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2016.6.29(水)

BREXIT後の世界 グレートブリテンの崩壊!?(大前研一)

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BREXIT後の世界 グレートブリテンの崩壊!?(大前研一)2016/06/29(水)


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今回のテーマ

BREXIT後の世界 グレートブリテンの崩壊!?(大前研一)

【英国】BREXITが確定 地域・年代で大きく違う意見

 EU離脱の是非を問う国民投票が23日イギリスで行われ、離脱支持が過半数に達しました。これを受けて、残留を訴えてきたキャメロン首相は10月までに辞任する意向を表明、その後新しい首相がEUとの離脱交渉の開始を判断することになりますが、離脱すればイギリス、EUとも影響力の低下は必至で、国際情勢や世界経済とともに不安定化する懸念が広がっています。

 まず、どういう状況だったのかを確認すると、ある程度僅差と言われていましたが、かなりの差がついています。しかし、地域別の結果を見ると、スコットランドや北アイルランドは残留支持が多かったようです。スコットランドは残留が62%、北アイルランドは残留が55.8%に上ります。一方、ウェールズは残留が47.5%で離脱が52.5%です。イングランドが離脱53.4%と、ロンドン以外のイングランドが主として離脱をリードしたわけです。

 ショックな結果ですが、世代別の投票結果では、18から24歳の若い人たちが74%と圧倒的に残留を希望しています。グラフで見ると、44歳くらいまでは残留が圧勝で、それより上の世代では次第に離脱が多くなっています。実は、イギリス人もこのことを知りませんでした。この結果が出てきて、年寄りで離脱に投票した人は、若い人に対して悪かったと言っています。若い人たちがそれほどEUと一緒にやっていくことを望んでいるのなら、自分たちが離脱に投票するべきではなかったと思っているのです。

 今回、キャメロン首相は経済的なインパクトについて主張していましたが、むしろ精神的に、若い人たちが残留を望むのなら、イギリスの将来のために残留しようという議論をしたほうがよかっただろうと思います。これほど世代的に大きな差が出てくるとは、イギリス国民は予想だにしていなかったのです。自由になるべきだとか、今日が独立記念日だとか、いろいろと言っていますが、今後予想される様々な困難を見た時に、そのまま留まっていればよかったと今になって思っている人が多いと思います。若い人たちの希望を裂いて悪かったと思っている感じが見られます。

 イギリスの輸出相手国を見ると、やはりEUが圧倒的に多く、ここで関税がかかることになると大きな影響が出てくるでしょう。産業界はこのことが一つの理由で離脱に反対していたわけです。EUは単一市場ということで、物も人も自由に移動できるので、実は数十万人のイギリス人が今EUに住んでいます。その人たちは移動の自由がなくなるので帰らなくてはなりません。一方イギリス側は、イギリスに住んでいるEUの人たちを帰さないと思うので、その辺りの扱いが非常に難しいだろうと思います。また、法律についてもEUと調和を図ってきた経緯があるので、今後はイギリス国内の法律も含めて検討が必要になるでしょう。

 ドイツのメルケル首相もフランスのオランド大統領も、イギリスに対し、早く出るなら出ろ、こんな中途半端な状況を何年も続けられたら困ると言っています。キャメロン首相は29日に出向いて離脱の意向を伝えるわけですが、実際申し込むのかどうかについて、EU側は早く申し込んで欲しいという態度なのです。残ったEU側は、今回のイギリス離脱に対して非常に冷たい対応です。キャメロン首相は今回、やる必要のないことをやってしまったのです。この国民投票は、やる必要は全くないことでした。スコットランドの時もやる必要がないのにキャメロン首相は投票をやり、ギリギリのところで留まったわけですが、今回も同様にやらなくていい投票をやったのです。

 この投票は選挙の時に彼が約束したものですが、やる必要がないだけでなく、実は法的拘束力もないのです。もしこの後、議会で残留を決めれば、残留となるものなのです。ただしそれをすればキャメロン首相は嘘つきだとなり、イギリスの中も混乱します。ここから先どのように動くかについては、投票結果を全く無視することや、議会で反転することなど、いろいろと可能性はあるのです。しかし今回は国を二分してしまい、ボリス・ジョンソンなどが離脱側に回って保守党の中でも割れてしまっている状況です。

【英国】BREXIT後のグレートブリテンは解体へと向かうのか?

 いわゆるグレートブリテンの地図を見ると、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドで構成され、いずれもイングランドが征服してきた経緯があり、古い歴史があります。問題はまず、スコットランドの動向です。以前独立投票をした時に、彼らは独立した後でEUに加盟しようと思っていたのです。EUに入れば今のアイルランドのように調子よくやっていけるだろうと思ったのです。しかし、EUには全部の国が合意しないと入れないので、イングランドは、独立したら加盟に反対してEUには入らせないと脅し、独立の動きに歯止めがかかったのです。

 今回はイギリスがEUにはいなくなるので、スコットランドのEU加盟を反対する側には回れないのです。そうなると脅しが効かず、スコットランドはこの機に独立すると思います。EUに入れば、アイルランドと同じようにEUにいる良さを享受できるのです。さらにウェールズも、イングランドに征服された歴史を考えると、独立運動が再び始まるだろうと思います。

 そして、もし本当にグレートブリテンがEUを出た場合、もっと問題なのは北アイルランドです。北アイルランドは元々カトリック系の人たちがいたアイルランドをイギリスが征服し、イギリス国教の人たちを人口の半数になるほど送り込んで大混乱を起こし、長い間IRAなどがテロ活動を続けていました。これがようやく十数年前に和平交渉が行われ、今は平穏になっています。ところが、こうなってくると北アイルランドもやはり独立運動をするでしょう。その理由は、北アイルランドがEUでなくなると、アイルランドとの国境のパスコントロール、通関が必要になります。北アイルランドとアイルランドの間に国境ができて自由に出入りができなくなるのは、同じアイルランド人から見ると冗談じゃないという状況でしょう。スイスなどはEUに加盟していませんが、シェンゲン協定に入れてもらっていますので、そこだけ移動の自由を守るという方法もあるのでしょうが、国境を設けてしまうのが普通でしょう。

 こうしたことから、北アイルランドは独立してEUに入る、あるいは元々征服される前はアイルランドなので、アイルランドと合併する、という動きが出てくるでしょう。しかしこれはものすごく血を見ることになります。なぜなら、何百年も前にイングランドの人たちが送り込まれ、入植してしまっているからです。こうして、いわゆるブリテンの崩壊が起きると考えられるのです。またさらにロンドン市民は、イングランドから切り離して自分たちだけでもEUに残りたいと言っています。金融センターのポジションを確実にフランクフルトに奪われるという心配があるからです。このように、心理的に追いかけてみると、この後どこで止まるかわからない状況です。

 グリーンランドの例から見ると、交渉には何年もかかるということですが、EU側はとにかく早く片付けないと大変なことになると危惧しています。そしてEUに残っている側もイギリスが投票をしたことを受けて、動き出す可能性もあります。例えば一番近くのデンマークなどは、北の豊かな国が南の貧乏な国を援助するという構図を嫌がり、EUを出たいと思っている人が結構多いのです。

 ハンガリーでもそうした運動をしてきていますが、こちらは貧乏な国なのであまり影響はなさそうです。しかしデンマークのようなところが出て行くことになると、だんだんと残った国、特にドイツの負担が大きくなるでしょう。メルケル首相はキャメロン首相に対し、なぜあんなバカなことをやったのかと、大変に怒っていると思います。若い人たちがそれほどEUに残りたがっていることがわかっていれば、この結果は変わっていたと思います。残念ですが、キャメロン首相をはじめ、残留部隊の人たちの洞察、キャンペーンが全く下手だったということです。

 何れにしても、イングランドは人口的にも経済的にも圧倒的に大きく、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドと続きますが、イングランドはEUを去り、他のところは独立運動をするということになります。実際、ベネルクスの例を見ると、ルクセンブルクにしても小さい国ですし、独立してEUに加盟してもおかしいことではありません。検討されているクロアチア、またコソボなどは人口数百万人規模であり、独立して小さくなってもEUのメンバーとなる事例はいくつもあります。

 ここから先は全く予想不能と言えます。再投票に関しては、こうまでして再投票となったら誰もイギリスを相手にしなくなるので非常に難しいと思いますが、進むも地獄、戻るも地獄という事態になっています。

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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!