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2016.7.13(水)

英国が享受するEUからの恩恵と進むべき道(大前研一)

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英国が享受するEUからの恩恵と進むべき道(大前研一)2016/07/13(水)


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今回のテーマ

英国が享受するEUからの恩恵と進むべき道(大前研一)

【英国】EU加盟により受けている様々な恩恵

 もしも、私がイギリスの次の首相なら、EU離脱後のイギリスをどのように成長させるかということを考えてみたいと思います。

 EUは先月28日の首脳会談で、イギリスの離脱をめぐる交渉を、9月以降に先送りすることを容認しました。また、キャメロン首相の後任を選ぶ与党保守党の党首選挙への立候補が先月30日締め切られましたが、離脱派のリーダーだったジョンソン前ロンドン市長は出馬を見送りました。

 EUは先月29日に開いた首脳会談で、ヨーロッパの単一市場に参加するには労働者の移動の自由を認める必要があるとの原則を確認しました。離脱により移民の流入を抑えつつ巨大市場との自由貿易を維持したいイギリスに対し、いいとこ取りを認めない立場を示したものです。

 アイルランドの外務省は先月27日、アイルランドのパスポートを取得するためロンドンのアイルランド総領事や北アイルランドの郵便局に、イギリス人が押し寄せていると発表しました。

 アイルランドとイギリスは共通の旅行領域を維持していて、ドイツやフランスで入国審査済であっても、イギリスまたはアイルランドに入る時はもう一度チェックを受けることになります。つまりシェンゲン協定に入っていないのです。アイルランド人と結婚しているイギリス人は結構多く、北アイルランドの人々はもともとアイルランド人の人も多いのです。

 そうした点で、イギリスが離脱するのなら、アイルランドは絶対に離脱しないので、2つのパスポートを持っておこうという考えなのです。フランス等に5年以上住んでいる場合も、2つのパスポートは取れますが、イギリスが離脱するのならイギリス以外のパスポートを持っておいた方が良いと言う動きに出ているわけなのです。イギリスのEU離脱はこれほどまでに多くの人々に個人的なレベルでも影響を与えていると言えます。

 北アイルランドの人口は185万人、アイルランド共和国は350万人程の人口があります。ウェールズは300万人、スコットランドは500万人、そしてイングランドが5500万人です。首都ロンドンは850万人という規模です。今回の投票結果をおさらいすると、イングランドが離脱に賛成していて、ロンドンはそれに反対していると言う状況です。年齢別では若い人ほど残留を支持し、歳をとるほど離脱を支持していました。この状況を見たお年寄りの中には、若い人のための未来を我々が決めてしまってはよくないと反省している人もかなりの数いると言われています。このことが重要なポイントになるでしょう。

 産業界の意見を見ると、離脱を支持している団体が非常に少ないことがわかります。企業の意見を見ると、EU加盟の恩恵を受けているのは大企業や金融業界であり、一方、他の小規模事業者や低所得層、年金世代などは割を食っているということです。EUが直面する課題についてのアンケートでは、一位が移民問題です。言葉の問題もありイギリスは行きやすい国であると言えます。また、テロも度々起きていて問題視されています。

 名目GDPの推移を見ると、イギリスはEUの中に入っていて決して悪くない状況です。EUにおけるイギリスのプレゼンスとしては、GDPでは2位、人口はフランスとほぼ同じなのにイギリスの方がGDPはかなり大きいのです。つまり一人当たりGDPが高いのです。一方議席数では第3位と、フランスより1人少ないのですが、拠出金は第4位でイタリアより少なくなっています。つまりここからイギリスのずるさが見て取れます。自分たちはEUのいいとこ取りをしようとしているのです。

 一方フランスはEU内でのさばっているように見えますが、実際には劣勢にあり、拠出金も多く出しているのです。イギリスのずる賢さがよくわかりますが、その最たるものがポンドをギブアップしていないと言うことでしょう。産業別のGDPではイギリスの場合は他国と比較して圧倒的に金融などの部分が大きくなっています。貿易相手国はなんといってもEUがトップです。

 そして最も重要なのは、直接投資額の推移です。イギリスは対外投資をものすごくやっているのです。七つの海を制覇したこともあるイギリスなので、伝統的に対外投資が多いのです。そして実はイギリスに向かう対内直接投資もものすごく多いのです。ドイツなどはなかなか外からの投資を引っ張ってくることができません。フランスなども叫んでも来ない、イタリアには誰も行かないというのが現状です。つまりイギリスがEUにいたことのメリットは、これを見ると明らかなのです。自分は行きたいだけ外に行き、よそからも来る人が多いと言うのがイギリスです。日本企業もそれにつられてほとんどがイギリスに行ってしまっています。

【英国】大前流思考法 BREXIT選挙後の英国が進むべき道

 こういう状況の中、私が次の首相ならどうするかと言うと、残ることを選びます。EUに入る前、70年代にイギリスに行った際には、当時日本も元気だったこともあり、イギリスは博物館になるつもりか、とよく言ったものです。当時のイギリスで、日本は工業国家として追いつけ追い越せでここまで来ましたと言う話をしていたら、ある企業の会長が手を挙げてこう発言しました。私たちはアメリカや日本と競争しようとは思っていない、北海油田が出たので、OPECに加盟して日本をいじめてやると言ったのです。これがイギリス敗北主義の象徴です。

 EUに入る前のイギリスは超三流国で、誰もファイティングポーズを取らず、もういいと諦めていたのです。しかしラッキーなことに油が出たということで、これでOPECと一緒になってアメリカと日本をいじめてやろうと言うのです。エレクトロキャッシュレジスターなどいらない、手動のレジスターで何が悪いのだと言っていたのを、私は明確に覚えています。

 そのイギリスがEUに入り、ポンドがそれなりの価値を維持したのは、EUの中でいいとこ取りをして、付かず離れずの関係を持っていたからに他なりません。日本から見たら、どうせヨーロッパ圏に進出するならイギリスは魅力的でした。ヨーロッパ大陸に物も売れるということで、日産などは、EUに入っているイギリスに投資をして大成功を収めています。そういう恩恵を受けているのに、ここでもう一度、あの地獄の35年前のイギリスに戻るのか、ということです。私だったら絶対に戻りません。

 実は今回の国民投票は法的根拠がないので、私ならやはり議会で説得をします。今となっては離脱がいかに大きな問題なのかという困難さも分かっているでしょう。国民に対しては、皆さんの意見はよくわかったけれども、熟慮した結果、私はやはり昔のイギリスには戻りたくない、今のEUの中での名誉あるポジションを維持したいと訴え、議会の中で圧倒的に上院、下院を通過させ、皆さんの選んだ議員がこういう形で決めたという方向に持っていきます。

 今候補になっている保守党の人たちは一様に国民が決めたことだからこれを守らなければいけないと言っていますが、私が首相に選ばれたら、まずはEUとの交渉でギリシャのツィプラス首相と同様に、コテンパンにやられます。EUもイギリスに対しては分を与えてきましたが、これから先はいいとこ取りはさせないとしています。移動の自由のないEUなど存在しないということを思い知らせてやると言っています。イタリアのレンツィ首相、オランド、メルケルを含め、誰も妥協する余地はないと言っています。この厳しさが交渉を始めればすぐわかると思います。

 ヨーロッパ側はこれを妥協したらまずいのです。他の国も国民投票で離脱にさせてそれを交渉に使うようなことになると、ヨーロッパが空中分解するからです。ヨーロッパはすでにイギリスなしでやっていく覚悟を決めています。ツィプラス首相が、ヨーロッパの言う通りにはならないと首相になっておきながら、結局ギリシャが叩かれてEUの言う通りになった、あの憂き目を一度味わった上で、国民投票はなく議会で決める、これが代議制民主主義のやり方だといえます。

 国民がもしそれに対して反発するなら、その場合は州ごとに議員に決めてもらうことを考えます。前例としてデンマークはEUにとどまりながら、グリーンランドはEUから外れています。ただし今それを持ち出すと、スコットランドは喜んで行ってしまい、ウェールズや北アイルランドも同じようになるでしょう。特に北アイルランドは内戦が勃発します。イギリス系の人たちとアイルランド系の人たちは100年戦争をやってきたわけです。その前にとにかく議会でこれを反転させてしまう、ルールは議会で決めるというのが良いと思います。国民に対して申し訳ない気持ちを持ちながらも、イギリスのためにはこの選択肢しかなかったと、安倍総理のように、この道しかないとはっきり言う以外にないと思います。

 EU前のイギリスは本当に惨めでした。もちろんサッチャー革命もイギリスへの投資を加速させましたが、EUに入っていなかったらイギリスへの投資はヨーロッパ分の投資はしていなかったのです。イギリスへの投資とヨーロッパ大陸への投資は分けて考えられていましたが、EUに入ったことでヨーロッパ投資と言えばイギリスに拠点を置くと言うことになったのです。私が首相なら、それ以前の状態には決して戻りたくはないのです。

 EUの中ではドイツに対する反発も強まっていますが、ドイツがいるおかげでEUが保っているところもあるのは事実です。しゃくにさわりますが、ドイツのどこが悪いかと言われると、どこも悪くないのです。ドイツはやはり自分のやる事はやっており、負担するべき事は負担しています。ドイツにここを直せと言えばそれほど反発はないと思いますが、今ドイツは役者も揃っており、周りが受け入れるしかないと思います。ドイツはEUの中のリーダーであり、世界の中のリーダーの一国でもあると思います。

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