私はこれまでも述べてきましたが、テレサ・メイは全くわかっておらず、全く必要のないことをやって自滅したと思っています。これで良かったのではないかと思います。彼女は言っていることとやっていることがバラバラで、何をやりたいのかわからない人なのです。
ヨーロッパの現実、少なくとも大陸側の考え方というのは、そう簡単に彼女の言うようないいとこ取りは許されないとしている状況を見ると、彼女は相当ポイントがずれていると言えます。しかしながら選挙で大勝すれば交渉は有利になるとしていたわけですが、誰もそんなことは信じておらず、ヨーロッパの方ではどんな勝ち方をしても私たちは関係ないと言っているのです。
実際、今回彼女は独走していました。勝手に自分の一番仲の良い内側の人だけで交渉をし、議会全体で話し合うということもしていませんでした。そうしたテレサ・メイのやり方が、近くにいる2人のアドバイザーたちによる密室政治だということも、国民は見抜いてしまったのだと思います。対する労働党党首の人気が出るとと思いませんが、こうした状況で、今のところは人気が出ていることになっています。
下院選の結果の議席数を見ると、保守党は318議席で過半数に足りないわけです。スコットランド国民党は離脱についても自分たちとはかなり意見が違うのでそことは組めず、もちろん労働党とも組めません。そうすると、その次には北アイルランドの民主統一党という政党がありますが、これが10議席持っているので、合わせて328議席になれば過半数に達します。しかし、これはまさに数合わせです。
しかも北アイルランド統一党というのは全く主義主張が違う上に、アイルランドとどうするのかという事についての問題もあります。イギリスはもし本当にブレグジットをやってしまうと、アイルランドとの間に境界ができてしまうのです。実際100万人近い人たちが毎日その間を通勤しているわけで、そんなところに障害ができると大変なことになります。もちろん北アイルランド民主党と組んだところで、彼らはテレサ・メイと同じ考え方ではないのです。
また、特にアイルランドの場合には、シン・フェイン党というのがあり、こちらはカトリック系でかなり過激なところがあるのですが、ここはむしろブレグジットはおろか、アイルランドと統一したいという考え方を持っているのです。イギリスの傀儡である所の清教徒が支配する北アイルランド民主統一党のようなところと組むということは、北アイルランド自身が非常に不安定になるということなのです。
したがってこの政権では何もできないだろうと思います。そしてテレサ・メイの考えているような分離交渉は無理なので、ハードブレグジットではなくソフトブレグジット、すなわち、いいとこ取りをしないで、出るにしても移民の問題だけは1つ2つ条件をつけさせてもらい、その他貿易等については全く今の状況と変わらない、結果的にブレグジットにならずに、移民の問題のみ再交渉するという形になると思います。
ただし彼女はすでにリスボン条約に基づいてブレグジットの提案を3月にしているので、このまま何も進展がなく2年経ってしまったら、自動的に出なくてはいけなくなるのです。そういう届出をしたわけです。したがって彼女は非常にまずい選択をしてしまい、これからソフトブレグジットに向かうにしても、結構大変なことになると思います。
また、日産のサンダーランド工場などから見ると、自分たちがヨーロッパ大陸に輸出をするときに10%の関税がかかるという話になってしまうわけです。これは本当にどうしようもないことで、この面からも、彼女は非常にまずい選択をしたと言えるのです。その自分のまずさに気がつけば良いのですが、彼女が組もうとしている連立が崩壊し、もう一度選挙をやり直すということをしない限り、この問題はすっきりいかないだろうと思います。
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