調査会社ORBが、イギリスの有権者を対象に実施した世論調査結果によりますと、EU離脱を巡るイギリス政府の交渉を支持しないとする回答が61%でした。
私は前から述べているように、Brexitはできないと見ていますが、世論の方もだんだんと、交渉があまりにも難しいということで、もう一度国民投票をしたらどうなのかという方向に向かっています。今のテレサ・メイのやり方でのBrexitは支持しないと言う人が61%ということで、これはもう当然国民投票に行くべきでしょう。イギリス人はあまりにもこのあたりのやり方が鈍いと思います。
私はかなり以前からイギリスで出版もし、BBCでもこのような内容を語っている数少ない一人です。テレサ・メイの内閣ができ、日本が一番心配だとして日本にやって来た大臣に対しても、これはやり直さなくては駄目だということを伝えています。イギリス人がようやくそこまで追いついて来たなという印象です。
イギリス政府が16日、EU離脱後のイギリス領北アイルランドとアイルランドの国境について、現状通り物理的な境界を設けない方針を提案しました。パスポート検査なしに両国を自由に往来できる、共通通貨地域を継続するものですが、イギリスの良いとこ取りに対するEU側の反発は必死です。
これは非常に難しい問題があります。イギリスから見たら、多くの人が北アイルランドとアイルランドの間の国境をまたいで通勤をしたり、買い物に行ったりしているという状況です。一方EU側から見ると、イギリスが離脱したらそこできちんと検問をしてくれないと困るということになるわけです。従ってEUとしてはそのような自由な通行などはさせられないと主張します。ところがそうなってきた時にはアイルランドのシン・フェイン党などカトリック系の政党は、それならば我々はアイルランドと一緒になりたいと言って昔の独立運動が再燃してしまうわけです。これはイギリスにとっては悪夢です。
よって、これは今のイギリス政府が言っている通りにはならないでしょう。アイルランドの政党DUP議員が18人いるので、その力を借りてテレサ・メイはようやくマジョリティを維持している状況なので、解決策のない、どうしようもない状況になっていると言えます。
問題となっているのはアイルランドとの国境でCTA(Common Travel Area)という区域に関する取り決めです。この取り決めが、イギリスとアイルランドとの間でも成り立っていて、これが危ぶまれている状況なわけです。EUの方は冗談じゃない、そこを塞いでくれと言うので、イギリスとしては動きが取れなくなるのです。そしてこれを追いかけていくと、やはりBrexitは止めようかという、一つの勢力になるのだろうと私は思っています。
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