ドイツの難民申請件数の推移を見ると、月に何万件も来ていることがわかります。こうしたことから、できることならもう少し冷静に、きちんとしたルールを作ってやり直したいという意味なのでしょう。非常に難しい状況なのです。
一方でドイツは今人手不足なので、産業界は難民については割と好意的に見ています。しかし一般の人の間では、あちこちで事件や問題を難民が起こしているという、ポピュリストの考え方が勝つのです。メルケル氏のように、全体から考えれば吸収できる範囲だという冷静な考え方は支持されなくなっているのです。投票とはそういうもので、ポピュリストが勝つという局面に、もはやなっているのです。来年は彼女自身の選挙もあり、このことが今非常に大きな不安要因になってきているわけなのです。
しかしドイツでは、メルケル氏以外に誰か適当なリーダーが現れてきているかと言うと、思いつかない状況なので、国民はこのようにメルケル氏の態度が少し変化すれば、また支持しようという気持ちが残っているのではないかと思います。
また、ドイツ連銀のワイトマン総裁は19日、イギリスがEEA(欧州経済地域)の構成国でなくなれば、イギリスに本拠を置く金融機関は、パスポート制度の適用も失うとの考えを示しました。この制度は、EU加盟国内で金融業の免許を相互利用できるものですが、ワイトマン総裁は、パスポート制度は単一市場に結びつけられたものとの認識を示しました。
イギリスにとってこれは非常に痛い指摘です。EU加盟国の一つで認可を取得した金融機関は、域内の他の国でも金融営業ができるというのがパスポート制度です。銀行業務と、金融商品の受注等の投資サービス業務、二つの領域のパスポートがあり、この二つによりイギリスがEUのメンバーであれば、イギリスの金融機関、あるいはイギリスに開設した日本やアメリカの金融機関も、ヨーロッパ各国で新たに金融免許を受けることなく業務をすることができるのです。
今回のワイトマン総裁の発言は、これがなくなるという意味なのです。この発言はイギリスから見ると天変地異でしょう。これがなくなってしまうとイギリスに金融機関が来てくれなくなってしまい、シティーそのものが成り立たなくなるのです。イギリスにとってはとどめを刺されるほどの重要な問題で、非常に大きなショックが走っていると思います。
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