施政方針演説の概要を見ると、EU離脱の実行について多くの法律を作らなくてはならないことがわかります。全部あげれば2万もの法律を作らなければいけないと言われています。他にも経済強靭化、社会の公正化、社会の安全・団結といったことが述べられていて、国を作り直すほどの大変広範な範囲のことを決めなければならないのです。おそらくハードブレグジットは無理だとして、ソフトなブレグジットにしたとしても、テレサ・メイは交渉の当事者としてふさわしくないという意見が、相当出てきている状況です。
地域によって差はありますが、バーミンガムやミッドランドの辺りは、大きな打撃を被るところです。そして日産の工場のあるサンダーランドも、やはりEU離脱によって大陸に輸出するときに関税がかかることになります。今ちょうど日本とEUの交渉を進めていて、日本車は輸入すると10%チャージされますが、イギリスも同じようになってしまうわけです。
つまりイギリスに工場を持っていてもEU圏に輸出する際には10%の関税がかかるというわけで、これではかなりしんどいものがあるのです。またリバプールの辺りもそうですが、こうしたところでは、やはりハードブレグジットに対しては、地元の産業が非常に大きな影響を受けるので、嫌だという主張が如実に出てきています。
こうしたことから、イギリスの場合には同じ与党の中でもハモンド財務大臣に交代するべきではないかという議論が出ています。ハモンド氏の方が、テレサ・メイよりもヨーロッパとの関係は良く、財務相会議などにも出ているので、彼に任せたら良いということですが、いずれにしてもこの政権は1年も持たないと見られています。
しかし1年後に政権を変えても、それから後9ヶ月しか残っていないのです。3月にリスボン条約に基づく離脱宣言をしてしまったので、猶予はそこから2年しかないのです。1年後に首相が変わった時は、その人は9ヶ月しか時間が無いわけなので、準備はほぼ不可能と言えるでしょう。
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