてその株価を下げるようなことをするわけですが、この34%は他の人に手を出させないためです。その状態でぐしゃぐしゃにして安い時に残りを買う、これが中近東で育ったゴーンという人間の発想であり、ビジネスとはだいたいそういったものなのです。

【世界】パナマ文書 約21万社のペーパー会社情報を公開 ~ICIJ~

 ICIJ国際調査情報ジャーナリスト連合は10日、租税回避地の利用実態を示したパナマ文書に関連し、約21万社のペーパーカンパニーに関する情報を公開しました。カンパニー設立に関与した個人や企業の所在地は中国が突出して多く、また取引の多くが香港やスイスを経由しているなど、世界に広がる節税網の実態が明らかになりました。

 主要国のペーパーカンパニー設立者数は、中国が群を抜いています。2位の香港を中国と合わせて考えると圧倒的な数です。これらの会社が基本的に中国の中にいろいろな支店を持っていたことから見ても、大変な実態です。習近平氏も非常に神経を尖らせています。

 主として中国、その他にいわゆる独裁国家、ロシアやシリアなども上がっていますが、こうしたことで中国の影響がいかに大きいか、中国の人がいかにこうした隠しどころを必要としていたかがよくわかります。一方、日本はいろいろな名前が出ていますが、大したことはありません。金持ちの三木谷さんや孫さんは出てきていますが、中国に比べたら非常に小さい印象です。

【中国】習氏への権力集中一段と

 日経新聞は14日、「文革から50年、中国政治、強権化進む」と題する記事を掲載しました。文化大革命から50年が経過した現在、中国政府では習近平氏への権力集中が、個人崇拝の色彩を帯びて進むと指摘しています。

 企業家でも雑誌社でも、習氏について少しでも変なことを書いたり、今回のパナマ文書について報告をしようとしたりしたところを含めて、非常に大きな粛清をされています。習近平氏は少なくとも、トウ小平以降、江沢民や胡錦濤などいろいろな人が出てきましたが、これまでに見られなかったほどに独裁的思考が強く、そのアプローチは金正恩と非常に似たものになってきていると思います。

 金正恩のように大砲で処刑するようなやり方はしませんが、一年間の観察処分などとすれば、その人の人生は終わったも同然です。今週にも相当なチャージで取り締まられた人が出ていて、基本的に習近平氏はかなり強権型であり、トウ小平以降こういうタイプの人は出てきていないので、毛沢東の文革以来ではないかと言われているのです。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
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5月15日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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資産形成力養成講座 加藤

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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!