好きなようにどんどん貸し出せるので、安易な景気対策にはなるものの、それが長期的にどのようなマイナスの影響につながるのかということは、すぐには見えないものなのです。これについては即座に善し悪しを判定するのは非常に難しい、そういった部類の大統領令であると言えます。
またトランプ大統領は先月31日、「日本が長年、何をしてきたかを見ろ」と、日本や中国が為替操作して通過安に誘導していると述べ、日本の為替政策を批判しました。10日に行われる日米首脳会談でも、貿易政策に加え、為替政策についても問題提起される可能性があります。
これはカリフォルニア大学アーバイン校のピーター・ナヴァロという、経済関係の一番上位の委員会のまとめ役をやっている人物が関わっています。彼は、Death by China、つまり、中国によってアメリカが殺されるという本を書いたり、映画を作ったりしています。
彼の言い分は少しモデルが古く、製造業を前提にしています。中国は当然為替を操作していて、日本もアベノミクスによって為替を操作しているとし、これによって円安が進み、日本企業の輸出競争力がついていると主張しています。
円安が進んだのは一部事実ではありますが、競争力の面から見ると日本は現地生産が多いので、アメリカにはもうそれほど輸出していないのです。したがって、為替の円安でつけた競争力の分だけ輸出しているかというと、そういった産業はもはやあまりないのが現状です。
一方、安倍黒(安倍首相・黒田日銀総裁)が為替を円安の方向に振り、日本の景気を良くして、株も高くして、GDPの2%成長を達成しようとしたことはまちがいないので、それを為替操作だと言われるのは、日本としては冗談だろうという印象です。しかしピーター・ナヴァロという人はそういう考えの人なのです。
そして、実は同様のことを今度はドイツに対しても言っているのです。ドイツは本来、ドイツマルクであれば日本と同じように強くなったはずなのに、弱い国々と一緒にユーロになったので、ユーロ圏の弱い国で自分の強さを薄めて、結局ユーロは弱くなっている、その弱さをもってドイツの競争力につなげている、その意味で為替操作だと言うのです。
そして彼はさらに突っ込んで、ユーロを解体しろ、ドイツはユーロに入るな、弱い奴と一緒に化けるな、などと主張するのです。そのような議論で、ユーロ解体という話となると、やはりヨーロッパとの間では死闘になってしまうでしょう。
たまたまBREXIT、フランス選挙、そしてドイツの選挙という時期です。アメリカからユーロ解体を言われているとなると、選挙民もこの流れに乗って、ル・ペンのような人が勝ってしまう可能性もあります。彼は他国に対して極めて危険なことをやっていると言えるのです。ここに大きな問題があるのです。
しかし、もともと日本が安倍黒政策に向かった理由は、アメリカがQE1、QE2、QE3と、超金融緩和を三回に渡って行い、ゼロ金利にもって行ったのを真似しただけなのです。今アメリカは緩和が終わって少し金利を上げ始めているので、今になって調子の良いことを言うなという印象です。アメリカこそ、緩和で為替政策の先頭を走ってきたのではないかと、はっきり切り返せる人間を送らないとだめなのです。
ですから、今は行くべきではないのです。今行くと、飛んで火に入る四人様、ということになるのです。まさに、鴨がネギを背負ってきたという状況です。今のようなことを全部わかって、アメリカに切り返せる人間はなかなかいないでしょう。
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