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2016.12.27(火)

日本の2017年予算案 過去最大97兆4547億円(大前研一)

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日本の2017年予算案 過去最大97兆4547億円(大前研一)2016/12/28(水)


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今回のテーマ

日本の2017年予算案 過去最大97兆4547億円(大前研一)

【日本】2017年予算案 過去最大97兆4547億円

 日経新聞は23日、「構造改革なき予算案、アベノミクスに綻び」と題する記事を掲載しました。これは、第二次安倍内閣発足後、5度目となる予算が決定したことを紹介しています。保育士の待遇改善や研究開発費を増加しながら、新規国債の発行は減らしたとして政府が自画自賛するものの、痛みを伴う中長期の制度改革は手付かずのままで、円安や超低金利の追い風に頼るアベノミクスの綻びが示されたとしています。

 アベノミクスはほとんど何の効果も生んでいないという状況です。今回の予算は、反省や構造改革、2020年までにプライマリーバランス黒字化といったものはどこかへ飛んでしまいました。しかも消費税を10%にする改革も逃してしまったので、プライマリーバランスを2020年に黒字化するなどということはできるわけがありません。まだ目標としては掲げていますが、どんな奇跡が起こっても実現できるわけがないでしょう。

 一般会計の歳出は一般会計の税収を大きく上回り、今になって綻び等と言われていますが、最初から綻んでいるのは明らかです。日本の新聞はアベノミクスに期待して、三本の矢、新三本の矢などと書いてきましたが、私に言わせれば、アベノミクスは100年古い経済学です。

 公債発行額の推移を見ると、借金がどんどん膨れているのが分かります。一方、一般会計歳出の主要経費の推移では、社会保障関係費が32兆円に上り、非常に増えています。地方交付税はほとんど増えていません。また公共事業もかなり抑えています。そして借金を賄っていく利払いなどの国債費は、構造的に23兆円に上る状況です。

 これはいろいろな新聞で取り上げられていますが、500万円の収入がある個人で、今年度だけでも借金が300万円増え、しかも借金の累計は1億円になるという状況と同じなのです。払えるわけがないのです。今生まれてきた子供たちは1億円の借金の重圧を負いながら、親の収入が500万円、さらに毎年300万円の借金をしているということなのです。ただ現在は金利が低いのでこの問題は比較的顕在化しないままやってきています。

 政治家たちはこの問題をどう考え、どう解決しようとしているのでしょうか。実は、それを成長戦略で補うとして成功した政治家はいないのです。成長戦略は、レーガン元大統領もサッチャー元首相もやりましたが、これは規制撤廃です。仮に規制撤廃をやっても、それにより潰れる産業の方が早く現れるのです。農業を自由化すれば潰れる人の方が多いものなのです。十数年経ってやっと新たに生まれてきた産業や会社が成長になるのです。

 つまり、成長戦略は、効き目が10年以上先になるわけです。政治家はすぐ結果を見せて選挙に出たいという思いがあるので、難しいのです。レーガン元大統領も、あれだけのことをやりながら、実際にアメリカの成長が現れたのはクリントン時代となったのです。成長が現れたときにはレーガン氏はすでにアルツハイマーということになったのです。

 このように、痛みを伴う、今まで保護されていた産業から失業が先に出てきてしまうという問題を、きちんと理解した上でやらないといけないのです。三本の矢だ、600兆円だ、などと今の成長を追っても、できるわけがないのです。そうした中で、日本は本当に競争力のない産業を守りながらやっている、だからいつまでたってもダメなのです。

 政治家がもう少しディシプリンを持って、やるべきことをやろうとする、自分は討ち死にする覚悟でやらないといけないのです。しかもその収穫をするのは10年から15年後の人たちです。ドイツで言えばシュレーダー改革、アメリカで言えばレーガン、イギリスで言えばサッチャー、こうした人たちがその課題に取り組んできました。日本はまだそれに匹敵する人は出てきていないということなのです。

 アベノミクスは一番悪い例で、耳あたりの良いことを言いながら、金利とマネーサプライだけをいじって、成長成長と言っているだけの最悪のパターンと言えます。ようやく日経新聞等は綻びが目立つなどと言い始めていますが、安倍総理は個人攻撃をするので怖くてなかなか批判は書けないという状況なのです。

【欧】伊モンテパスキへの公的支援決定とドイツ銀問題

 ドイツ銀行は22日、MBS、住宅ローン担保証券の不正販売問題をめぐり、罰金72億ドル、約8500億円を支払うことでアメリカ司法省と大筋合意したと発表しました。この問題をめぐっては、ドイツ銀行の経営の負担が懸念され、株価が一時急落していましたが、トランプ政権への移行が迫る中、アメリカ司法省が決着を急ぎ、当初の要求額を減額して協議がまとまったかたちです。

 ドイツ銀行はMBS以外に、高コスト・低収益という経営問題を抱えていています。一応司法当局との争いについては8500億円で解決となりました。ドイツ銀行の純損益の推移を見ると相当派手にマイナス側に伸びていて、一四半期だけで6000億円を超えるマイナスを出してきています。とりあえずアメリカ政府との訴訟問題についてはこれで解決となりましたが、他に多くの負債を抱えているので、危機脱出とはいかないのは明らかです。

 イタリアの銀行3位、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの増資計画が失敗したことを受けて、ジェンティローニ首相は23日、この銀行への公的支援を閣議決定したと発表しました。EUの銀行再生破綻処理指令に基づき、劣後債を持つ小口投資家を保護する仕組みを適用する方針で、欧州委員会の判断は、今後他の銀行の公的支援にも影響するとみられます。

 今回モンテ・パスキは、資本調達をしようとして、カタールなども興味を示していたわけですが、それができず結局破綻となりました。それに対し政府が公的支援をするということです。EUのルールでは公的支援はできないのですが、今回の場合は小口投資家が非常に広く株を持っているので、ダメージも大きいことから、おそらくヨーロッパ委員会も了承すると思われます。

 ただ、イタリアは他にもいくつかの銀行が深刻な問題を抱えているので、一難去ってまた一難と、問題が出てくる可能性もあります。とりあえず最も危機的な状況にあり資本調達に難渋していたモンテ・パスキが例外的に国家による救済となれば、それ以外の銀行が同じような状況になった時には、昔のように大きすぎて潰せないというような理屈ではなく、株を多くの小口の投資家が持っているという理由で、今回の事例を参考に、国家による救済ができるかもしれません。

【日本】減少する人口 自然減も戦後初の30万人超

 厚生労働省が発表した統計によると、国内で2016年に生まれた日本人の子どもは98万1000人と、統計を取り始めた1899年以降初めて100万人を下回る見通しとなりました。また、出生数が死亡数を下回る自然減は10年連続で、人口減に歯止めがかからない現状が改めて示されました。

 なんとも言い難い重苦しいニュースです。日本の出生数と死亡数の推移からは、高齢化しているので当然ですが、死亡数が増加しているのがわかります。一方、出生率については、戦後ベビーブームがあり、その人たちが結婚適齢期になり、第二次ベビーブームがやってきたのでグラフでもそのピークが示されていますが、その次となる第三次ベビーブームは現れてこないのです。

 ベビーブーマーが子どもを産み、またその世代が適齢期になり、第三次、第四次と行くはずだったのが、その動きはぼやけてしまい、ピークは全く現れなくなってしまいました。出生数は100万人を下回り、もはや昔の日本のように子ども5人が珍しくないような状況は見られず、産んでも一人か二人、という状況です。どうしても年間30万人ほどずつ人口が減っていくわけです。そのうちに50万人、60万人と減っていくことになります。

 人口が30万人減るという規模は、高知市や豊島区のような規模が比較的大きな自治体が丸ごとなくなるということと同じです。それほどの人口が毎年消えて無くなるわけで、やはり日本の将来は、対策はいろいろあるものの、人口が増えるということは期待できません。

 とは言え、ヨーロッパの例にあるように移民に対する反発も大きく、少なくとも安倍政権が受け入れにハンドルを切るということも考えられません。毎年30万人、今後は50万人が、正味で奪われていく、しかも高齢化社会は負担が大きく、日本はそうした問題の中にどんと突っ込まれた状況にあるということなのです。

講師紹介

ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一
12月25日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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資産形成力養成講座 加藤

 新米大統領、トランプ氏。上院・下院も共和党が過半数を占めたため政策を進めやすい土壌はできました。今後の米経済をどのように予見し、マーケットに織り込まれていくのか。これまで以上に世界経済についてじっくり考えていく必要があります。

 経済環境を鑑みて投資に活かす。また、資産運用は株式・債券・為替・コモディティ・不動産など多岐に渡り、世界中に金融商品は存在します。総合的な理解や考え方が求められます。世界標準の資産運用を学び、第一歩を踏み出してください!

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 本年も大変お世話になりました。2017年も講座として更にパワーアップしてまいりますので、引き続きご支援ください!

 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!