これはいろいろな新聞で取り上げられていますが、500万円の収入がある個人で、今年度だけでも借金が300万円増え、しかも借金の累計は1億円になるという状況と同じなのです。払えるわけがないのです。今生まれてきた子供たちは1億円の借金の重圧を負いながら、親の収入が500万円、さらに毎年300万円の借金をしているということなのです。ただ現在は金利が低いのでこの問題は比較的顕在化しないままやってきています。
政治家たちはこの問題をどう考え、どう解決しようとしているのでしょうか。実は、それを成長戦略で補うとして成功した政治家はいないのです。成長戦略は、レーガン元大統領もサッチャー元首相もやりましたが、これは規制撤廃です。仮に規制撤廃をやっても、それにより潰れる産業の方が早く現れるのです。農業を自由化すれば潰れる人の方が多いものなのです。十数年経ってやっと新たに生まれてきた産業や会社が成長になるのです。
つまり、成長戦略は、効き目が10年以上先になるわけです。政治家はすぐ結果を見せて選挙に出たいという思いがあるので、難しいのです。レーガン元大統領も、あれだけのことをやりながら、実際にアメリカの成長が現れたのはクリントン時代となったのです。成長が現れたときにはレーガン氏はすでにアルツハイマーということになったのです。
このように、痛みを伴う、今まで保護されていた産業から失業が先に出てきてしまうという問題を、きちんと理解した上でやらないといけないのです。三本の矢だ、600兆円だ、などと今の成長を追っても、できるわけがないのです。そうした中で、日本は本当に競争力のない産業を守りながらやっている、だからいつまでたってもダメなのです。
政治家がもう少しディシプリンを持って、やるべきことをやろうとする、自分は討ち死にする覚悟でやらないといけないのです。しかもその収穫をするのは10年から15年後の人たちです。ドイツで言えばシュレーダー改革、アメリカで言えばレーガン、イギリスで言えばサッチャー、こうした人たちがその課題に取り組んできました。日本はまだそれに匹敵する人は出てきていないということなのです。
アベノミクスは一番悪い例で、耳あたりの良いことを言いながら、金利とマネーサプライだけをいじって、成長成長と言っているだけの最悪のパターンと言えます。ようやく日経新聞等は綻びが目立つなどと言い始めていますが、安倍総理は個人攻撃をするので怖くてなかなか批判は書けないという状況なのです。
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