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2016.7.27(水)

英国テリーザ・メイ新首相の苦難の道のり(大前研一)

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英国テリーザ・メイ新首相の苦難の道のり(大前研一)2016/07/27(水)


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今回のテーマ

英国テリーザ・メイ新首相の苦難の道のり(大前研一)

【英国】テリーザ・メイ新首相の苦難の道のり

 イギリス保守党のテリーザ・メイ党首が13日、イギリスの新しい首相に就任しました。メイ氏は演説で、われわれは国家として大きな変化の時代に直面していると表明するとともに、EUを離脱するにあたり大胆かつ新しい前向きな役割を世界で作り上げていくと宣言しました。

 この人はスコットランドに行き、独立を牽制しているわけですが、スタージョン第一首相は余計なお世話だと言って突き返しています。いかなるイギリスの首相と言えども、スコットランドの将来について口を挟むことはできないと言い、不快感を表しています。イギリスは離脱したらスコットランドのみならず、ウェールズも独立を目指すでしょうし、北アイルランドについてはシン・フェイン党がにわかに活発になっており、アイルランドと一緒になりEUに残ろうとしています。離脱についてはもう一度議会でよく揉まないと難しいというのが私の意見です。

 このままボリス・ジョンソンなどを外務大臣にして離脱に向けてガンガン進むと言う勇気は、この新しい首相には無いだろうと思います。おそらくヨーロッパに行って、イギリスだけにいい条件はあげないと、こてんぱんにいじめられることになるでしょう。テリーザ・メイは就任早々、とにかくベストの条件を勝ち取ると言っていますが、かなり愚かなことだと思います。ツィプラスもギリシャで首相就任当初はヨーロッパの要求には屈しないと言っていました。しかし一度交渉したらがっくりときて、今では国民の敵のように思われていますが、まだ首相の座についています。これが実態なのです。彼女もこれからそういう経験をすることになるでしょう。

 彼女はオックスフォード大学を卒業し、イングランド銀行にいました。イングランド銀行にいたときの経歴を若干美しく詐称していると言われています。下院議員を経て内務大臣を務め、移民やテロ対策をやっていた人です。今回は不戦勝で終わったわけですが、ほとんどすべての人がこの人の下に結束する方向になっているので、今後あまりおかしな動きをしなければ、しばらくイギリスの国内はまとまると思います。EU側はこてんぱんにするのを待ち構えていると思いますので、波瀾万丈になると思います。

 EU残留に強い意思を示しているスコットランドですが、ロイターは6日、「スコットランドEU残留で奇策も浮上」と題する記事を掲載しています。これはイギリス北部スコットランドが、UK連合王国を解体せず、実質的にEUに残りたがっていると紹介しています。スコットランド行政府のスタージョン首相がEU委員や欧州議会の委員と行った会談では、デンマークとグリーンランドの例の逆に、UKの中で、スコットランドだけがEUに加盟する構想も浮上したとしています。

 この話は嘘だと思います。スタージョン首相は既に、自分たちはEUに残ると言う意思を27カ国に対して伝えています。逆グリーンランドと言うのは、デンマークの一自治領であったグリーンランドがEUを離脱して、場所的に近いアメリカとくっつきたいと行ったものです。デンマークはEUに入ったままグリーンランドが抜けたわけですが、今度はその逆で、小さいほうのスコットランドが残り、イングランドが出ていくと言う話です。しかし私はそうではなく、順序としてはイギリスが議会で離脱しないことを決定するのがベストだと思っています。

 しかし、イギリスが本当に離脱したら、スコットランドはすぐに独立投票をして、イギリスから離脱して、EUに加盟するでしょう。イギリスがEUを離脱していれば反対票を投じることができないので、スコットランドはEUに入ることが可能となります。そうなるとウェールズも同じようにするでしょう。United KingdomはUnunited Kingdomになってしまうと思います。

 また、職を奪われたという発言も嘘なのです。イギリスに在住するEU加盟国市民の人口を見ると、どこから多く来ているかと言うとポーランドが圧倒的で85万人来ています。次は当然ですがアイルランド、そしてルーマニア、ポルトガル、イタリアと続きます。一方イギリスにおける外国人労働者の推移を見ると、非EU加盟国の出身者の数は全く増えていません。要するに、移民と難民が増えて自分たちの職を奪っていると言っていますが、実は自由に動けるEU加盟国からの流入が増えているのです。しかも、イギリスの失業率は5%以下です。イギリスが今日の大発展を遂げたのは、このようなポーランドなどからの労働者がいたからなのです。イギリスはそうして受け入れないと、すでに人がいないのです。レストランなども人が足りず拡大できないという状況なのです。離脱派の人たちは職を奪われたと叫んでいますが、実態としては雇用が多く生まれていて、難民の問題でもないのです。

 また、EU加盟国の他国へ行っているイギリス人を見ると、多くはスペインやアイルランド、フランスなどへ行っていて、良い生活を求めてイギリス以外へ移住しています。こうした人たちは、離脱した場合、その国に滞在できなくなってしまいます。100万人を超える数の人たちがイギリスに戻ってくるか、滞在許可を取り直すことが必要になります。

 このようなことがキャメロン氏によって正確に説明されていなかったため、今回のような結果になったと思います。難民などで雇用を奪われて大変なことになっていると言いますが、それは錯覚に過ぎず、逆に東ヨーロッパから多くの人たちが来ていたからこそ経済が拡大したのです。しかもかつて12%にもなっていた失業率は非常に低下したわけで、離脱などと、一体何を考えているのかということなのです。イギリス人はわずか20年30年前の自国の状況を覚えていないのでしょうか。日本人も含めどこの国でもそういうものかもしれません。ただ、私は日本企業のお手伝いをしてヨーロッパ戦略等を立てていましたので、当時のイギリスはやってられないような国だったことを覚えています。失業が多いということはつまり雇用ができるので、日本企業が進出したという具合でした。今のイギリスは人を採るのが非常に難しくなっています。ドイツでも人を雇うのは既に不可能です。イギリスはEUに入る前のミゼラブルな状況を忘れて錯覚しているので、ちょっと待って考えるように伝える必要があると思います。

 ロイターが7日報じたところによると、直近の経済規模で、フランスがイギリスを抜き、世界5位に浮上したということです。通常、経済規模の比較では、平均為替レートを使用しますが、ロイターがポンド急落を受けた現在の相場水準で算出したところ、フランスがイギリスを逆転したということです。

 イギリスはフランスより経済力では大きいのに、EUに対する応分の負担をしておらず、フランスは応分の負担をしていると指摘してきましたが、ただこれはひとえにポンドのおかげです。今回の急落によりポンドは15%以上下落したので、フランスの方がGDPが大きくなってしまったわけです。ポンドは基本的に2014年ごろから非常に調子が良かったのですが、ほぼ暴落となり、対ドルレートでは39年前のレベルに落ちてしまいました。イギリスの人たちはこれにより相当パニックになっていると思います。その一方、中国の人はイギリスに行けば買い物が安くできるということで殺到するという状況です。

 ヨーロッパ主要国のGDPの比較では、イギリスはこれまでドイツに次いで堂々の二位でしたが、今回のレートの計算ではフランスが二位になったということです。フランスはユーロを使っているのでドイツと同じ基準であり、ドイツが頑張ってくれればフランスは頑張らなくて済むというわけです。

【米国】約1年2カ月ぶりに最高値更新 ~ダウ工業株平均~

 12日のアメリカ株式市場で、ダウ工業株30種平均が続伸し、終値は前の日に比べ120ドル74セント高い、1万8347ドル67セントとおよそ1年2ヶ月ぶりに過去最高値を更新しました。新規の買い材料は見当たらなかったものの、アメリカ景気への期待感と、長期金利が低水準で推移する投資環境が、引き続き好感されたとみられます。

 安倍総理によると、リーマンクラスの不況にあるそうですが、アメリカ株は最高の水準に達しています。リーマンショックの後は8000ドル以下に落ちていたダウ平均ですが、今は史上最高値を連続で伸ばしている状況です。アメリカにも様々な悩みはありますが、企業の方は世界化やICT化などを果たしていて、アメリカの企業はここにきてやはり強いと感じます。

 また、今動いているものがない上、ヨーロッパの動向は若干疑問視されているので、アメリカの株式市場にお金を持っていこうと、お金が世界中からアメリカに入ってきています。それに比べ、日本株は出遅れているということで、日本株にもこの余波が来ています。日本企業そのものの将来が期待されているわけではなく、この出遅れ感によって、ファーストリテイリングなど、本来もっと高くても良いのではないかと買われてきている状況です。

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7月10日、17日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!