必ずしもと言うより、全く認識が一致しなかったということです。この人はどうかしているのではないかと、イギリスのザ・タイム紙では、「安倍首相に誰も賛同せず」というタイトルがトップニュースになっています。リーマンショック前に似ているなどと、影響力のある政治家が言うのは極めて不謹慎です。まず、そのこと自体がパニックを生むことにつながります。この人は自分たちが知らないことを知っているのではないかと不安になるからです。
ただ、彼が使ったチャートなどを見ると、リーマンショックとは何だったのかということさえわかっていないことは明らかです。サブプライムで返済不能のものがアメリカの金融機関に相当溜まっていたというのがショックの原因であり、今回は現象を見るとよく似ていると言っているに過ぎず、原因として不良債権が溜まりまくっているという話ではないのです。安倍総理はリーマンショックそのものがなぜ起こったのかさえ、全く理解していないということです。IMFのラガルド専務理事も苦笑している感じでした。手をつけられないほど認識がおかしく、安倍総理の鈍感力も世界的に有名になったと思います。
それと同時に、世界中はこれに合意しろなどとはびっくりしたことでしょう。しかも、G7を引きずり込みながら参議院選挙対策をしたのです。自分たちが増税延期をするのはリーマンショッククラスの経済問題と3.11クラスの自然災害と言っていて、どちらも関係ないので敢えてリーマンショック前に似ていると言ったのです。国内問題である増税回避のための処理を、G7という場を使ってやろうとしたわけで、とても人騒がせな話です。
G7首脳宣言では、安倍総理としては財政戦略が必要だということを盛り込もうとしましたが、ドイツなどにはすっかり見透かされています。テロ対策は各国がやろうといったものの、具体策についてはトルコとドイツなどが合意せず、一方、安倍総理は中国への牽制から南シナ海の状況を言いたかったようですが、他の国はあまり関心がないという状況でした。世界経済の新たな危機回避へ政策総動員という内容がありますが、これは逆に聞いた人がパニックになる程ポイントがずれていたもので、ある意味恥ずかしい展開でした。
ただ、安倍総理的に言えば、首脳全員を伊勢神宮に連れて行ったことは嬉しかったことでしょう。オバマ大統領を広島に連れて行ったこと、これも嬉しかったことでしょう。そうした枝葉末端の部分では、安倍総理の個人的なアジェンダは全てこなしたと言えるでしょう。メインの部分ではポイントがずれまくり、尊敬は得られなかったということだと思います。
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