グローバル・マネー・ジャーナル

2017.5.31(水)

仏マクロン新党は単独過半数の議席を握れるか?(大前研一)

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仏マクロン新党は単独過半数の議席を握れるか?(大前研一)2017/05/31(水)


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今回のテーマ

仏マクロン新党は単独過半数の議席を握れるか?(大前研一)

【フランス】マクロン新党は単独過半数の議席を握れるか?

 イギリス紙テレグラフが報じたところによると、フランス国民戦線のルペン党首が、EU離脱とフラン復活を目指す考えを見直すことが明らかになりました。国民議会選挙を6月に控え、党是である反EUのスタンスについて議論を開始しました。予算や銀行規制の制御がもっと自国でできるよう、EU条約に関する再交渉を行うことを党の方針にするということです。

 ルペン氏はほとんど立ち直れていない状況ですが、少なくともEU離脱とフランを復活するという事は取り下げて、基本的には愛国主義だけで行くというところまで来たということです。これは当たり前だと思います。

 一方、マクロン大統領は、この一週間で信じられないほどの進歩を遂げました。NATOの会議からG7まで、最も人気があったのはこのマクロン氏だったのです。NATOで一番新しい国家元首はマクロン氏でしたが、NATOの昔からのメンバーがやってくるときに、フランス国歌が流れ、彼が反対側から登場するという、ものすごい演出をやってくれました。フランス人から見たらこれはうれしくてしょうがないことです。

 また、マクロン氏は投資銀行にいたので、フランス人にしては英語がものすごくうまいわけです。そこら中の人とやりとりをすることができました。そしてG7でも目立ちました。例えばカナダのトルドー首相はとても人気がありますが、彼とマクロン大統領、2人の若いイケメンが並び、周りにはバラがあり、すごく良い印象となりました。フランスはすでに100年前からこの人が大統領だったかのようなムードになってしまったのです。

 一方、今度の6月の総選挙は2回行われますが、なんと550ほどの議席に対し、428人を候補者にし、マジョリティーを狙おうということをやっています。彼の共和国前進というのは今回新しく作った党で、全員が新しい候補者なのです。それが今のところ、世論調査では300議席ほどを確保すると言われているのです。

 428人の候補のうち、300人以上が通ってしまい、結局は過半数となり、連立を組む必要もないという見通しなのです。フランスのテレビを見ているとこのマクロン大統領を褒めちぎっています。選挙の前にあれほど一方の候補を褒めちぎるというのはどうかと思いますが、たまたまNATOとG7があったのでこういうことになったのでしょう。

 あと2週間で結果が分かるわけですが、マクロン大統領は与党でマジョリティーとなれば、やりたいことが結構できるわけです。しかも、小池新党ではないですが、本当に300議席まで行ってしまったら、ゼロから政党を作り、共和国前身としてマジョリティーを取ってしまったいうことで、フランスの歴史にもないことです。もともとあった政党はどこへ行ってしまうのかという状況です。

 マクロン氏は今のところ期待でもっていますが、少なくとも今回の外交は、選挙運動のどれよりも良かったということです。フランスのテレビではここまで褒めて良いのかと言うほど、みんなが喜んでいるのが分かります。やはり英語がうまく、交渉力のある人で、さらにパーティーの様子などを見ていると2分ずついろいろな人と話し、パーティーに慣れている人だとわかります。

 日本の安倍首相のように周りの様子を伺って何とかやっているというのとは違います。たくさんの人と少しずつ話すマクロン氏は、やはりテレビ映りが良いのです。そしてほとんどの人は「マクロンと話をしたが、あいつは優秀な奴だ」という印象を持ったのです。

 G7の主催者はイタリアのジェンティローニ首相だったわけですが、そもそもレンツィ氏が戻ってくるまでの代役だったかもしれませんが、彼はあまり目立つことはなく、一方のフランスでは驚くべき現象が起こってしまったという訳なのです。

【世界】二酸化炭素排出のチャンピオン、米国・中国の決断は?

 トランプ大統領は24日、バチカンでフランシスコ・ローマ法王と約30分間会談しました。法王はトランプ氏に対し、パリ協定に残留するよう促すとともに、平和の象徴とされるオリーブの木の彫り物を贈呈し、この木のように平和を作ってほしいと要請したということです。

 これはG7でも問題になった事ですが、パリ協定から離脱するとは何事だ、中国とアメリカが二酸化炭素排出のチャンピオンだということをわかっているのかと、皆が圧力をかけています。実は、今回パリ協定が締結されたのは記念すべき事ですが、これはオバマ氏の功績で、アメリカと中国が合意したからできたことなのです。そのアメリカがもし抜けるとすると、中国も抜ける可能性があるので、パリ協定そのもの、すなわちCO2の問題そのものが、宙に浮いてしまうわけです。

 アメリカは、2025年までに25%、CO2の排出を削ると言っていますが、実はそれをやめてしまうと、世界的にも非常に影響が大きいのです。もう一つは、今回途上国がこの協定に合意した理由は、途上国がCO2を減らすにあたっては先進国が経済負担をするという条件があるからなのです。トランプ氏は協定から外れ、そこら中で石炭とガスを燃やし続けると言っているわけですから、もしそうなってお金を出さなくなると、途上国もお金をもらうからやるはずだったので、お金が出ないならやらないということになりかねません。

 一方、中国は自分たちがやると言えば、ものすごく大きな負担になります。自分の国だけでもとてもやり切れないほど汚染が進んでいるのに、それを負担して、さらによその国の分まで負担するということは、結構重たいことです。

 したがって、アメリカが抜けるということは、パリ条約、二酸化炭素問題、全てがパーになるということなのです。トランプ氏は、さすがにあまりにもこれが険悪な状況になっているので、来週までに決断しますと、少なくともTwitterでは言っているのです。

 ローマ法王に対しても、勉強させていただきます、オリーブの木ですねと言っているので、おそらく常識的な人であれば、何か条件を1つ2つ付けて、経済負担を少し削る事はあるかもしれませんが、やると決めたと言って、人気取りを図るのではないかと思います。ただ、そうは言っても彼は、いわゆる化石燃料屋さんに非常に多くの援助をしてもらっているので、ここのところがどうなるか、疑問は残ります。

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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!