グローバル・マネー・ジャーナル

2016.9.7(水)

完全失業率低水準も非正規の雇用増で財布のひも緩まず(大前研一)

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完全失業率低水準も非正規の雇用増で財布のひも緩まず(大前研一)2016/09/07(水)


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今回のテーマ

完全失業率低水準も非正規の雇用増で財布のひも緩まず(大前研一)

【日本】完全失業率低水準も非正規の雇用増で財布のひも緩まず

 日経新聞は先月30日、「雇用過熱、さえぬ消費」と題する記事を掲載しました。これは総務省が発表した7月の完全失業率は3%と前の月に比べ0.1ポイント低下し、21年2ヶ月ぶりの低水準となったものの、7月の実質消費支出は前年同月比0.5%減少しており、雇用増加がパートなど非正規労働や低賃金の職種に偏り、家計の財布の紐が緩まず、消費に結びつかない現状を指摘しています。

 アベノミクスの最大の問題は認識の間違いです。ここで28兆円の景気刺激策をすると言っていますが、完全雇用に近い状況の時にお金をばらまいて景気を刺激するという経済理論は世界中どこを探してもありません。そんな状況で景気刺激をすればインフレになるだけだからです。ところが、日本の場合にはインフレにもならないのです。その理由はいわゆる低欲望社会にあり、お金を握っている高齢者たちがお金を使う気にならないということです。

 失業率はグラフのように下がり続けていて、有効求人倍率も伸びています。したがって日本は雇用に関しては非常にタイトなのです。そのかわり、パートやフルタイムではない職業についている人も多くいるので、それが2%から3%クッションになっています。つまり完全雇用とは言っても数%は遊びがあります。これについては世界中どこの国でも同じです。

 一方、実質消費支出は二人以上の世帯の場合、対前年比で下がり続けています。消費者物価指数も下がってきています。要するに日本の経済はどこと言って悪くは無いが上がらないという状況で、安倍首相が考えているような金利やマネーサプライなどではないところにその原因があるのです。いい加減にそのことに気づくべきです。

 完全雇用に近いところでお金をばらまく、いわゆるケインズ的な刺激や、ヘリコプターマネーのようなことをやれば、当然のことながらハイパーインフレになる可能性が高まります。しかしそれでもそうならないのは、お金を持っている人たちは急いでいない上に、マーケットに欲しいものもないからです。

 日本の場合には、給料を少し上げても将来が不安だからそれを貯めてしまいます。1700兆円の個人金融資産は全く表に出てきません。将来への不安やいざと言う時のためにと言う訳ですが、経済政策はこのお金が出てくるようにするものでなくてはなりません。賃上げでもなく、非正規雇用の正規化でもないのです。

 アベノミクス全体の経済の認識が間違っていて、これほど間違っているものをさらにこの道しかないと言って続けているので、大変大きな問題です。そこに気がつく人が安倍首相のアドバイザーの中に1人でもいればなんとかなるのでしょうが、絶望的な現状認識の間違いが問題の元になっています。お金をばらまいたところでどうしようもないのです。

 しかも安倍首相の周りの多くの人は株が上がれば景気が良いと思いこんでいます。株価の上昇を期待しているわけですが、実際には社員をどんどんクビにして企業収益が上がれば株価は上がるのです。株が上がることがご褒美のように思っていますが、株は企業の将来価値が上がってこなければ上がるわけがないのです。そこを勘違いして株が上がっているからいいだろうと言っていますが、株が上がることは景気には関係ないのです。そうした根本的なことが本当にわかっていないのです。

 また日経新聞は「金融緩和では止められない成長力の低下」と題する記事を掲載しました。これは、各国の中央銀行の首脳らが集う国際経済シンポジウムで、低成長、低インフレ下で苦戦する中銀の政策限界論を巡り、激論が交わされたと紹介しています。そこからは、経済の勢いが構造的に弱まっているときには、金融政策が効果を発揮しにくいことが浮かび上がったとし、各国政府はこうした金融政策依存に陥らないよう潜在的な成長力を引き上げる方策に全力を挙げるべきとしています。

 これも笑ってしまうような状況です。私の本を一冊でも読めばすぐわかることを、このように偉い人たちが多く集まって議論しているというのです。昔の理論のまま、おかしいおかしいと言っているレベルの人たちが集まっているのです。

 金融緩和では成長力の低下は止められない、これは当たり前です。成長力とは、やはり人間が増えるとか、育っているとか、そういう理由がないといけないのです。将来に対して本当に期待が持てて、この国の需要はまだまだ大きくなると思えば、放っておいても設備投資をします。たとえ金利が5%でもお金を借りて設備投資をしたものです。

 しかしそのように人は増えないし、需要も伸びないと思えば、たとえゼロ金利でも誰もお金を借りて投資はしないのです。ですから、こうした会議に集まっている人たちは頭が古いといえます。 日本は老化経済の最先端を行っているので、日本の経験としてもっと意見を言えばいいのですが、揃って潜在成長力を引き上げようなどと言っていて、それはどう考えても無理なのです。日本のような国では投資をする理由にもならないのです。

 もし政府が、国民の老後は全て面倒を見ます、心配ありませんと言えば、皆、このお金を貯めずに使うことができます。しかし、30歳の人に対するアンケート調査で最も多いのが貯金を増やすことで、その理由は将来に対する不安だと言うのが現状です。30歳ですでに将来に対する不安があり、65歳でも不安があり、80歳になっていざという時のためなどと言い、誰もいつまでもお金を使わないのです。

 政府が刷りすぎたお金は全部余ってしまっているわけです。こういうおかしな政策を、日本だけではなくアメリカから来たクルーグマンなども一緒に皆でやっているのです。私に言わせると、もっと現実を見る必要があるのです。現実とは何かというと、マクロ経済ではなく、ミクロ経済です。個々の人々の財布がどうなっているのか、そこを見る必要があるのです。

【世界】アップルに違法な税優遇 最大約1兆4800億円の租税回避問題

 欧州委員会は、アイルランド政府が最大130億ユーロの違法な税優遇を、アメリカのアップルに与えたとして、過去の優遇分や利息を追徴課税で取り戻すよう同国に指示しました。アイルランドは不服として提訴する構えです。

 これはアイルランドにとってはメリットがあるのです。一方アメリカは、アメリカの会社なので当然、追徴などとんでもないと反発しています。そこで、アップルは来年からアメリカには数十億ドル払いますと言って、アメリカとヨーロッパが喧嘩するのを助けようとしています。非常に汚い会社に思えます。

 アメリカの主要企業の海外収益に対する課税率を見ると、0のところが多くなっています。アップルは良いほうですが、それでも2.3%とほとんど払っていません。アイルランドは法人税率が12.5%です。アイルランドと特別なディールをやって2.3%の課税になっているのです。

 EUから見ると、アイルランドの12.5%でさえも時間とともにヨーロッパの水準に近づけるという約束であり、そこまでは認めるとしても、さらに特別なディールをしてアイルランドを経由させ、2.3%しか取っていないというのは認められないわけです。これは当然のことです。しかし、アップル側は戦うつもりで、アメリカもEUと戦うつもりのようなので、これは少しおかしいと思います。

 また、海外でアメリカ企業がどの程度お金を持っているのかをみると、アップルの場合20兆円近く保有しています。二位がGEで10兆円以上、マイクロソフト、ファイザー、IBMなども、5兆円、6兆円と持っていて、アメリカに持ってくると課税されるので海外に置いていると言うわけです。これは捕まって当然だと私は思います。

【中国上場企業】なぜ相次ぎ香港を脱出するのか?

 日経新聞は先月30日、「中国企業、相次ぎ香港脱出」と題する記事を掲載しました。これは香港市場に上場する株式を非公開化し、中国本土の上海や深セン市場への再上場を目指す動きが相次いでいると紹介しています。

 香港市場での評価が低く、事業や顧客の評判に関わることが理由ですが、これは開かれた世界に背を向け、当局の規制や監督下の閉じた市場へ逃げ込むことを意味し、そこで高い評価を得たとしても喜べるものかどうかと疑問を呈しています。

 これは全くその通りで、同時上場している場合も含め、香港の方がPERが低く、株価収益率が上がらないのです。株価収益率だけを上げるために香港を脱出し上海に戻ってくるなどということをやっている会社は、どのみち信頼されません。戻っていけば中国政府の意向でどうにでもなるというわけで、世界化に背を向けた、非常に危ない発想だと思います。数は新聞に書いてあるほど多くはありませんが、由々しき問題だと思います。

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9月4日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!