英メイ首相は先月29日、EUに離脱を通知しました。イギリスの駐EU大使が、リスボン条約50条に基づいて、トゥスクEU大統領に書簡を手渡したもので、これにより離脱条件などを決める原則2年間の交渉が正式に始まることになります。
実は、EUのメンバーには非常に悩ましい問題があります。離脱に伴い、法的リスクが発生する主な分野として、労働法、会社法、税金、環境、エネルギー、通信、航空宇宙、競争法など、非常に多くのものがあります。私は今週ずっとBBCを見ていたのですが、実は12,000もの法律が、イギリスにはないというのです。EUに入るときには、国内法とEU法が齟齬をきたしたときに、EU法が上回るという決まりがあります。
つまり、同じものなら問題ないのですが、一致しなかったときは国内法は使わず、EU法を優先するというルールがあるのです。そのことにより、無意識にEU法をずっと使ってきたわけですが、今度イギリスが離脱するとなると、対応する法律でイギリスにはないものが1万2000もあるということなのです。議会で12,000もの法律をこれから作らないといけないのです。
保守党は、必要なものを作ればいいと言っていますが、労働党は、保守党に任せて必要なものだけ作らせたら何をやるか分からないとして、全部のEU法をイギリス法にコピーアンドペーストしろなどと議会で発言しているのです。コピペという言葉が、天下のイギリスのビックベンで出てきているのです。それほど間に合わない状況で大騒ぎというわけなのです。
離脱に伴う問題はこれに止まりません。例えば、牛を飼っていたとします。EUでは、こういう餌は良いとかダメとか、搾乳の仕方や出し方まで全て決まりがあります。それを守ることで、イギリスの酪農家はEUのブリュッセルから2500億円の補助金をもらっているのです。しかし離脱した場合には、例え基準を守っても、EU側はイギリスの酪農家の件は終了ということで、補助金はもらえません。イギリスの酪農家はその30億ポンドが来なくなれば、やっていけないことになります。
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