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2016.6.8(水)

消費増税2年半先送りに見る今後の行く末(大前研一)

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消費増税2年半先送りに見る今後の行く末(大前研一)2016/06/08(水)


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今回のテーマ

消費増税2年半先送りに見る今後の行く末(大前研一)

【日本】消費増税2年半先送りに見る今後の行く末

 安倍総理が28日、2017年4月に予定する消費税率10%への引き上げについて、2019年10月まで2年半先送りする意向を政府与党幹部に伝えたことがわかりました。景気に配慮するとともに、2019年夏の参院選への影響を回避する狙いとみられ、政府与党は今後、調整を本格化する見通しです。

 安倍総理の鈍感力はすごいです。この期に及んで、まだ補正予算を組もうとか、とにかく財政を改善しないといけないという時に、この提案です。しかも民主党と合意して民主党が解散総選挙になり大敗したその時に、10%への増税は約束しているのです。それを一度引き伸ばし、また今回引き伸ばすということは、財政再建には興味がないということなのです。世界中がどう受け止めるか、最終的にはマーケットがこういう日本の態度を制裁すること以外にないと思います。安倍総理は鈍感なので、そのアドバイザーはもっと鈍感で、この問題は市場が制裁するまで、彼らはこんな呑気なことを続けていくのでしょう。

 一方、参議院選挙ではなぜ増税かという説明がないので、当然国民は増税に反対します。民進党も増税先送りを提案しています。与党は、私たちが増税を先送りしたので、選挙では私たちに投票してくださいというつもりでしたが、民進党に先を読まれて増税反対を言われてしまいました。これにより、参院選で与党が増税延期で有利になるということはなくなるのではないかと思います。国民を含めて増税反対と言っているわけですが、将来世代に対してどう対処するのかということは誰も考えていません。総無責任体制の中、こういうことが起こってしまっているのです。先送りを決めても、参院選への影響もあまりないだろうと思います。

 その中、伊勢志摩サミットが27日、共同宣言を採択して閉幕しました。これは世界経済の見通しに対する下方リスクが高まってきているとし、新たな危機回避に向け、全ての政策対応を行うとしたものですが、「リーマンショック前に似ている」などとする安倍総理の見解について、会議では必ずしも認識が一致しなかったということです。

 必ずしもと言うより、全く認識が一致しなかったということです。この人はどうかしているのではないかと、イギリスのザ・タイム紙では、「安倍首相に誰も賛同せず」というタイトルがトップニュースになっています。リーマンショック前に似ているなどと、影響力のある政治家が言うのは極めて不謹慎です。まず、そのこと自体がパニックを生むことにつながります。この人は自分たちが知らないことを知っているのではないかと不安になるからです。

 ただ、彼が使ったチャートなどを見ると、リーマンショックとは何だったのかということさえわかっていないことは明らかです。サブプライムで返済不能のものがアメリカの金融機関に相当溜まっていたというのがショックの原因であり、今回は現象を見るとよく似ていると言っているに過ぎず、原因として不良債権が溜まりまくっているという話ではないのです。安倍総理はリーマンショックそのものがなぜ起こったのかさえ、全く理解していないということです。IMFのラガルド専務理事も苦笑している感じでした。手をつけられないほど認識がおかしく、安倍総理の鈍感力も世界的に有名になったと思います。

 それと同時に、世界中はこれに合意しろなどとはびっくりしたことでしょう。しかも、G7を引きずり込みながら参議院選挙対策をしたのです。自分たちが増税延期をするのはリーマンショッククラスの経済問題と3.11クラスの自然災害と言っていて、どちらも関係ないので敢えてリーマンショック前に似ていると言ったのです。国内問題である増税回避のための処理を、G7という場を使ってやろうとしたわけで、とても人騒がせな話です。

 G7首脳宣言では、安倍総理としては財政戦略が必要だということを盛り込もうとしましたが、ドイツなどにはすっかり見透かされています。テロ対策は各国がやろうといったものの、具体策についてはトルコとドイツなどが合意せず、一方、安倍総理は中国への牽制から南シナ海の状況を言いたかったようですが、他の国はあまり関心がないという状況でした。世界経済の新たな危機回避へ政策総動員という内容がありますが、これは逆に聞いた人がパニックになる程ポイントがずれていたもので、ある意味恥ずかしい展開でした。

 ただ、安倍総理的に言えば、首脳全員を伊勢神宮に連れて行ったことは嬉しかったことでしょう。オバマ大統領を広島に連れて行ったこと、これも嬉しかったことでしょう。そうした枝葉末端の部分では、安倍総理の個人的なアジェンダは全てこなしたと言えるでしょう。メインの部分ではポイントがずれまくり、尊敬は得られなかったということだと思います。

【日本】「地方創生」尻すぼみ その要因とは?

 日経新聞は21日、「地方創生、尻すぼみ」と題する記事を掲載しました。これは、政府が20日、地方創生の新たな基本方針の素案を公表したことを紹介していて、地方創生は安倍総理が2014年、政権の目玉に掲げたテーマですが、現在は一億総活躍社会の実現に押されて注目度が低下、東京への一極集中の是正などの目標も達成の見通しは立っておらず、政府与党内では尻すぼみと指摘する声も上がっているとしています。

 これは、ジャーナリストが悪いのです。地方創生など、今の法律でできるわけがないのです。そこに1000億円程度突っ込んでみても、お笑いに過ぎません。地方創生をやろうと思ったら、基本的に地方の自立を妨げている法律、憲法8章からスタートする全ての、中央省庁が全部仕切っているという問題を直さないといけません。ここに着手せず、言葉だけで地方創生と言っているのでは、ふるさと創生と変わりません。クーポンを配ったというところもあります。

 これでは地方創生はうまくいかないと思いますが、同様にアベノミクスも惨敗、そしてアベノミクス第二弾が出てきて、今度は標語としていつの間にか一億総活躍社会が出てきて、とよくわからないうちに蜃気楼のようにフワフワと移っていきます。これが安倍総理の政策の特徴と言えます。一度でもいいから、何か一つでもできたのかと、反省する癖があると良いのですが、その都度新しい言葉を言い出して、今では一億総活躍すれば全て解決するでしょうと言うのです。

 しかしその一億総活躍の内容を見ても、保育園の問題をなんとかしましょう、女性の社会参加をなんとかしましょうなどと言っていますが、強力な具体案が何もないわけです。全て言葉だけでやってきて、最後にはリーマンショック前の状況だなどと言い、みんなに恐怖感を与えたわけですが、つまりは民進党岡田氏が言ったように、アベノミクスは失敗したと言った方が早いのです。これについては民進党の岡田氏が珍しく100%正しいことを言ったと思います。

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5月29日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!