グローバル・マネー・ジャーナル

2017.5.17(水)

マクロン新仏大統領と小池都知事の間にある共通項(大前研一)

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マクロン新仏大統領と小池都知事の間にある共通項(大前研一)2017/05/17(水)


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今回のテーマ

マクロン新仏大統領と小池都知事の間にある共通項(大前研一)

【フランス】エマニュエル・マクロン氏が大統領選に勝利

 フランス大統領選の決戦投票が7日行われ、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン氏が勝利しました。得票率は66.1%で、ルペン氏を大きく上回る過去3番目の大差となりましたが、投票率は74.6%と1969年以来の低水準で、投票を棄権したか無効票を投じた有権者も全体の3分の1に上ったということです。

 マクロン氏はフランス歴史上最年少の大統領ということですが、その奥さんはもしかしたら最高齢かもしれない64歳という変わり種です。歴史上、その次に若い大統領は40歳で、なんとナポレオン3世とずいぶん昔のことになります。今回、マクロン氏が選ばれるという事はなかなか想像がつきませんでした。二大政党がぶっ飛んでしまい、政党としては国民戦線と、このマクロン氏個人の戦いとなりました。

 そして、今度はフランス総選挙があります。マクロン氏はそこに候補者を立てなければなりません。これまで政党がなかったわけなので、東京都の小池氏の都民ファーストの会と同じように、これからその政党を作ることになります。

 その政党の名前がなんと共和国前進党、前進する共和国というものです。全国で577の選挙区がありますが、そのうちの428の選挙区で、一部に政治家はいるものの、ほとんど素人が候補者となっています。その内もっとも有名な人はフィールズ賞をとった40代の数学者です。しかも428の選挙区に男性と女性を同数出しています。これが与党になるマクロン氏の共和国前進党です。これがどの程度票を伸ばすのか注目されています。

 ただ、多くの国民は実はしらけてしまっています。つまりルペン氏には票を入れたくないという人がマクロン氏側にいっただけで、投票しない人や白票を投じた人も多かったのです。結局自分たちで選んでおきながら、マクロン氏は何なのか、実はあまり知られていないということなのです。これから先フランスは支持者がいないという前途多難な状況に陥ってしまうのです。

 そんな中、私が個人的に非常に嬉しいと思うのは、ドイツと結ぶということです。ドイツと手を取り合って EUを守っていくということをはっきりと表明し、メルケル首相も大喜びで、この二国ががっちり結びついている限りEUは大丈夫だろうと思われます。しかしながら、フランスはものすごく官僚が強い国で、自由主義経済とは程遠いところもあります。これから先、経済を建て直していくことはかなり大変だろうと思います。

 オランド政権は今になってみると停滞の5年だと言われ、かなりマイナスに評価されています。マクロン氏がいかにビジネス経験があると言っても、予算には限りがあり、巨大予算を組むわけにもいかないでしょう。それによりドイツとの仲が悪くなることも考えられ、前途は多難だろうと思います。

 また、地域別の国民戦線への投票率の推移を見ると、1995年にルペン氏のお父さんが出てきた頃は、5%から9%の地域が多く、20%以上の地域は少なかったわけです。それが2007年には一旦後退したものの、近年次第に拡大してきています。こうした極右思想の国民戦線は今回ものすごく活躍し、決選投票にも残るという危ういところまで来たわけです。

 一方、ルペン氏は今回の選挙で駄目だったという失望感が非常に大きいらしく、今度の総選挙に出ない可能性もあるらしいのです。今は失意のどん底で選挙にも出ないとなると、彼女を継ぐ人はいないのです。そうなると、私はもちろん危ない政党だと思っていますが、せっかくここまで伸びてきて、今後どうなってしまうのか、最後にひっくり返ることになるのかもしれません。

 ただ、今回の敗因の1つはテレビ討論です。テレビ討論でルペン氏はあまりにも常識がないということが明らかになりました。一方のマクロン氏は、その意味では経済的なところで非常に常識があり、通貨ユーロの問題などでルペン氏はかなり馬脚を現してしまったわけです。

 またBREXITの議論もありましたが、ルペン氏は「イギリスはEUを離脱した」と過去形で語っていて、まだ離脱の申し入れをしただけで離脱していないと指摘されると戸惑いを見せるなど、ずいぶんと基本的なことを言っているにも関わらず、最低限のことも理解していないのかという点がテレビ討論で見受けられました。大統領になるにはやや危ういと思われたのです。

 大統領になるとトランプ的になってしまうということで急激に人気が失墜したわけなのです。その点、マクロン氏はしっかりしているので大丈夫と思いますが、いずれにしても国民戦線が広がってきているフランスの構造的な動きというものは無視できないと言えるでしょう。

【中国】溢れるマネー 大都市不動産、バブル期の東京を上回る

 日経新聞は、「中国バブル再び、資本規制、マネー反乱」と題する記事を掲載しました。人民元の急落を防ぐため、海外送金等の規制を強めた中国で、国内に溢れたマネーが不動産や株式市場などに集中していると紹介しています。ベンチャー投資も活発化し、IPO件数は増加している一方、シャドーバンキング問題の再燃や、経常収支悪化などの懸念も強まっているとしています。

 中国もバブルからの着地について非常に苦労しています。常に傾いては資本を注入し、規則を変え、維持しているわけです。中国主要都市の住宅価格の騰落率を見ても、地方の中堅都市でもまだまだ値上がりが進んでいる状況です。日本も80年代はこういう状況がずっと続きました。

 一方、中国の非金融民間部門の債務残高の推移を見ると、GDP比で200%にまでなっています。日本の国家債務もGDP比でこのくらいになっていますが、中国の場合は民間の債務がここまできているわけなのです。実態は恐ろしい状況になっているのです。

【米中】「100日計画」内容公表の真相に迫る

 米中両政府は11日、4月の首脳会談で合意した100日計画の内容を公表しました。これは貿易不均衡の是正に向け、中国がアメリカ産牛肉の輸入を始めるほか、金融分野でも規制を緩和するのに対し、アメリカは中国が進める「一帯一路」構想の重要性を認め、関連会議に代表団を送ることなどが盛り込まれています。両国は早期に成果を公表し米中協調をアピールする考えです。

 これはかなり意外な事です。4月23日からほとんど連日連夜、米中のチームが討議をして、結果的に発表できるところまできました。特に、今まで禁じていた牛肉の輸入を解禁し、金融の規制緩和をしてアメリカの企業、サービスが中国でも出来るようにするなどとという内容になっています。また中国産の鶏をアメリカが輸入することなども含まれています。

 中国は最大の問題で、敵であると言っていたピーター・ナヴァロの意見などとは程遠いような結果です。しかも「一帯一路」の重要性を認めるということも含め、発表できるようなところまで来てしまったわけです。中国とラブラブな関係となり、トランプ大統領も「習近平はいい男だ、いろいろとやってくれている」などと言い、驚くほど近づいてしまっています。

 ただし、ニューズウィークなどには、結局は中国を利することになり、為替管理国でもなくなり、トランプ大統領の素人外交は困ったものだという記事が出ています。他の記事でも、トランプ大統領はツイッターばかりで真面目に外交ゲームをやっていないとし、その間に習近平は着実に駒を進めているという風刺画があり、まさにそのような状況と言えるでしょう。

 今まで、ナヴァロ氏は「中国が最大の問題であり、アメリカのすべての問題は中国にある」と言っていたのが、どこかへぶっ飛んでしまったという困った状況なのです。北朝鮮を見たら中国の手を借りなくてはいけない、下手に手を出せば韓国が攻撃され、在韓米軍も危ないことになるので、中国にやらせれば良いといいながら、ツイッターばかりしていて、真面目にゲームの駒を進めていない、まさに風刺画通りの状況になっているのです。

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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!