今回はイギリスがEUにはいなくなるので、スコットランドのEU加盟を反対する側には回れないのです。そうなると脅しが効かず、スコットランドはこの機に独立すると思います。EUに入れば、アイルランドと同じようにEUにいる良さを享受できるのです。さらにウェールズも、イングランドに征服された歴史を考えると、独立運動が再び始まるだろうと思います。
そして、もし本当にグレートブリテンがEUを出た場合、もっと問題なのは北アイルランドです。北アイルランドは元々カトリック系の人たちがいたアイルランドをイギリスが征服し、イギリス国教の人たちを人口の半数になるほど送り込んで大混乱を起こし、長い間IRAなどがテロ活動を続けていました。これがようやく十数年前に和平交渉が行われ、今は平穏になっています。ところが、こうなってくると北アイルランドもやはり独立運動をするでしょう。その理由は、北アイルランドがEUでなくなると、アイルランドとの国境のパスコントロール、通関が必要になります。北アイルランドとアイルランドの間に国境ができて自由に出入りができなくなるのは、同じアイルランド人から見ると冗談じゃないという状況でしょう。スイスなどはEUに加盟していませんが、シェンゲン協定に入れてもらっていますので、そこだけ移動の自由を守るという方法もあるのでしょうが、国境を設けてしまうのが普通でしょう。
こうしたことから、北アイルランドは独立してEUに入る、あるいは元々征服される前はアイルランドなので、アイルランドと合併する、という動きが出てくるでしょう。しかしこれはものすごく血を見ることになります。なぜなら、何百年も前にイングランドの人たちが送り込まれ、入植してしまっているからです。こうして、いわゆるブリテンの崩壊が起きると考えられるのです。またさらにロンドン市民は、イングランドから切り離して自分たちだけでもEUに残りたいと言っています。金融センターのポジションを確実にフランクフルトに奪われるという心配があるからです。このように、心理的に追いかけてみると、この後どこで止まるかわからない状況です。
グリーンランドの例から見ると、交渉には何年もかかるということですが、EU側はとにかく早く片付けないと大変なことになると危惧しています。そしてEUに残っている側もイギリスが投票をしたことを受けて、動き出す可能性もあります。例えば一番近くのデンマークなどは、北の豊かな国が南の貧乏な国を援助するという構図を嫌がり、EUを出たいと思っている人が結構多いのです。
ハンガリーでもそうした運動をしてきていますが、こちらは貧乏な国なのであまり影響はなさそうです。しかしデンマークのようなところが出て行くことになると、だんだんと残った国、特にドイツの負担が大きくなるでしょう。メルケル首相はキャメロン首相に対し、なぜあんなバカなことをやったのかと、大変に怒っていると思います。若い人たちがそれほどEUに残りたがっていることがわかっていれば、この結果は変わっていたと思います。残念ですが、キャメロン首相をはじめ、残留部隊の人たちの洞察、キャンペーンが全く下手だったということです。
何れにしても、イングランドは人口的にも経済的にも圧倒的に大きく、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドと続きますが、イングランドはEUを去り、他のところは独立運動をするということになります。実際、ベネルクスの例を見ると、ルクセンブルクにしても小さい国ですし、独立してEUに加盟してもおかしいことではありません。検討されているクロアチア、またコソボなどは人口数百万人規模であり、独立して小さくなってもEUのメンバーとなる事例はいくつもあります。
ここから先は全く予想不能と言えます。再投票に関しては、こうまでして再投票となったら誰もイギリスを相手にしなくなるので非常に難しいと思いますが、進むも地獄、戻るも地獄という事態になっています。
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